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事件

 今日は久々にエリアルおば様とショッピングを楽しんでいた。


 エリアルおば様は王都のご長男が結婚されて、その関係でここ暫くこの地を離れておられた。

 結婚式にパトリシアもお呼ばれしたが、仕事の関係上長くお休みが取れず、こちらで開かれる披露宴に出席する事となっていた。

 腕を組んで母娘の様に仲良くウインドーショッピングを楽しんでいると、あちらから賑やかな一団がやってきた。


「パトリシアちゃん、あれってメイソンさんじゃなくて?」

「何処ですか?」

「ほら、あの賑やかな一団の真ん中に……あらいやだ、女性と腕を組んでいるわ」

 そこにはあの穏やかなメイソン店長が、赤毛に胸の大きく開いた薄いワンピースを着た彼女を連れて歩いていた。


「そうですね、メイソン店長です。お相手は商会のお嬢様だそうですよ」

「あの露出狂の様な格好の女性が?」

「まだこちらにいらした様ですね、先日事務所の方にもいらして少しですがお会いしました」

「まぁ、そうだったの。それにしてもあの格好は……」

 おば様がそこまで言ったところで、店長より先にフェリシナさんがこちらに気が付いた。


「あら、あなたウチの売り子じゃない」

ツカツカと私たちの前にやって来てフェリシナさんは言った。

「パトリシアちゃんに何か?」

 憎々しげに言われた言葉に、エリアルおば様が反応する。


「これは失礼しました。フェリシナお嬢様こちらは」

 メイソン店長はおば様に会釈をして改めて説明しようとするが、それを遮り

「単なる売り子の母親なんて興味ないわ。もういいわよ。行きましょう」

「お嬢様!大変失礼しました。お嬢様は何も知らず……」

 自分を無視して、エリアルおば様に話すメイソン店長が気に入らなかったのか、フェリシナさんの顔が歪む。


「なぁに、売り子と売り子の母親でしょう。退いてよ邪魔!」

 そう言うとエリアルおば様の無防備な肩を強く突き飛ばす。


「おば様ー!」

 咄嗟(とっさ)の事で、思わず伸ばした手が空振りする。

 おば様はバランスを失い、後ろに倒れて気を失った。

「あ、頭を、頭を打ちました!誰か医者を早く!」

 パトリシアは大声で叫ぶ。

「おば様しっかりして下さい。エリアルおば様ぁー」


 メイソン店長はただ唖然と立ち尽くしていた。


 今日は久々にパトリシアとの時間を楽しみたいからと、御付きの者や護衛を断ったのが裏目に出た。

 チョット目抜き通りを歩くだけ……危険など無い筈だった。


 周囲の店から人がわらわらと出てきて皆一様に慌てて言った。

「これは領主様!」

「領主様が襲われた!」

「領主?」

「君はなんて事!エリアル・クラーク侯爵夫人だよ」

「おば様、おば様ぁー」

 パトリシアはおば様を抱きしめ、泣き崩れた。


 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


 直ぐに病院に運ばれたおば様は30分程で少しだけ目を覚ました。

 しかし後頭部を打った為、診察の上入院する事となった。


 フェリシナ嬢は警察に捕まり牢に入れられている。

 貴族の殺人未遂だ。

 商会の会長にも直ぐに早馬で知らされて慌ててこちらに向かう事だろう。


 無事だと知らされても、パトリシアはガタガタと震えが止まらなかった。

 マーサが駆け付けてくれても、診察が終わったおば様の側を離れられなかった。


「パトリシアさんお疲れの所済まないが、事情を話して貰えるか?」

 警察から言われて後をマーサに任せて、警察署に向かった。


 主観を入れず事実だけを話して、警察署を後にする時、フェリシナさんと運悪くすれ違った。

「あの女です、私のメイソンに色目を使って。だから、だから……あの女の所為(せい)です」

 狂ったように大声で怒鳴られる。


「事情は目撃者から複数証言が取れている。黙りなさい」

「私は悪くない、悪くないー」

 暴れる彼女を引き離す様に連れて行く。

「お疲れ様でした。裁判で証言頂きますが宜しくお願いします」


 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


 パトリシアは警察署から直ぐに病院に戻った。


 おば様はまた眠っていらした。

「マーサ、おば様はどう?」

「あれからはまだ眠っておられます」

「そう。お医者様は何だって?」

「侯爵家の執事の方がお医者様とお話をされています」


「私がお買い物に連れ出したから。お部屋にいれば良かった」

 後悔の涙がポロポロこぼれ落ちる。

「お嬢様……」

「おば様に何かあったらどうしよう。私にとって母親以上の存在なのに」


 その日はおば様の側を離れるのが怖くてまんじりともせずに朝を迎えた。


ブックマークと評価をお願いします。(=´∀`)人(´∀`=)

『私の頭の中の⋯⋯幻影』投稿しました。

読んでみて下さいね\(//∇//)\

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