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Mundus ex machina  作者: 嘘(仮)
第一章 旅立ち
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絶望

「モルトさん、聞いてください大発見ですよ…って何やってるんですか?」

 ローナはモルトの前に浮かんでいる地図を覗き込む。

「地図ですか」

「ああ。地図に書かれている印の意味を考えていてな。それで、大発見とはなんだ?」

「なんとですね、古代文明の破滅の理由見つけたんですよ」

 ローナが自身で書いたであろう翻訳文を彼に見せてくる。

「これは…」

 そのあまりに突拍子のない理由に彼は言葉を失う。そして、彼はその情報に言い知れぬ恐怖を感じる。

 その恐怖の正体を掴むためにも情報を基に彼は様々な考えを巡らせ違和感に気付いた。

(人類には抵抗手段がなかったはず。ならば、なぜ神とやらは滅亡寸前でわざわざ攻撃を止めた?本当はもっと別に目的があったのではないか?)

 彼は再び資料に目を通す。

(だめだ、目的が違ったとしてもこの情報だけじゃ特定できない…。情…報?)

 彼はここであることに真実へとつながる一本の道に気付く。

(10歳まで大都市に住んでいたが今思うと古代遺跡に関する情報が明らかに少なすぎていた。割と本は読むほうだったがそれに関する記述を見たことは一度もない。つまり、情報が操作されていた?)

 彼は先ほどの言い知れぬ恐怖の一部を見破った。

 情報統制である。それによって隠された情報の一つ、それがこの情報だ。

 つまり、この情報は本来ならば知りえない、知ってはいけない情報だったのだ。

(もし本当に情報が操作されていたならば行ったものも、神とやらの本当の目的もおのずと見えてくるな。それはおそらく…)

 ずっと考えているモルトに痺れを切らしたのかローナが話しかけてくる。

「モルトさん、考えていても分からないものは分かりませんよ。それより、他にも何かあるかもしれません。もう少し探索を続けましょう」

 その言葉に彼の思考は遮られた。

(確かに今ある情報だけで考えても仕方がないかもしれない)

 そう思い彼は思考を止め探索を開始するのであった。


 暫く探索を続けたがあれ以来特にめぼしいものは見つからず、ついに最後の部屋の探索となってしまう。

「結局何もなかったですね。ここに何かあればいいのですが」

 部屋の前でローナが少し暗い顔で話して来る。

「大丈夫、きっと何かあるさ」

 モルトはローナだけでなく自分にも言い聞かせるように言い、部屋の扉を開けた。部屋には中心に何かの装置が置かれているだけであった。

 彼らはそれに近づく。

「何でしょうかこれ?」

 ローナが装置の周りを調べながら呟く。

 彼も装置を調べてみるが、それには他の装置にあるような操作盤はおろかボタンすら見つけることは出来なかった。

「分からない。なにかという予想すらつかないな」

 そのあまりに不可解な事実に彼らは首を傾げる。

 だが、諦めきれない彼らは何かあると信じ装置や部屋の探索を続けるのであった。


 それから暫く調べてみたものの結局何か分からず、街に帰ることとなった。

 街に戻る途中、モルトは今日見た資料や装置について考える。

(結局、神や情報統制の目的は予想の域を出なかった。だが、仮に情報統制されているのならばここ以外の遺跡などに更なる情報があるかもしれない。もし、本当にこれ以上のことが知りたいなら遺跡を探しに旅に出てもいいかもしれないな)

 そんなことを考えているとローナが声を掛けてくる。

「モルトさん、今日一日ありがとうございました。おかげで新しい発見や次の目標が出来ました。あの装置が気になりますし、明日また来たいのですがいいですか」

「ああ、もちろんだ」

 その解答にローナはニコリと笑い頷く。

「ありがとうございます。じゃあ、明日に備えて早く帰って体を休めないといけませんね」

 そして、彼らは何事もなく街に着き翌日に備え準備をするのであった。


 翌日、モルト達は朝早くから遺跡に向け出発した。昨日と同じように森へ入り、同じように警戒しながら進む。

 そんな中モルトはある異変に気付く。森の様子が昨日とはまるで違うのだ。

 鳥のさえずりは聞こえず、自分たち以外の生物の気配すらしない。まるで森が生物を全て殺してしまったかのように感じる。

「ローナ、何かおかしくないか。なんていうかあまりに静かすぎるというか」

 それに対し、ローナは茶化すように答える

「何言ってるんですかモルトさん。そんなこと気にすることじゃないですよ。あ、もしかして少し怖くなっちゃいましたか」

 彼はローナの様子から自身の考え過ぎだと思うことにした。

 しかし、彼の心に根付いた不安は消えることは無かった。


 彼らは静かな森を抜け遺跡へと辿り着く。

 モルトの心に不安が残っているせいか、はたまた本当に何かがあるのか分からないが遺跡の雰囲気は重々しく感じた。

「さて、今日も元気に探索しに行きましょう」

 ローナは明るい口調で言いながら昨日の建物へと向かう。彼も気のせいだと自身に言い聞かせその後をついていく。

 建物に入ろうとすると、中から人が出てきた。

 黒いフードを深々と被っており顔が見えない。また、雰囲気もどことなく異様さを感じさせている。

「こんなところに来るなんて、随分と変わった人ですね。もしかして遺跡荒らし?ってそんなわけないですね」

 フードの男がいった後、ローナが笑いながら話す。

 だが、彼には奴がただの遺跡荒らしには思えなかった。何かもっと危険な臭いがしたのだ。

「本当にただの遺跡荒らしならいいんだが」

「まさか、それ以上の何かだとでもいうんですか?ありえないです。第一こんな辺鄙な街のさらに奥地の遺跡なんて遺跡荒らしくらいしか来ませんし。考えすぎですよ」」

 そういいながらローナは地下へと降りて行ってしまった。

(本当にそうならいいが…)

 彼にも確証はなかった。ただ漠然とそう感じているだけなのだ。

 確証がない以上さっきの人物を追いかけるわけにもいかず、彼はローナの後についていくしかなかった。


「キャーーーーー」

 地下に降りると装置のある部屋からローナの悲鳴が聞こえてくる。

「大丈夫か!?」

 モルトが急いで部屋へと駆けつけるとそこには床にうずくまりがっくりしているローラとめちゃくちゃに壊された装置があった。

「何があった?」

 とりあえずローナが無事であったことに安心しながら彼はローナに起こったことを聞く。

「分かりません。この部屋に来た時にはもう…。一体だれがこんなこと」

 目に涙を浮かべながら彼女は答える。

「そうか…。まぁ起こってしまったことはしょうがない。とりあえず今日は家に帰って休もう」

「はい…」

 泣いているローナは慰めながら彼は建物を出る。

「モルトさん。ありがとうございます。もう大丈夫です。それよりも帰ったら何します?せっかく時間が出来たんですし遊びに行きましょう」

「そうだな、ローナの好きなところに行くといいよ」

 ひとしきり泣き終えたのかローナは努めて明るく振舞っていた。

 しかし、彼女の赤く腫れた目が偽りの明るさであることを物語っていた。


 街への帰り道モルトは先ほどの事件や、フードの男について考えていた。

(さっきの状況から装置を壊したのはフードの男で間違いないだろう。だが、なぜ

 あの装置を壊したんだ。それに目的があったとしてなぜ装置のことを知っていた。あれはまだ誰にも話していなかったはずだ)

 彼は一人考える。

 しかし、いくら考えても答えは見つからず、ついに自分で答えを出してはそれを自分で否定する思考の泥沼にへと嵌っていってしまう。

 思考の堂々巡りの中ローナの一言で彼は現実に戻された。

「何か臭いません?」

 そういわれ彼は気が付く。焦げ臭い、何かが燃える臭いに。

「まさか」

 彼の中で嫌な予感がする。今日感じたどの予感よりも嫌な不安が彼を襲う。

(頼む。ただの予感であってくれ)

 そう願いながら彼は街へと走っていく。

 森を抜け街に着いたところで彼は自身の予感が的中していたことを知る。

(そんな…)

 燃え盛る街‘アビレス’を目の前にして彼はただただ絶望するしかなかったのであった。


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