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ロザリンドとその両親の顛末

 ロザリンドは馬車の中で眠っていた。


 目が覚めると、侍女がもうすぐ着きますと告げて来た。

 妊婦は兎に角眠い、特に食後は眠くて仕方なかった。

 外はもう夜で暗く、どこなのかも分からなかった。

「ここはどこなの?」

「私も分かりません。急でしたので、止まりましたら従者に聞いてみますので」


 そして暫くするとゆっくり馬車が停まった。

 従者に促されて、降りてみて驚いた。


「此処はどこよ!教会?いや修道院じゃないの!」

「あんた達知っていたのね。誰がこんな所に連れて行けって言ったのよ!」

「公爵様と陛下でございます」

「陛下が?」

「はい、陛下のお薦めだそうでございます」

 そういうと無理矢理に修道院の中に連れて行かれた。


 院長室に通されて、此処が国で一番に堅牢な修道院であると知らされた。

「子供がいるのよ。その私が何故こんな所に!スペンサー公爵を呼びなさい!公爵夫人よ私は」

 ロザリンドの叫び声が暫く響いていた。


 出産まではシスター達が交代で世話をするという。

 ロザリンドは此処で世俗とは無縁の、長い時を過ごす事となる。


 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎


 サンチェス伯爵夫妻は、やっとの思いで領地に帰ってきた。


 ロザリンドの部屋は鍵が二重に掛かっていて、金目の物は持ち出す事も叶わなかった。


 当てにしていた金も入らず、借金をして買い込んだ大量の荷物と共に。


「お父様お母様、どうなさったの?随分お早いお帰りで」

「セシリア、我々は騙されたんだ」


「騙されたって、どういう事ですの?」

「ロザリンドに騙されたのだ」

「お姉様に?」

「なんと言う事をしてしまったのかしら、あの子は」

「何があったのです」


 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎


 セシリアは動揺する両親から、一部始終を聞いて腰を抜かした。


「私が居ない間に、そんな話になっていたんですか」

「全くとんでもない娘だ!」


「ロバート様が駄目だったからって、今度はアイザック様に目をつけていたんですね」

 セシリアの呟きを父親は聞き逃さなかった。

「ロバート君?そんな話は知らんぞ!」


「お姉様がお手紙で妄言をね。でも婚約されていましたから、私が教えて差し上げましたの」

「何故それを言わん!」


「あら、ご自慢の娘が、実は⋯⋯って言って信じましたの?」

 セシリアの言葉は、両親の図星を突いた様だ。

「⋯⋯」


「我が家は王家と公爵家から見捨てられたのですね、お姉様の所為(せい)で」

「あの子が嘘をつくから」


「お姉様は自業自得ですけど、私はそうもいきませんわ」

「どういうことかね?」

「私にももしかしたら、火の粉が飛んでくるかもという事ですわ」

「まさか?」

「この件が新聞社にでも漏れてしまったら、婚約破棄されてしまいますわ」

「⋯⋯まさか」

「まさかまさかって、お姉様が修道院に入られたのは確かで、その理由が素行不良ですもの。あり得ますわ」

「セシリアまでそんな⋯⋯」


「それにこの荷物、支払いはどうしていますの?」

「我々は決して慰謝料を当てにしては⋯⋯」


「成程。当てにして買いまくったと?」

「だって仕方ないじゃない。ロザリンドが嘘をつくなんて」


「お姉様は昔からそんな性格だったじゃないですか!十分予想はついた筈です」

「あなた、支払いはどうしましょう?」

「⋯⋯」

 両親は途方に暮れたようだ。


「そうだ、テンゼンは?テンゼンは出迎えにも来ないのか?」

「私が帰った時から留守ですわ。執事に聞きましたらずっと帰ってないそうですわ」


「どこに行ったのだ!こんな時に!」

「まさかお父様達が急に帰って来られるとは、思いもしなかったのかも」


「テンゼン様は皆様がロザリンド様の元に行かれてから、お戻りではありません」

「一度もか?」

「はい左様でございます」


「他に変わった事は?」

「今の所、仕事が滞っている位ですが決裁待ちの書類が溜まっております」

「そうか、直ぐにサインをしよう」

 そう言って父親だけ執務室に入って仕事を始めた。


 母親はショックが大きかったらしく寝込んでしまった。

 セシリアは部屋に戻りお茶を頂いていると父親の絶叫が聞こえてきた。


「どうなさったの、お父様?」

 慌ててセシリアがメイドと共に駆けつけると、父親が床に座り込んでいた。


「金庫の金が、小切手も……金目の物が無くなっている」

 どうやら金庫を開けて気がついた様だ。


「旦那様、私ではありません!」

 執事が思わず言う。

「金庫の番号は私と……テンゼンしか……アイツが持ち出したのか!」

「長く留守をするという事で、金庫の番号を教えてしまった!他に被害がないか調べるんだ!」


「あなた、私の宝石類が無いのですけど?」

「何?」

「無いわ、無い!私の大事な宝石がぁー!」

「テンゼンか?奴を探せ!今すぐ連れてこい!」


 この後博打にのめり込み、まんまとカモにされていたテンゼンを発見。

 家に連れ帰ったが、持ち出したものは全て換金されて、その殆どが無くなっていた。


 両親はただでさえ苦しかったなけなしの財産をほぼ無くし、更には借金を抱える事になった。

 その後テンゼンは横領の罪で、炭鉱労働に犯罪奴隷として売り渡された。


 これがきっかけで、伯爵家は没落の一途を辿る事となった。



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