表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/59

でっち上げ

 パトリシアの姉ロザリンドは両親から呼び出され、公爵やその(とも)の者達に間違っても聞かれぬ為、わざわざ離れた母の部屋へ呼び出された。

「何故お母様のお部屋にお呼びですの?」

「間違っても公爵様方のお耳に入れない為だ」

「丁度良かった、話が私の方もありましたの。所で何か内緒事なのですか?」


「ロザリンド、最近は公爵様とばかり出掛けたりしておるでは無いか、お前には婚約者が居るのだぞ」

「うちのお客様を持てなして何が悪いのですか?」

「限度があると言っているのだ。まさかとは思うが、ロバート君を蔑ろにしているのではあるまいな?」

「そんな事しておりませんわ。それより問題はあちら、ロバート様の方ですのよ」

「何?」

「何かあったのなら私達に話して頂戴」


「お父様、お母様。思い切って申し上げます。ロバート様は浮気をされているのです」

「何だと、あの真面目なロバート君がまさか……」

「真面目な人だからこそです。私と行く筈でしたお芝居に他の女性をお誘いになり、そしてその後二人っきりでお食事を夜遅くまで楽しまれたのです」


 セシリアに聞かされた翌日、早速下男に金を持たせて聞き回らせて、芝居の後レストランで食事した事も掴んだ。

「どうして……もしかして噂になっているのか?」

「はい、お友達や知人に聞かされた時は耳を疑いましたわ。彼は浮気などする方では無かった筈ですもの」

「今の所は口止めしていますが、相当親しげで見ていられなかったと仰っていましたわ」

 嘘である。誇張して伝える事によって、両親のロバートに対する心証を悪くしたかった。


「……」

 黙ってしまった二人に追い討ちをかけるべく、次の言葉を出す。

「それに……いえやはり正直に申し上げます。そのお相手は何と私の親しい友人なのです」

「それは確かなのか?」


「目撃者が沢山いらして皆んな口を揃えて仰ったのです。あれはエブリン様だと」

「エブリン嬢は認めたのか?」

「いえ、もう顔も見たくありません、二人共。私を騙していたのですから」

 自分が約束を反故にした事には触れずに畳み掛ける。


「それでお願いがあるのです。信頼関係は崩れました。この婚約を解消したいのです」

 母親が上手い具合にベッドへと倒れ込んだ。


「早まるな、あんなに良い条件の縁談を解消すると言うのか」

「考え直して頂戴、ロザリンドお願いよ」


「お父様、お母様。信頼関係の築けない夫婦関係が何になると言うのでしょうか?私はこれから先ずっと不幸であり続けなければならないのですか?」

「彼も反省するだろう、私から彼にガツンと言ってやろう」


「もう遅いのですわ」

「どう言う意味なのだ、遅いとは?」

「もう解消する旨のお手紙をご両親と本人に、それぞれ送りました」


「何私達の同意も得ずにか!」

「お父様は私に不幸になれと仰るのですか!」


 途端にロザリンドの表情が一変し、目が吊り上がり眉間にシワが寄る。そして癇癪が爆発する。

 母親の大事にしている高級絵皿に突進して乱暴に手に取った。

「それだけは止めて頂戴!」

 投げようとして母親が止めに入り、絵皿は無事回収された。


 次に横の宝石箱を手に取って振りかぶる!

「あなた何とかして!それにはもっと高価な宝石が……ローンがまだ残っているのぉ」

「また私に無断で買ったのか」

 構わず投げると父が必死で胸元にキャッチして事なきを得た。

 その代わり相当痛かったらしく顔を歪める。

「ロ、ロザリンド分かったからもう止めなさい」


「私の()()は無事?」

「私の身体よりもか!」

「い、いえ。あなたお身体は大丈夫?」

「心にも無い事を。宝石の方が大事と見える」

 父親がいじけて拗ねてしまった。


「……」

 そしてカミラ夫人は大きな宝石箱をパカっと開ける。

 そこには整然と並んでいた溢れんばかりのキラキラが、衝撃でゴチャゴチャになっていた。

「私の宝物がぁー!」

 カミラは目の玉が飛び出んばかりに叫んで、ロザリンド問題が頭から消え失せた。


 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎

 そのどさくさに紛れてロザリンドは部屋からまんまと抜け出した。

 やれやれと思いながら自室に戻ろうとすると、妹のセシリアが立ち聞きしたらしく行く手を阻む。


「お姉様正気?」

「ふふん!もうすでに婚約破棄の手紙は出したの。あなたのお陰」

「後で後悔しても知らないわよ」

「後悔なんてするもんですか!」

「私はこの件には関係無いからね!」

「安心なさい。責任なんて取らせないから」

「その言葉忘れないわよ」

「ちょっと、生意気よ」

「忠告はしましたからね、後で困っても頼らないでね!」

 そう言って踵を返して行ってしまった。

「何を後悔するのよ、明るい未来が待っているのに」

 ロザリンドは信じて疑わなかった。

皆さんこんにちは。(^-^)/

もし宜しければブックマーク、評価、面白い感想などお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ