目覚めの時
前作が無事完結して新しく挑戦です!
人々の心の動きを丁寧に書いていける様に頑張ります。
また前作で課題だった部分も改善できる様に努力します!
皆さま宜しくお願いしますm(_ _)m
姉妹間でどうしてこんなに扱いに差が出るのだろう?
幼い頃から感じた違和感が徐々に大きくなってきた。
パトリシアは常日頃から不満に思っていたし、不思議にも思っていた事だった。
私が悪い子だから?解決しない立ち位置にどうすることも出来なかった。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
パトリシアの生家は伯爵家である。
領地はチョットばかり田舎に位置し、主な産業は農業のみと言う地味な土地を所有する領主である。
次こそは男をと、産んだ娘ばかり三姉妹である。
父は四人目を挑戦するつもりが、母にドクターストップが掛かりやむなく諦めた。
跡目を継がせるのは親戚の次男坊で、養子に迎える事が既に決まった。
それからは娘の婚約者探しが始まるが、長女と三女は直ぐに見つかり爵位もその親達も申し分なく本人同士も気が合うと言う三拍子揃ったものだった。
ただ次女である私だけは相手が見つからず暫くは努力した様だが、直ぐに諦めた様で爵位にだけ注文を付け本人に任せると言ったのである。
本人に任せると言ってもこの時次女は9歳、できる筈も無いとわかっていながらその後は放置された。
父親の思考は娘達に持たせる持参金の捻出に移っており、パトリシアの婚約者だけ決まらぬまま時だけ過ぎた。
長女と三女は順調に婚約者と交流を深めていった。
その為ドレスや貴金属も母や祖母から譲られたり新しく購入したりして盛り上がりを見せていたが、一向に婚約者も決まらぬ娘がいることさえ忘れているかの様だった。
別に暴言や暴力を受けた訳でもない。ただ無関心なだけ。
食卓を囲んでもパトリシアだけ会話がなくとも気にも止めず、家族四人で盛り上がる様を見せ付けられるだけだった。
会話がない分早く食べ終わるパトリシアは先に席を立ち、いつも一人で部屋に篭り本を読むふりをしながらいつも考えていた。
疎外感、その一言に尽きるだろう。
この家の本当の子供では無いのかと悩んだ時期もあったが、それも杞憂でただ単に存在を忘れている様だった。
滅多にお声も掛からずパトリシアも会話に入ろうと努力した。しかし知りもしない話題ばかりでドンドン話が進み、誰一人として気に掛けて説明することも無く、心だけが疲弊した。
悲しい事に今置かれている状況はただ放置されているだけだった。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
「お父様、お話があります」
「パトリシア、今ちょうど忙しいから緊急でなければ後にして貰えんか」
父は面倒なのか私との会話はいつもこんな風に言う。
私の為に時間を作ることは滅多になかった。
「御言葉ですけどいつもそう言って話にもならないじゃありませんか、私の婚約者の件ですわ」
「あぁ、ようやく見つけてきたか。それでどちらのご子息だ?」
「お父様も私が社交にも出かけないことご存知でしょう?どこで知り合うと言うのですか」
「何だ、見つけて来たわけじゃなかったか。今頃探してくれと言うわけじゃあるまい」
「ハァ?それどう言う意味ですの?私だけワザと放置して後は知らんぷり、フォローも何もないじゃありませんの」
ここの所あんまりな扱いに、とうとう堪忍袋の緒が切れて強い口調となった。
「どう言うつもりも自分で好きな男が選べるのだ、何の不満がある?」
「その機会も与えられずどう選べと言うのですか?社交できるドレスさえもない」
「ドレス?お前の予算を使えばよかろう。何でも好きなものをその範囲で買えばいいのだ」
「予算?そんなもの初めて耳にしましたわ。ロザリンド姉様もセシリアもそれで自由に買っているのですね」
「……そうだ」
「分かりました、今まで使わなかった予算をすぐに下さい!」
「何?」
「今まで一度たりとも贅沢品は買ったことがありません、さぞ沢山貯まっているでしょうからそれで恥をかかない程度に揃えますわ」
「う、うむ」
「では後程取りに参りますから小切手を用意してくださいね」
これだけハッキリ言えばお父様のお考えも変わるだろう。
その時の私は純粋にそう思っていた。
お読み頂き有難うございます。
今後とも宜しくお願いします!
前作「ラブレターを抱いて眠った彼女を追いかけて」をまだお読みでなかったら読んで見てくださると嬉しいです。もし宜しければブックマーク、評価、感想、レビューなど頂けましたら更に嬉しいです(^_-)