食欲大魔人様の降臨からの振出。
2年前の健康診断で、たんぱく尿を指摘された。
その時の結果が、「+3」だった。
その後、「+2」で推移して現在に至っている。
「二次検査を受けろ」という召集令状がきて、嫌々ながらも健保協会の健康診断を受け入れている町の病院で見てもらったら、何故だか地元市民病院の紹介状を渡されてしまったのだ。
噂でしか聞いたことのなかった「紹介状」!
たんぱく尿の「+3」とは、それほどまでに恐ろしいものなのか?
2.5cmサイズの石化した胆のう結石よりも、恐ろしいものということなのか?
私は紹介状を手に、ガクブル状態で市民病院に行った。
市民病院では初診となるため、事前の問診では研修医と思われる若い先生に30分以上かけて根掘り葉掘り質問を受けた。
そして、更に待たされること30分。
腎臓内科の先生に言われたのは――。
「ひざ小僧さん。痩せれば、すべての数値がよくなります。痩せなさい」
親から授かった体は頑丈にできていて、普通なら糖尿病になっていてもおかしくないのに正常数値を保てているのは奇跡だと言われた。
だからこそ、悪化する前にとっとと痩せろという医者の命令が下ったわけで……。
ただ、この体つきに育ったのは昨日今日の話ではない。
少なくとも、25年の歳月をかけて霜降り肉に成長した。
それを改善しろと言われても、今すぐ律するのは大変難しい。
仕方がないので、10日に1項目のペースで減量実現のために新しい約束事を習慣化を心がけているが、たまに全ての約束事を無視する食欲大魔人様が降臨してしまう。
この時ばかりは、経験上無理に抵抗しても反動が大きすぎてさらなる自己嫌悪に陥ってしまうため、2〜3日は諦めて流されるがままにしている。
そう、桃鉄のキングボンビーにとりつかれた時と同じように、ただ過ぎ去るのを待っているのだ。
しかし、食欲大魔神様の降臨も程々に願いたい。
度が過ぎると、私の胃袋はカオナシ状態になってしまうのだ。
それが常態化するということは、私の減量生活は振り出しに戻ることを意味する。
……まったく、何度振り出しに戻ったことか数えたらキリがないよ……。