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ロザリンドの悪あがき

「奥様、お手紙が届いております」


「まぁ珍しい。あのセシリアから手紙なんて」


 つい先日、実家の両親が滞在した。

 田舎者の両親にも、王都のあちこちで破格の扱いを受ける自分を見せる事が出来て、自尊心も大いに満足した。

 ご機嫌だったので、父には高級葉巻と懐中時計。母にはセットの宝石を買ってやった。

 夫が潤沢にくれる小遣いとは別に交際費としてくれている中から出している。


 両親はロザリンドが恵まれた環境で贅沢に暮らしている事に安心し、満足して帰って行った。



「ふふふっ、私の暮らしぶりを聞いて、羨ましくなったのかしら?」


 そして妊娠を喜び、将来にわたって安泰だとも言っていた。


 そうケラケラとご機嫌で手紙に目を通す。


 そこにはまず自分の近況と、恵まれた生活で幸せそうで良かったと書いてあった。


 そして『そういえばあのお二人も婚約されてじきに結婚するのよ』と書いてある。

「あの二人?」

 先を読み進める。


 『先日たまたまお見かけしたの。ロバート様とエブリン様は大変仲睦まじくて、是非お姉様の幸せを分けて差し上げてね』と結ばれていた。


「な、何ですって!あの二人が結婚?冗談でしょう?」

 あり得ない、婚約破棄の理由にしたアレはあくまでもでっち上げ。


「そんな事一言も手紙には書いてなかったじゃない!」

 ワナワナと震える手で手紙を握りつぶして、低い声で独り言を呟いた。 


「よりにもよって私の友人と?恥を知りなさい!恥を!」

 自分の事は棚に上げてロザリンドは怒り狂った。

 思わずいつもの癖で、手近にあったシュガーポットを手に取り投げつけようと振り上げた。


「落ち着くのよ、落ち着くの。ここは実家では無いのだから。息を吸って……」


 こちらでは癇癪をまだ起こしてはいなかった。

 見慣れない者が大騒ぎして理由を聞かれたら返答に困る。

 寸前で理性が働き、少し頭が冷えた。


 計画第一案が潰れたことを知り、ロザリンドは何日か寝込んだ。

 そして荒れ狂う自分の気持ちを納得させる様に、第二案に方向転換するのであった。


 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


 ロザリンドの第二案。


 夫の直系の孫、最も跡取りに近い男。

 聞いたところによると、婚約者は居ない。


 何故かと不思議に思ったがメイド達の話によると、その当時王家の末姫の婿候補として、このスペンサー公爵家が最有力であった。

 王は殊の外(こと ほか)この姫を可愛がっており、いつでも会える自国の高位貴族に嫁がせる気だった。

 そのお眼鏡に適い、彼はその為に育てられたと言ってもいい程の洗練された男性だった。


 ところがその話は見事に頓挫(どんざ)する。


 そろそろ婚約を結ぼうと思っていたところ、姫は留学中の隣国の王太子殿下にあっさりと一目ぼれしてしまった。すったもんだの末、見事に王太子の婚約者となった。


 其れからは最優良のお相手という事で、国中の令嬢が彼の目に留まろうと競い合っているらしい。

 すぐさま政略結婚の婚約が結ばれなかったのは、本人が頑なに嫌がったのだという。


 流石に目ぼしい高位令嬢は既に婚約者がおり、訳アリ令嬢か家格の釣り合わない令嬢のみで強く押せなかったのもあるらしい。

 高位令嬢の中には婚約を破棄してでもという者達も多かったが、政略の意味での婚約の為、親が許さなかったのだという。


 アイザックとは結婚式の時はよく話せなかったが、結婚祝いを届けてくれた時にゆっくり話をする事が出来て、とても好ましく思った。


 相手は可愛い孫だもの。

 其れも王女から振られた可哀想な男。

「そんな孫からの願いなら叶えたくなっちゃうわよね、きっと」


 さぁ、どうやってアピールしようかしら?

 先程迄不機嫌全開だったのに、今は自分の考えにクスクス笑いが漏れる。


「はぁー、一刻も早く産んじゃいたい。身軽に動けないもの」


 お茶を淹れながらメイドが聞き耳を立て、女主人の行動に注目しているとは思いもしない、ロザリンドであった。



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