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第2話 アルディオン帝国軍の襲撃

あちゃー。前の話は一人称が定まっていませんでした。今後は気を付けます。では!

 辺りは静けさを取り戻し扉がゆっくりと開いた。俺とラディアスは警戒心を高めいつでも動ける構えをした。


「お客様。少し訪ねたい事が――」


 宿主が話したい事があるようだった。だけど俺達には判る。扉が開く前に外から鎧などの音がしていた事を。


 故に俺とラディアスは目線で意思疎通した。終わると途端に俺はセフィアの手首を握り引っ張っていく。


 一方のラディアスは宿主目掛けて突っ込み。体当たりを仕出かしていた。その衝撃で付き人も突き飛ばされたようだった。


「へへ。悪いな。おい! シオン! 行くぞ!」


 ラディアスの方を見ると扉が開き切り跳び出すには今しかなかった。俺はセフィアの手首を握っているかを確認し走った。


 俺が廊下に出るとラディアスが待っていてくれた。さらに廊下で倒れている二人を見るとやはり付き人は帝国兵だった。


 セフィアと帝国との繋がりは不明だけどこれは確実に追われているのは確かのようだった。今は逃げるだけでいい。


「行くぞ! ……ちぃっ!」


 ラディアスが行く先には帝国兵が二人いた。どうやら一人ではないようだ。どれだけの人数がセフィアを狙っているんだ。


「ラディアス! 後ろにも帝国兵が!」


 思わず声を荒げた。後ろの帝国兵は気配からして未だに倒れたままか。もしくは立っていても覚束ない感じだろう。


「解っている! ここは俺に任せて! お前らは先に行け!」


 ラディアスは先導する事を諦めたようだった。故に俺とセフィアを先に行かせようと二名の帝国兵に挑んでいった。


 相手は軽装だ。重装ではない。これなら殺さずに済む。とにかく今は隙が出来たら動かないといけない。それまで挟撃にならなきゃいいけど。


 一方の帝国兵は一人が先導するようにラディアス目掛けて突っ込みその後にもう一人が突っ込んでいた。


「よし! セフィア! 行こう!」


 今なら行けると俺は思った。敵の狙いはラディアスに向かっている。この機を逃せば挟撃に遭って捕まるだろう。それだけは避けないと。


 俺達はこの辺の地理に詳しくはない。いくら逃げ切れてもこの先の未来なんて想像も付かない。だけどそれでも俺はセフィアを救いたいと思った。


 どうやら帝国兵も殺せない動機があるみたいだ。さっきから本気を出していない。そう思いつつも俺はセフィアを連れて宿屋を出た。


「早く。ここから出ないと」


 急かす思いを口走りながら俺はセフィアと共に村の出入り口を目指した。幸いな事に帝国兵は片っ端から建物内部でセフィアを捜しているようだ。


「急げ! シオン! あともう少しだ!」


 どうやらラディアスが遅れて宿屋から出てきたようだ。さすがはラディアスだ。帝国兵なんかに負ける訳がない。俺は密かに思い出した、ラディアスが人を殺した瞬間を。


 俺が弱気になって主人を殺せなかった時みたいだ。だけど今の俺はもう弱気じゃない。俺は俺だ。今度は俺達がセフィアをどうにかしないといけないんだ、絶対に。


 だから逃げ切ってみせる。どんなに辛くても。俺達のような過去をもう二度と作らない為にも。それが俺と――。いや。俺達の願いだ。


「あと……もう少し――。っ!?」


 なんだ? 建物の影から一人が出てきた? 見た感じは帝国兵ではない? 判らないが今は逃げる方が最優先だ。悪い! ここは体当たりだ!


「ふん。小賢しい馬鹿は嫌いだ。これだからな」


 謎の男はそう言った。言い切ると右手を開いたまま前にかざした。魔法か。く。急には避けられないし止まれな――。っ!? なんだ? 体が動かない?


「シオン! く。束縛魔法か!」


 ラディアスは距離がありなにも出来ない。く。こんなところで負けたくはない。俺は――


「やはり村のここを見張れば後は楽に終わる。悪いな。一人も通す訳にはいかない」


 駄目だ。体が動かない。いきなりこんな事になるなんて。く。この謎の男は帝国兵ではないが頭が相当に切れている。賢い。


「シオン!」


 く。ラディアスも俺も魔法は使えない。セフィアを護ると言っておきながらこの様なんて。ぐ。所詮は奴隷上がりなんて夢のまた夢なのか。


「あ……いや。ああ!?」


 え? どうした? セフィアが苦しみだした? まるで急になにかを感じ取ったような声音だった。え? もしかして謎の男に反応している?


「ふはは。これは丁度いい。貴女がいないと帝国の礎は築けない。さぁ。戻りましょう」


 謎の男はセフィアに言っているのか。どうしてセフィアを必要としているんだ。俺にはただ単にあどけない少女にしか見えないのに。


「あ……駄目ぇ! 助けて! っ!?」


 どうしたんだ? 急にセフィアが混乱し始めた。なにが起きていたんだ、あの帝国で。駄目だ。セフィア。俺が握っている限りは逃げれない。ごめんな。


「く。うおおおおおお!」


 あ。ラディアス。駄目だ。勝ち目はない。魔法が使えない俺達じゃもう無理なんだ。諦めたくはない。だけどもう既に敵の方が一枚も上手なんだ。


「小癪な。同じ目に遭わせてやる」


 ああ。ラディアス。セフィア。ごめん。やっぱり俺――


「諦めるな! 小僧! この老兵がいる!」


 え? 急に老人の声がした。この声からして男だ。


「兵士はなにをしていた!? あれ程に気を抜くなと言っていただろうに!」


 謎の男はそう言いながらラディアスに束縛魔法を掛けずに自分が出てきた建物を見始めた。すると建物の影から投げナイフが出てきた。


「ちぃ!」


 飛んでくる投げナイフを謎の男は自分のマントで防いでいた。だけどどうやらラディアスの体当たりには間に合わないようだ。


 見るも無残に謎の男ごとラディアスは倒れ込んだ。もう既にその時点で捨て身だった。だけどこれで形勢逆転になった。


 気付いた時には老人が目の前におり俺の束縛魔法を解いてくれた。俺は即座にセフィアの手首を放した。この時のセフィアはなぜか落ち着いていた。


「捕まえたところでどうする? 殺すのか! その手で!」


 謎の男はそれでも怯む事なく挑発してくる。セフィアは決して恐怖心がなくなった訳じゃない。だけど老人が登場してからなぜか落ち着いていた。


「減らず口を!」


 ラディアスの言う通りだ。だけど殺せない。俺とセフィアは立ち止まり代わりに老人がラディアスに近付いた。


「うむ。そいつは今すぐに殺した方がいい。出来るか」


 老人はそう言うとナイフを取り出そうとした。駄目だ。殺すなんて事は出来ない。それは俺とラディアスの約束だからだ。


「いや。殺さない。しばらくは束縛されていればいい」


 ラディアスは俺との約束を守り切ろうとした。そうだな。今は形勢逆転しているし束縛魔法で十分だろうな。

 

「そうか。ならば――」


 老人が素直に納得しそう言い残すと謎の男に束縛魔法を掛け始めた。それが本当に束縛魔法なら当分は逃げれるだろう。


「束縛魔法か。助かる」


 どうやらラディアスも束縛魔法と思ったみたいだ。ふぅ。これで逃げれるな。よかった。一時は死ぬかと思った。


「お安い御用だ」


 老人は淡々と答えた。あっさりとしている。この時の俺は老人が悪い人には見えなかった。セフィアの件もある。


「ところであんた」


 なんだ? ラディアスが鋭い目線を老人に送り始めた。なんだ? なんで助けられた側が意味深な目線を送っているんだ。


「うむ?」


 老人も不思議がっている。セフィアが落ち着いているから悪い人ではないように感じる。だけど早合点――


「帝国の人間だろ? この投げナイフは帝国の物だ」


「な!? なに!?」


 思わずなにも考えずに驚きの言葉だけが俺の口から出てきた。う、嘘だろ? この老人が帝国軍の一員?


「いかにも儂は元帝国軍の者だ。だが安心せい。今はしがない反逆者だ」


「反逆者?」


 どういう事だ? 反逆者だから元なのか。それとも――


「ふむぅ。話は後だ。今はこのセルゲイを信じてほしい」


 老人は自らをセルゲイと名乗った。セルゲイか。信じたい。だってセフィアがこんなにも落ち着いているから。


「ラディアス。俺……信じるよ、だってセフィアが落ち着いているから」


 思い切って俺は俺の意見を言った。こんなにも落ち着いていられるのはきっとなんかの縁があったからに違いない。だけどラディアスはどうだろうか。


「はぁ。確かに嘘のように今は静かだな。よし。ならここは案内して貰おうじゃないか」


 俺は安堵した。物分かりのいい奴で助かった。それに今は少しでもセフィアの事が知りたい。きっとだけどセルゲイはセフィアの事を知っている筈だ。


「有難う。それじゃあ儂に付いてきてくれ。そうすれば自ずと解る事もあるだろう」


「知りたい。だから俺達は貴方を信じる。行こう。安全なところへ」


 こうして俺達はセルゲイと名乗る老人を仲間にしなんとか村を脱出する事が出来た。果たしてこれらが待つ運命とはなんなのか。俺達はまだ知る由もなかった。

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