表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/59

セシリアの密談

 丁度その頃、セシリアはロバート様の私邸に招かれていた。

 勿論、ロバート様とその婚約者であるエブリン嬢、メイド長のエマさんの4人で人に聞かれたくない密談である。


「多分、狙われていたんだと思うの!」

 セシリアのわざと陽気な言葉はその場の全員を凍りつかせた。


「狙われたって元婚約者の私が?」

 ロバート様は目を見開いて言う。

「そう!」

 セシリアは全てを悟った顔で頷いた。


「いや、訳が分からん。公爵夫人は幸せなんだよな?」

「子供まで授かっていてなぜその様な……理解できませんわ」

 生真面目なエブリン様の顔色が悪くなる。


「自分から望んだ結婚ならね⋯⋯」

 セシリアは遠くに視線を逸らし、意味深な言葉は続く。

「いや自分だけ分かったつもりで話すのはやめてもらえるか。含みのある言葉で我々はさっぱり分からん」

 他の二人も頷いている。


「⋯⋯もしかして、公爵様との結婚は無理矢理で逃げるおつもりとか」

 今まで黙っていたエマさんが恐る恐る言うと

「当たりだと思うわ」

 セシリアはキッパリと言い切った。


「えっ!新聞で読んだが、世紀の大恋愛なんだろう?」

 随分話題になって、幸せを掴む為に婚約破棄したのだと納得したのだ、両親も私も。


「アレは表向きですわ」

 セシリアはサラリと返した。


「チョット、頭を整理するから。⋯⋯つまりあの結婚は本意じゃなくて、無理矢理?もしくは渋々だった。そして離婚して逃げ出す先に、実家では無くこの私がロックオンされていたって事か?」

 ロバート様の顔が歪む。


「そうです、ロザリンド姉様はそういう事を平気でする人です」

 セシリアは遠い目をして頷く。


 今更ながらに焦ったのか、ロバート様が淹れてあった熱いお茶を一気に飲む。

「アチッ、アチチ……」

 ロバート様の胸元が濡れる。

「だ、大丈夫ですか?」

 エブリン様が慌ててハンカチを差し出して、心配そうに声を掛けた。


「く、口の中を火傷した、イタタ。セシリア嬢が変な事を言うから」

「ププッ、長年のお付き合いでロバート様のその様に焦ったところ、初めて見ましたわ」


「笑い事ではない!分かるように説明してくれ」


「つまりですね。姉は多分、公爵家が適齢期の孫の為に嫁探しに来ていると思っていたんです。でも実際は公爵様ご自身の伴侶を求めていらした。自分の勘違いに気がつかず、早まって婚約破棄したんです」


「何故そのような事をなさったの?」

 エブリン様には全く理解出来ないようだった。


「先日ロバート様にはお話ししましたが、私の次姉のパトリシアは両親から虐待を受けていました。そのパトリシア姉様を公爵に宛がおうと、つまりは厄介払いですね。両親が皆に黙って画策したんです」


「何と言ったらいいか⋯⋯」

 ロバートは体の弱い閉じ籠りがちで、人前に出る事も嫌がる妹と聞いていた。

 だからこそ、避暑や夜会、お茶会にも出られないと思っていたのだ。


「それをパトリシア姉様に公爵家から縁談が来たと勘違いして、家から追い出しました」

「そして勘違いに気付かず横取りして、したくも無い結婚を後には引けなくなってしたと」

「そうだと思います」


「逃げ出す為に、この私を利用しようとしたのか!」

「その通りですわ」

「⋯⋯」

 皆が余りの事に一瞬思考が停止した。


「こちらの気持ちも確認せず、それであの訳の分からないエステ室と子供部屋か」

 ロバート様は拳を握ってブルブル震える。


「未だに貴方は姉を愛し続ける男とでも思っていたんでしょう、大した自信です」

 セシリアはもう笑っていなかった。


評価、ブックマークをお願いします_φ(・_・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ