第五章・望みの果てに ⑨
「ミリちん、ずっとあの調子だね」
「仕方ないわよ。愛する人に置いて行かれたんだもの」
「ネイビルさんもそう思います? 私も実はそうなんじゃないかと思ってたんですよ!」
「え? そういう関係だったの?!」
夜中である事も忘れて姦しくする女三人に苦笑を浮かべるミリア。
「皆さんは戻って寝てください」
「私は無理よ? お客様を外に放置するなんてできませんから」
と言いながらケイミはミリアが否定しなかったことをネイビルと目線を合わせて確認し合う。
「ですがそれは私が――」
反論するミリアの言をネイビルが遮った。
「同じよミリアさん。貴女が好きで外で待っているように、私たちも好きでここにいるんだから」
ネイビルの言葉にケイミとルザリーが同意を示し、仲間思いだと言わんばかりの表情を見せたが、そもそもミリアが三人を部屋に戻したいのはレイナを待つことに巻き込んでいるからではない。
「では静かにしてください。寝ている方に迷惑ですから」
ぐうの音もでない正論に三人はしばらく無言を続けた。
「大分静かになったよね?」
ルザリーの言葉に同意できるのはミリアだけ。自分たちの事を言われてると思ったネイビルとケイミは呼吸の音すら殺そうと口元を覆っていた。
「でもレイちんが巻き込まれているとは限らないから、きっと大丈夫だよ!」
ミリアが宿の外でレイナを待つことを決めたのは、南方から聞こえた戦闘の音と狼の遠吠えが原因だったが、ルザリーの言う通り、巻き込まれているとは限らない。
「そう……ですね」
けれど、心配する側には巻き込まれているかどうかは大した意味はない。
「謝らないといけないわね。止めるべきじゃなかったわ」
宿で待つことを選ばせたネイビルが申し訳なさそうにすると、ミリア慌てて首を振る。
「いえ、止めてもらってよかったです。行ってもレイは怒るだけですから」
「心配して駆け寄っていても?」
頷くミリアにルザリーが驚く。
「えぇ? 心配して駆け付けたなら普通怒らないよ! ね?」
同調を求められたケイミは咄嗟的に頷いてしまう。
「あでも、レイナさんはほら、ミリアさんに危険が及んでほしくなさそうだから怒りそうですよ?」
「愛ね」
「ネイビルさん、もうその話題はやめましょう? 私もレイも女ですよ?」
またまたと思うネイビルであったが、やめようと言われた手前、口にすることはしなかった。代わりに別の疑問があったことを思い出す。
「そう言えば、レイナって自分の事を俺って言うのはなんでなの?」
他二人もその話題に食いつきを見せ、回避は無理だと悟る。しかし説明のしようがないミリアは口を開閉させるだけ。
「何々、言えないようなことだったの?」
「そ、それはその、だって」
友人である三人に嘘は言えず、かといって真実である魔王だった時の名残とも力を封じる為に女性になったとも言える訳もなく、悩みに悩んだ末にミリアは嘘を付かずに切り抜けられる最高の札を思いつく。
「知らない」
知らぬ存ぜぬ。ただその言葉を鵜呑みにするものは誰一人としていなかった。それでももう一押しだとミリアは言葉を続けた、本物の余計な一言を付け加えて。
「そう! 本当に知らないんです」
「……、……知らないなら仕方ないわね」
「ネイちんもうちょっと感情込めようよ」
「ま、まぁいいじゃないですか。自分のことをどう呼ぶかは人それぞれですよ」
ケイミの言葉で納得してくれたことで密かに胸を撫で下ろすミリアをネイビルは見逃さない、けれど不意に視線を東に向けて微笑むミリアも見逃さなかった。
「……ほら、行っておいで」
「で……は、いってきます」
三人に見送られながらミリアは待ちに待った待ち人の下へ。
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