第4話
第4話~第7話まで世界観の説明がメインの話になります。
人名や地名がたくさん出てくる上、説明ばかりになります。
退屈だと思われましたら流し読みしていただき、第2章頭に差し込んでいる人物紹介をご確認のうえ、この物語の本編開始となる第8話からご覧ください。
転生してから毎日朝から晩まで勉強、勉強そして勉強。たまに剣術。
幸いなことに言語の読み書きに関しては異世界転生のお約束なのかチート能力が備わっていたようで難なくできた。
それに算術も前世の記憶のおかげで問題なくできた。むしろ記憶喪失前より算術が得意になっているのではないかと家庭教師に驚かれたが、日本でいえば中学1年生レベルの問題だったので私が特別賢いわけではない。
見た目は13歳かもしれないが、実年齢は31歳なのだ。出来て当然である。
ちなみにこの国では学校が初等部、中等部、高等部の3つに分かれており、それぞれ4年、5年、3年通うことになる。
といっても、庶民が通う義務教育は初等部のみ。
中等部は金持ちの庶民か貴族が通うもの。
そして高等部は貴族のみが通えるらしい。
「どうして庶民は高等部に通ってはいけないのですか?」
不思議に思って私は先生に尋ねた。今日は基礎魔法学の授業である。
「庶民は魔法が使えないからです。高等部は魔法の使い方を主に教育するための学校ですから庶民は通う意味がないのです」
貴族といえば領地を治めたり、政治に関与していたり、社交界で情報を集めたりしているイメージを持っていたのだが、この世界では少し違うらしい。
“魔法を使える=貴族”なのだ。
まれに庶民から魔法を使える者が生まれるそうだが、16歳で行う覚醒の儀が済めば貴族を名乗れるようになるそうである。
逆に、貴族といえども魔力を持たない跡継ぎしかいない場合、貴族の称号――この世界での貴族は地位と言うより称号である――を剥奪されるらしい。
「覚醒の儀って何ですか?」
この世界については知らないことだらけなので、何か質問するたびに知らない単語が出てきて質問攻めにしてしまうのだが、嬉しそうに先生は解説してくれる。
「魔力があっても、首都ソレルの大神殿で行う覚醒の儀を済まさなければ魔法を使うことができないのです。クリストフ様も魔力をお持ちですが、今はまだ使えないでしょう?」
使い方がわからないだけかと思っていたが、何やら儀式をしなければいけないらしい。
先生は続けて話す。
「覚醒の儀自体は年齢関係なく行えます。しかしながら魔法の使用は体に負担がかかります。ですから成長期の子どもに魔法を使わせないようにするため、16歳未満が覚醒の儀を行うことは法で禁止されています」
魔法学の授業と聞いて、座学の後は実践をするのかとわくわくしていたのに期待はずれである。あと3年待たないといけないようだ。
「じゃあ自分が何属性の魔法を使えるのか覚醒の儀までわからないのですね」
がっかりしながら呟くと、意外な言葉が返ってきた。
「いえ、それはわかりますよ」
なんでも、生後一ヶ月ごろにお宮参りならぬ神殿参りをするのがこの国の伝統だそうだが、その時に神官に魔力の有無や属性を確認してもらうのだそうだ。
「じゃあ先生は私が何属性の魔法を使えるかご存知なのですね!」
「いえ、それは知りません。奥様に教えていただいていませんから。まぁ予想はつきますが」
魔法学の先生ともなると私から溢れ出る魔力を察知してなんとなく判断できるということなのだろうか?
この世界には火、水、樹、地など様々な属性があり、貴族は人々の生活を守ったり助けたりするために魔法を使っているらしい。
例えばここより北のノルデン地方は本来寒くて作物が育ちにくいそうなのだが、火の魔法を使う貴族のおかげで暖かさを保っており、この辺りと同じように農業をすることができるそうだ。
(戦争のためではなく生活のために魔法を使うってなんだか素敵! 私はどんな力を持っているのだろう? 皆の役に立つ能力だったら良いな)
私は目を輝かせて先生に話の続きをせがむ。
「おそらくクリストフ様は闇属性でしょうね。父君が闇属性ですから。男の子は父親と同じ属性を持つ確率が約95%ですので」
溢れ出る魔力を察知したのではなく確率論だったらしい。