プロローグ。
-私は、顔が悪かった。頭が悪かった。口が悪かった。態度が悪かった。
それは、前世でどんな業をなしたのかわからぬほどで、一つ上の姉や少し離れた弟の勤勉さ、真面目さ、顔のよさ、身体能力のよさ、全てを羨ましく思った。だから、そんな何もない何も出来ない己が、どうすればおいしい物を食べられるか、そればかりを考えた。
他人は利用するもの。だから、私も利用されるが、それは私にとってもメリットがあればそれでいい。
そんな私を両親は諌める事もあった。だけど、この人たちは何かをひとつは必ず持っている。
顔、身体、性格・・・。
子も親を選べないが、親も子を選べない。これはどうしようもないことで、諌められるたびに、親を哀れに思った。
そして、一人で泣いて、何故なんだろうとどうしてなのだろうと自分を責めてみても、お金が降ってきて顔を治す事が出来るわけでもなく、頭が急によくなるわけでもない。
つらかった。
助かりたかった。
小さい頃から、ずっと救われたいと思っている。
でも自殺は出来ない。迷惑はかけたくない。こんな自分が、他者に迷惑などをかけることは出来ない。
「ハァ・・・」
バイト帰りに溜息をついた。
もう秋から冬へと季節が変わろうとしている。見上げた空は薄ねずみ色だった。時折吹く冷たい風が、私の頬をなでる。私も、今年で28歳だ。
どうしようもない。
どうすることもできない。
わかっているから、今の今までそのまま救われたいと思い続けて、生きてきた。
高校を卒業と共に、がんばろうと就職活動をしていたときもあったが
顔が悪い、対人関係が苦手、大学を出ていないからという理由で、どこにも内定をもらえなかった。
しかし、そんな私に
はじめから持っている人間は口をそろえて私に言うのだ。「顔だけじゃない。頭だけじゃない。人は、それだけじゃないんだよ。」と。
最初のうちは、幼いときは、理不尽な言葉だと考えたが、
今ではもうそんなことに思考を咲くこともめんどくさかった。
「どうしようもないな。」と、呟く。
このまま生きていくのだろうか。
どうしようもないまま、どうすることもできないまま?
そう考えると、眩暈がした。
最近、先のことを考えると動機や眩暈がする。
キーン
と、頭の中で音が鳴って、くらくらする。今日はちょっと、強い眩暈だ。
私は、歩みをやめ、道の端に身を寄せた。このまま少しの間、瞼をつぶって、胸に拳を持っていって、数回息を吐いて、吸って、、
そうすると、どんどん収まる。
私はいつものように、ゆっくりと瞼を開けた。
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はじまり
はじまり。