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馬車に揺られて

「オッ、オエッ。オッ⋯⋯」

 下を向いて本を読んだ影響でパトリシアは馬車に酔ってしまいハンカチで口元を隠し吐き気を抑えた。


 アイザック様と気不味い道行(みちゆき)になったが馬車の中はとても快適だった。

 しかしながら共通の話題も皆無で会話が続く訳も無く、鞄から取り出した本を読んで暇を潰す事にした。

 それでこのような醜態(しゅうたい)を晒す事態に陥っていた。


 アイザック様は慌てて馬車を止め、従者に命じて水を用意してくれた。

「ごじんぱいいただいで」

「何?」

「ご心配頂いて」

「ククク、いや笑わせないでくれ」

 人の不幸の何が可笑しかったのかムッとして

「もう大丈夫デス」

 少し語尾に力を込めてみた。

 いちいち癇に障る人だなと思いつつ水を飲み干し、従者の方にはとびっきりの笑顔でお礼を言った。

「扱いが違う気がするのは気のせいじゃ無いよね」

「そんな事は御座いません!」

 私は慇懃無礼に言った。

「いや、君といると楽しい。退屈しないね」

 何がそんなに楽しいのかまた酔わないか戦々恐々のパトリシアを横目に始終ご機嫌のアイザック様だった。


 途中休憩を挟みつつ、やっと目的地に辿り着く。

「有難うございました。こちらで降ろして頂いたら大丈夫なので」

 私がそう言うと

「おば様に御挨拶がしたいんだけど」

 と、済ました顔で言い出した。

「いえいえ、先にホテルに入られた方がいいですよ。ホラ人気の避暑地なので」

 そう言ってオブラートに包みつつやんわりと断る。

「でも考えてみたら君の遠縁って言う事は私にとってもそうだろう?」

「⋯⋯?」

 言われてみたらそんな気もするが何だか腑に落ちない。

 盛んにハテナマークを飛ばしていると強引に領主館に横付けされた。



「お帰りなさい。あら、この素敵な紳士はどなた?」

 エリアルおば様が目を輝かせて尋ねる。

「この方はご親切に此処まで送って下さった姉の、姉の⋯⋯義孫(まご)?」

 咄嗟にどう表現するのがいいのか迷って首を傾げてしまった。


「アイザック・スペンサーと申します。初めまして」

「まぁ公爵家の。お疲れになったでしょう、どうぞこちらに」

 おば様は少女の様に喜んで招き入れようとする。


「おば様、アイザック様はお疲れでホテルにチェックインしないといけませんからお引き止めするのは⋯⋯」

 最後はモニョモニョと有耶無耶(うやむや)にしたつもりだったが

「構いませんよ、従者を向かわせましたから」

 とアイザック様は爽やかな笑顔で応えてくれるのでそれ以上の口出しは出来なくなった。


 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎


 それからアイザック様は応接室でおば様と意気投合したらしく約束を取り付けてホテルへと向かわれた。


「足が長いのねぇー」

 おば様が夢見る乙女の顔で言う。

「これ見よがしに組んだりされてたでしょう?」

 パトリシアは憎々しげに言う。

「あら、厳しいのね」

「もう目の前で足をこっち組み換えあっち組み換え⋯⋯」

「ブッ、気を引きたかったんじゃ無いの?」

 おばさまはお腹を抱えてケラケラ笑っている。

「もう気不味いったら」

 パトリシアはうんざり顔で言う。

「馬車は密室ですものね」

「そうなんです、それで本を読んでたら酔っちゃって」

「まぁ大変、それで?」

「アイザック様の前でオエッってなったんですよ」

 おばさまと二人ゲラゲラ笑いながら話しているとマーサが帰ってきた様だ。

「お嬢様、お帰りなさい」

「マーサ、新居の準備一人で大変だったでしょう。本当にありがとう」

「私の方はそんなに大変では。それより結婚式如何でした?」

 マーサはそれが一番の関心事の様だった。

「私も聞きたいわ。パトリシア疲れているでしょうけど好奇心が抑え切れないの」

 おばさまも聞く気満々である。

 そして私は新聞を賑わせた世紀の年の差カップルの馴れ初めを話し始めた。



もし良ければブックマークと評価をお願いしますd(^_^o)

ところで昨夜打ち込んだはずの小説が消えた!

最後のポチッを忘れたのかとガッカリしてます。

最近この手のミスが多いです。

ボケたのでしょうか?

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