決意
パトリシアは泣きながら眠ってしまったらしい。
起きてみると、テーブルの上にサンドイッチとスープがレースのクロスを掛けられて置いてあった。
メイドのマーサだろう、取り敢えずトイレを済ませ顔を洗って、ありがたく頂くこととした。
この家で本当に私を気にして良くしてくれるのは、使用人達だけ。
姉も妹も使用人には高飛車な態度をとって、何をしても許されると思っている。
それもあってごく普通に接する私がよく見えるらしい、以前マーサが言っていた。
以前よそで働いた経験のあるマーサは、貴族は余程でない限りそう言ったものとも言っていたが。
私の家族はもしかしたら、夕食の席に私がいない事さえ気がつかないのかも知れない。
そう考えた時背筋に怖気と腕に鳥肌が立った。
メソメソ泣いてばかりもいられない。
本当に年寄りに嫁がされてしまうことにもなりかねない。
そうなったらさっさと逃げよう。
例え縁談を断って王城に奉公にあがっても、お金をせびる気かも知れないし、何かと使われないとも限らない。
あの親たちの本音が、思わぬ形ではあったが知ることが出来てショックではあったが、不意打ちを食らうよりはずっと良い。対策をこれからじっくり考えよう。
それにはまず食べないと。
「マーサ、料理長ありがとう。頂きます」
パトリシアは冷たくなったスープに手をつけた。
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それからパトリシアは相手の出方を見ることにした。
両親は実親であったがそんな風に思えなくなっていた。
思えば祖母達もそうだ。
血は繋がっていても相性もあるのかと思う。
別に自分から嫌いになったのではない、あくまで相手から受けた印象である。
今まではあまり気にしたこともなかったがやはりそこには贔屓が存在し、三姉妹を比べて優劣をつける様な人達だ。
プライドが高く自分の意思を押し通そうとする。
そのとばっちりが弱い立場の人間に向けられるだけ。
でもこれからは自衛していく、そして言いなりになんかなってやるもんか。
パトリシアは決意した。
此れからはいざという時の為にお金を貯めよう、命令で老公爵に嫁入りが決まったら式の前に消えてやる。
そうなれば慰謝料とかで大変になるだろう。
私の予算とやらで貴金属を買おう、換金しやすく持ち出しやすい。
ドレスは嵩張るばっかりで換金してもそう大した金額にはならないだろう。
お金を貰っている立場上品物が無いと怪しまれる。
そうだ、中古を買って手直ししたら如何だろう。
新品の物の十分の一ぐらいに値段が抑えられそう。
私は部屋のクローゼットにある旅行用のボストンバッグに、最低限持っていく物を考えて詰めることにする。
中までは誰も確認しないから丁度いい。
それと計画を書き残すことはやめにする。
万が一にも見られたら逃げ道を塞がれるから。
頭の中に整理して忘れない様に何度も反復して覚えよう、記憶力は良い方なので。
なんだかそう考えると楽しくなってきた。
まるで冒険をするみたい!
今まで色のない世界で下を向いてくすぶっていた気持ちが、目標を持ったことによって色付き始める。
皮肉なことよね、パトリシアは笑った。
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