表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/59

去りゆく人、そして⋯⋯

プロットの方針転換をした為お休みを頂きました。

現在感想欄は閉じております。ご迷惑をお掛けします。

ある方のご協力により再開が思ったより早く出来ました。

この場をお借りしてお礼を。m(_ _)m


「はぁー⋯⋯」

「⋯⋯」

「ふぅー⋯⋯」

「⋯⋯」

「⋯⋯はぁー、ん?何だ?その目は?」

 現在馬車で移動中のアイザックは、従者のジト目に気が付いた。

 窓枠で頬杖を突き、あれこれ思い出しては溜息(ためいき)を繰り返す。


「先程から、はぁ、ふぅ、と溜息の繰り返し。このままだとお体に障ります、楽しい事でも考えてみられたら如何(いかが)ですか」

「楽しい事⋯⋯はぁー」

「そうです」


「楽しい事。パトリシアと馬車で旅をしたなぁ⋯⋯家族関係とか事情とか打ち明けてくれたっけ」

「いや、あれは無理にアイザック様が⋯⋯」

「馬車に乗り慣れていなくって、馬車酔いして介抱したっけ」

「いやそれは私共が⋯⋯」


「そうだ!初めてサンチェス領で声を掛けた時、キリッとしていてそれでテキパキと仕事をこなして⋯⋯」

「それはお姉さまの結婚式でバタバタされていた時ですね」


「新居の家具の塗り替え。初めてやったけどあっという間に出来てしまって⋯⋯」

「私共がやれば半日で済みましたのに⋯⋯」

「味のある仕上がりで喜んでくれたっけ⋯⋯」

「いやあれは、マーサさんの単なるフォローで⋯⋯」


「そうそう、エリアル・クラーク夫人の所でお礼を買いに行こうとしてくれて」

「時間が無いとか言われた時ですね」

「サンドイッチを作ってくれたのだ、私の為に心を込めて」

「まぁ、お礼ですから」


「あんなに美味いサンドイッチは初めて食べたなぁ⋯⋯」

「食べずにとっておくとか子供みたいに言われて、パンがパサパサになったアレですね」

「パサパサ?パトリシアが心を込めて作ってくれたんだぞ、パサパサの訳無いじゃないか!」

「⋯⋯左様でございました」


「それから新居に⋯⋯」

「⋯⋯はぁ」

「今、溜息吐かなかったか?」

「いえ、所でマーサ様のご提案を受け入れた件ですが」

「一旦距離を置けって事だろう、だからこうして⋯⋯離れている」

「少し冷静になって考えてみられるのも宜しいですね。それとアイザック様の存在をどう思ってらっしゃるのか、パトリシア様にもお時間が出来ますし」

「そう言うのだ、マーサさんは」

「確か押してもダメなら引いてみろでしたっけ?」

「そうだ、兎に角今はそっとしてやって欲しいと懇願された。仕事に全力で打ち込ませてやってくれと」

「そうなのですね」


「手紙ぐらいは良いだろうか?」

「勿論でしょう。色々パトリシア様のお力になる事を、助言されたら如何ですか?」

「そうだな、手紙なら読んでくれるだろう。⋯⋯もう、会いたくなってきた」

「思う心は自由です、遠くから見守られる事も時には必要でしょう」


 アイザックは悲しげな目で上を向き何度か瞬きをした。

 それからまた何かを考える様に、窓の外の遠ざかる風景をぼんやり見つめた。


 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎


 アイザックがクラーク領を去ってふた月が経過した。


 その間にパトリシアは仕事で評価を貰い、又特別表彰を受けた。

 事務処理の効率化を順調に進めて全店で実行。

 それに掛かる経費の削減にも繋がり、商会はパトリシアを高く評価した。

 それにはメイソン店長の助言や後押しも有り、クラーク領の支店規模を広げる話も出て来た。


「此処が主要店舗となりそうだよ」

 店長会議から戻ったメイソン店長が、皆に喜んで報告した。

「おめでとうございます、やりましたね」

 ベテラン社員のマリナさんが言う。

 そして次々と社員達からも歓声と拍手が上がる。

「此れは皆んなの頑張りが評価されたものだ。売り上げも飛躍的に伸びているし、事務処理の効率化も進んでいる。店長として鼻が高かったよ」

「店長のお鼻がそれ以上高くなったら大変ですね」

 みんなでドッと笑う。

「褒めて貰ったお礼じゃ無いけど、お土産のお菓子を買ってきました。各自休憩時間に食べて下さい」

「うわ、ありがとうございます」

 甘い物には目が無い社員が菓子箱を受け取る。

 そしてみんなで菓子箱を開けて盛り上がっている。


 それをニコニコと眺めながら、店長がパトリシアに声を掛けて来た。

「パトリシアさん、応接室までいいかな」

「はい」


 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎


「呼び出して済まないね、皆んなの前では出来なかったから」

「何でしょうか?」

「又デートのお誘い。馴染みの店が面白い本を入荷したと言ってきたから一緒に行かないかい?」

「そうなんですか?喜んでお供しますわ」

「本当に本が好きだね」

「本の中では色んな所に行けますから。あれこれ想像すると楽しいのです」

「旅行も良いよね、日帰りでも良いから今度行こうか」

「あはは。そうだ!日帰り慰安旅行とかどうですか?皆さんを誘って。きっと楽しいですよ」

「慰安旅行か、みんなこの所頑張ってくれているから良いかもしれないな」


 その時、ドアの向こうが騒がしくなった。

 コンコンコン。

「どうぞ」

「店長、お客様がいらしています」

「どなたかな?」

「メイソン、会いたかったわ」

 赤毛の女性がメイソン店長に抱きついた。


宜しければ評価とブックマークをお願いします。

支えて下さった方々に感謝を込めて。

いつもありがとうございます。

又ぼちぼち投稿をしていきます、宜しくお願いします。(=゜ω゜)ノ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ