第四章・新たな呪い ⑤
暇人共の歓迎を無視して受付に行き、手の空いていそうな男に声を掛ける。
「よろしいでしょうか?」
わざわざ口調も声音も変えたのには理由がある。身分の高そうな相手を無視できないのは世の常だからだ。
「あ、はい。どうなさいましたか?」
目論見通り、邪剣にはされずに丁寧な対応をしてもらえる。
「こちらを」
「拝見致します」
大事な書簡とでも思ったのだろう、両手で受け取り中身を見た職員が困惑顔だ。
「何か問題でも?」
「あいえ。で、ではライセンスの提示をお願いします」
首から木製のライセンスを見せてすぐに仕舞い、ミリアにも同じことをするように求める。
「ありがとうございます。では詳しい内容は奥で話ますので、どうぞこちらへ」
案内された一室は簡素なもの、机を挟む二つの長椅子のみ。
「少々お待ちください」
案内をしてくれた男に感謝の言葉で見送ってから長椅子にふんぞり返る。
「レイはどんな試験なのかわかりますか?」
試験と言う事で少し落ち着きがないミリアに座るように頼む。
「とりあえず筆記じゃないから気にするな」
読み書きができないで筆記試験などどう足掻いても不合格だ。
「筆記もあるんですか?!」
それが不安で落ち着きがなかった訳じゃないようだ。
「確か銀等級から金に上がる時にな」
試験内容は町に拠って変わる。おおよその見当は付けれても想像の域はでない。
大人しく部屋で待つこと数分、ノックなしに入室してきたのは、微笑んでいるのかそういう顔なのかがわかりにくい線の細い男。
「レイナ様にミリア様ですね、お待たせいたしました。本件を担当します、私ケッジ・ウィルソンと申します」
握手を交わして机を挟んで座り合う。
「早速本題に入らせていただきますが、初めての昇格試験と言う事で、まずはこちらに目をお通しください」
二枚渡される所を一枚返してミリアと二人で見る。
書かれている内容は生死は自己責任であり、合否に対しての質問意見は受け付けないなどの基本事項。
「問題ない。試験内容は?」
「こちらの札と同様のものをお持ちください。在り処につきましては、ここより北にあるダンジョンの五層に置いてあります」
「二つあると聞いているが?」
「どちらにも設置されておりますので、ご安心ください」
目的の品を違わずに届ける事と戦闘能力の証明を兼ね備えた試験、理に叶っている。
「もう一つ聞きたい。札を持ってくる事が試験だよな?」
「解釈につきましてはお任せしております」
読みにくい表情を読む必要もない。
何はともあれ札を持ってくる事が達成条件、正攻法はダンジョンに潜ることだが、買ったり奪ったりでも達成には至れる訳だ。受験者の性格までも把握できる試験、中々に食えない奴が考えたと想像できる。
「わかった。なら五層にいって探すとするよ。ミリアもそれでいいか?」
「? はい大丈夫ですよ?」
何故聞かれたのかをわかっていない様子のミリアに頑張ろうと微笑む事にする。
「お気をつけていってらっしゃいませ」
一礼してくれるケッジにそうだと再び声を掛ける。
「弓を扱う武器屋といえば?」
「向かう途中にあるかと思います」
ケッジに感謝して部屋を出る。
「お、嬢ちゃん達待ってたぜぇ?」
町にいる冒険者は暇人だ、予想通り面倒から寄ってきた。
「おいおい待ってくれよ可愛いお嬢さんたち」
無視を決め込み、ミリアの手を引いて北を目指す。
全力で駆け抜けられれば酔っ払いに追い付かれる事はないが、ケッジが言っていた武器屋に立ち寄っていては追い付かれてしまうのは確実だ。
「武器屋はまた今度でいいか?」
「構いませんけど、前を見て走ってください!」
目で得られる情報は膨大だ、故に頼ってしまうのは仕方がない。しかし自分の周囲ぐらいは魔力を用いればどうなっているかを簡単に把握できる。
「こっちだ」
人と人の隙間がより大きい所を見つけながら、北の門にたどり着く。
簡単な手続きを経て、ようやく窮屈な町から解放される。両腕を大きく広げて解放感を思う存分味わう。
「気持ちはわかりますけど仕事ですよ」
「わかっている、遅れるなよ?」
軽く体を解して準備運動を始める。
「私の台詞だと思いますよ?」
前回は置き去りにされたが今回はそうは行かない。
「おーいアンタら! ダンジョンに行くなら馬を借りていかないか?」
「遠慮する! んじゃ行くか」
圧倒的な差を見せつけてやろうと、遠慮せずに地を駆けた。
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