表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/59

其々の新生活

 ここはクラーク領、図書館の一角。

 パトリシアは新しい知識を仕入れる為に、三冊ほどの本を前に盛んにペンを動かしていた。

 兎に角、何かしていないと落ち着かない日々を送っていた。


 おば様もお元気になられて、つい先日延びていたご長男の披露宴も行われた。

 パトリシアも出席して、お幸せそうなお二人の門出に立ち会うことが出来て、幸せのお裾分けを頂いた。


 そして病院で再会した、オーウェンおじ様にもその時にお会いして、楽しくお話を伺った。

 そしてマーサと共に湖畔に建つ別荘にもご招待頂いて、素晴らしいおもてなしを受けた。

 素晴らしい景色と楽しく、自分自身の成長に繋がる会話。

 ある意味で幼いパトリシアの指針となった言葉を頂いた、人生の師とも言える方との時間は、また新しい第一歩を歩み出す勇気を沢山頂く事になった。


 そしてもう一つ、オーウェンおじ様の所でマーサに出会いがあった。

 従者のお一人でとても穏やかそうな方といい雰囲気になっていた。

 マーサは自分が恋愛をするとは思ってもみなかったのか、最初は戸惑って避けたりぎこちなかったりしたが気が合って今は友人からとなっているらしい。

 真っ赤になる友を初めて見てあまりの微笑ましさに、マーサにも春が来たんだな……感慨深いものを感じた。


 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


 そしてオーウェンおじ様からある提案を頂く事になる。


 先日ようやくサンチェス家から延びに延びていた除籍手続きが完了したと連絡が有り、これで晴れて平民となる事が出来た。

 あの家と正式に縁を切ることが出来たのだ。

 これでもう便利に利用される事も、理不尽な扱いを受ける心配も無くなった。


「マーサ、私の肩に乗った重圧みたいな物が、スッキリ晴れた様よ」

「お嬢様、おめでとうございます。長かったですね」

「今後は只のパトリシアとして生きて行くわ」

「そうですね、やっと自由を手に入れましたね」



 予想外にも、私が除籍後平民になった事を知ったオーウェンおじ様が、養女にならないかと持ち掛けてきたのである。


 おじ様は第一線を退かれて、ご長男が後を継がれてその方にも男の子がいらっしゃる。

 跡継ぎの心配がないのに何故と思ったが、昔から娘が欲しかったらしく、是非前向きに考えてくれと言われた。


 最初は固辞したが、これから何をするにも貴族という肩書きは必要と言われて、少し考える時間を頂いた。

 エリアルおば様に相談すると、それをとても喜んでくれて、是非に受けるようにとアドバイスしてくれた。

 折角手に入れた自由な立場を手放すのかと、思い悩んだが信用という面でこれから役に立つからと説得された。

 そして熟慮した結果、喜んで受ける事になった。


 ただし、財産は受け取らない事を条件として提案して、養子縁組の際書類に明記する事を了承頂いた。

 パトリシアのその考え方をオーウェンおじ様やご家族は驚いていたが、快く受け入れて下さってパトリシアの新しい人生が誕生した。


 パトリシア・トンプソン侯爵家、令嬢がここに誕生した。


 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


 パトリシアとマーサは湖畔の別荘を生活拠点として引っ越し、持ち家は店舗として活用する事になった。

 新しいお父様は、生活に張りが出来たと随分お元気になられました……と執事さんから大変喜んで報告を受けた。


 パトリシアを社交界にもエスコートして行くのだと、脚のリハビリも開始された。

 車椅子生活が長かった為に、生易しいものでは無いだろうが、パトリシアが付き合って仲睦まじく過ごしている。

 マーサも勤め先を侯爵家に変えて側で支えてくれている。

 今まで感じることが出来なかった幸せを噛み締めながら、マーサと手を取り合って新事業を模索する日々を送っている。


 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


 その嬉しい知らせは、アイザックの元にも使用人を通じてもたらされた。

 パトリシアがメイソン氏の事に気落ちする事なく、新しく第一歩を踏み出した事に、我が事の様に喜んだ。

 側に自分が居られないのは寂しいが、今は彼女が掴んだ幸運を純粋に喜びたい。

 神はいるのだとアイザックは深く感謝した。


 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


 その頃、サンチェス家も様変わりしていた。

 パトリシアの除籍を機に、元々約束のあった遠縁から跡取りとなる青年を養子として迎え入れた。

 その内、末娘のセシリアも嫁に行く。

 今の内から跡取りとしての教育をしていく事となる。


 其々が各々の道を進んで、全てが順調に滑り出した。

 しかしこの後、サンチェス家には暗雲が立ち込める事となる。

 ある一人の人物によって。




評価、ブックマークを宜しくお願いします( ˊ̱˂˃ˋ̱ )

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ