パトリシアの奮闘
パトリシアは日々の業務をこなしながら、経理作業の効率化を考えるようになっていた。
この領の図書館は書籍が充実しており、暇を見つけては足を運ぶようにしていた。
図書館とは有難い、会員証を作ると無料で知識が手に入る、大いに活用するパトリシアだった。
今日も同僚が言っていた現金の集計作業、特に金種を分けて数える作業をスピードアップ出来ないかを考えていた。
パトリシアが提案した伝票釘の件は、ボーナスを頂いた位好評だった。
伝票は客が記入して、店員が商品をお金と交換するシステムだからだ。
このシステムになったのは店頭展示にすると万引きが多くなる為だった。
しかも人気店故に万引きされた商品を転売されて二重被害にあった為、全店このシステムになり大量の伝票と格闘する日々を過ごしていた。
でも会計の終わった伝票を釘に刺しておき、一杯になったら新しい釘スタンドをセット、一杯の物は奥の事務室で作業が出来る。乱雑に投げ入れられた物を一からやるのとではスピードが違う。
これによって伝票の紛失の心配がなくなり、現金照合時に合わない事が無くなったので、番号は廃止された。
それに伴って手作業での伝票ナンバリングも必要無くなった。
直ぐ釘の代わりに紐が通されて計算が出来る、毎日夜遅くまで残業していた者達に好評で働く者の労働時間短縮、ひいては給金の節約にも役立つ。
とりわけ子供の寝顔しか見られなかった家族持ちには特に感謝された。
本当にアイディアとしてはちょっとした事なのだ、誰もが何だと言う様な。
でもそれがなかなか出来ない。
各方面にパトリシアの有能さは知られる事となった。
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「店長、お仕事中失礼します。ちょっとご相談が有るのですが」
「ん?何かな、大きな箱を持って」
「あ、これですか。簡単に試作品を作ってみたんですが」
「試作品?」
「硬貨箱?とでも名付けましょうか」
金貨銀貨銅貨は大きさが全く違う、それで格子状の仕切りを小さい銅貨に合わせて作ってみた。それを箱にセットして上から硬貨をざっくり入れる、そして箱を左右に振ると10枚ずつ格子にはまって余った分を取り除くと格子をそっと抜く。
「うわ、これは凄いな。一気に格子の数だけ山が出来る」
「これを金種ごとの袋に100枚、銅貨は小さいので300枚位ずつ入れれば管理も楽になると思うのですが」
「そうか、それぞれの硬貨箱を用意してこうすればざっと金種分けをして作業がグッと早くなる」
メイソン店長は暫くこの方法を試してみて、効率化が顕著なら本店に提案してみようと言ってくれた。
色々提案する事に耳を傾けて、試してくれるメイソン店長は素敵だな……と感じた。
貴族社会では女性がこの様な提案をすることを良しとしない。
例えそれが素晴らしい事であっても。
その点商人は良いなと思える。
商人の根底にあるのはいかに儲けるか、実にシンプルで分かりやすい。
パトリシアは平民になって良かったと痛感したのだった。
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「パトリシアさん、今度お休みを合わせて何処か行かないか?」
メイソン店長からお誘いがあった。
「つまり、デートのお誘いなんだけど」
パトリシアがびっくりしているとメイソン店長は言った。
「何処に行きましょうか?」
パトリシアがニッコリ笑って答えると
「良かった、という事はオッケーが貰えたのですね」
照れながら頭を掻くメイソン店長が可愛い。
「はい、私で良ければ」
「パトリシアさん本がお好きですよね、本屋巡りとかどうですか?」
「良いですね、図書館に無い本とか手に入ると良いのですが」
「穴場の古本屋とかもご案内します、僕の持つ本をお貸ししても良いし」
「とても楽しみです。いつにしましょうか?」
話が弾んで来週にデートとなった。
このデートが波乱を巻き起こす事になる。
皆様、日曜日如何お過ごしでしょうか?_φ( ̄ー ̄ )
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