苦悩~悪役令嬢物語~ side 悪役令嬢 百合
悪役令嬢のお話が好きなので、自分で書いてみました。でも、基本読み専なので読みづらいかと思います。温かな目でご覧下さい。
「おにーちゃん、こわくないよ。
おいで。 ねむれないの?
わたしがおうたをうたってあげる。」
Amazing grace!
That saved a wretch like me!
I once was lost but now am found
Was blind, but now I see.
………。
私は、自分の気持ちが落ち着くように、いつもポケットに忍ばせているペンダントを触る。
不意に蘇る昔の記憶。
あれはまだ、私が4歳の時の出来事。
「おいっ。聞いているのか?
あれだけ結香を虐めといて、しらを切るつもりか!?今日を限りに、学園から追放だ!」
一応生徒会長と言われる男から言われる、身に覚えのない数々のこと。
ここは乙女ゲームの中で、私は悪役令嬢。そして今は、断罪イベントというものの最中らしい。
私は転生者。でも、前世のことはあまり覚えていない。そして一応生徒会長の男が庇っている、最近転入してきた所詮ヒロインと言われる結香と言う女の子。あの子も転生者らしい。
「柏木さん。もぅ、罪を認めて。」
生徒会に庇われながら目に涙を浮かべて言う転入生。
そんなことを言われても、全く身に覚えのないものの罪を認めろというのか?普通認めないだろう。馬鹿なのか?
それに、口元がにやついているのを隠し切れていないよ。
「はぁ。だから、何度も申し上げていますように、身に覚えがありません。
もう一度ちゃんと調べ直して下さい。
証拠もないのに、このような大勢の前で人を犯人扱いするなんて、馬鹿ですの?
付き合い切れませんわ。隼人行きましょう。」
私は一応あっち側にいた、弟を呼ぶ。
「はい、はぁい。
待ってよ、百合姉。」
あの子が言うには、ゲームの中では弟の隼人は私を憎んでいたらしい。
「けっこー、見てる分には面白かったよ。
あいつらがあんな馬鹿な奴らとは思わなかったけど。
やっぱさぁ、とっとと他の学校に編入するべきだったよねぇ。追放だぁとか、あいつらは言ってたけどさぁ。レベル低すぎ。」
現実は、別に仲は悪くない。むしろ、良い?
「そればかりは、私の一存では決められませんもの。お父様の母校だから、ということで入学致しましたし。
でもまぁ、今回の件はさすがにお父様に報告しませんとねぇ。一人の生徒に振り回されているような生徒会では。。」
仲が良い?少々甘やかし過ぎただろうか?
だって甘えてくる姿が可愛いかったのだ。教えることもどんどん覚えて優秀だし。自慢の弟なのだ。
才能に嫉妬?嫉妬するだけバカバカしい。
これもあの子が言うには、私は弟の才能に嫉妬して、虐めまくり仲が悪く、それで弟の性格が歪みまくったらしい。
「でもこれ、尚紀さんにばれたらやばそう。。。」
「………そうですわね。。」
尚紀さんとは、私の婚約者だ。
これも、あの子が言うには原作と違うらしい。
原作では、生徒会長が私の婚約者で尚紀さんは、隠れキャラ?らしい。
尚紀さんと、婚約したのは小学校へ上がる時なので結構前だ。尚紀さんの方から、私と婚約したいと申し出があった。尚紀さんと私は、13歳違う。
私が今17歳なので、尚紀さんは30歳だ。
尚紀さんの家柄は、トップクラスで尚紀さんはそこの跡取り。幼い頃からとても、おもてになったらしいのだが、何故私などと婚約したのかは、よく分からない。しかも、その時打診のあった他の良家との婚約をけってまで。
尚紀さんは、実はあの時私が歌を歌った相手でもある。これは、後で知ったこと。
あの時、尚紀さんに歌のお礼にと貰ったものが、いつもポケットに忍ばせているペンダントだ。
尚紀さんには前々から、家庭教師を付けるから学校なんかには行かなくていいと言われていた。
流石にそれは……と私のワガママで学校へ来ているのだ。このままでは、卒業までの残りの授業は席だけ学校において家庭教師なんてこともあり得るかもしれない。
その事についてもお父様に相談しなくては、そう考えてため息が出た。
それから、家の迎えを呼び隼人と一緒に家へ帰る。家に帰ると、見慣れた車。
家の中へ入り、報告の為にお父様の仕事部屋へ向かう。扉を開けるとやはり、尚紀さんがお父様と話しをしていた。
「お帰り。百合。」
尚紀さんは、にこやかな笑顔で私を迎えてくれた。
「今日は、大変だったね。
あんな所へはもう行かなくていいよ。
百合の為に家庭教師を手配したから、明日から私の家で勉強すればいい。
その話しを今、千隼さんとしていたんだよ。」
私に近づき、頬を撫でながら尚紀さんが言う。
遅かった。私の情報は、一体どこから尚紀さんに伝わっているのか。。
「百合?」
家庭教師まで手配済みな上、 お父様の許可まで出てるとなればもう、拒否は出来ないだろう。
尚紀さんは、私の我が侭で尚紀さんの譲歩出来る限りでほとんど許してくれる。
婚約の件もそう。本当は、尚紀さんは私が16歳になったら籍を入れたいと言っていた。でも、高校を卒業するまでは、と待ってもらったのだ。
「分かりました。お父様の許可が出ているのでしたら。」
「あぁそれと、馬鹿な奴等にはちゃんと、百合を傷つけてくれた報復をしないとね。」
尚紀さんの中で、報復もすでに決定事項らしい。
尚紀さんは明日学校へ私と一緒に行き、そこで関係者に話しをすると言った。
「今日は、ひとまず帰るよ。百合に会えて嬉しかった。
また、明日朝迎えにくるね。」
尚紀さんはもう一度私の頬をなで、お父様に一礼して帰って行った。
「お父様。。」
「はぁ。尚紀君は、耳が早いねぇ。
今回は、あきらめなさい。
明日からは、勉学と花嫁修業の名目で尚紀君の所で暮らすことになる。
私も、娘をこんな早く家から送り出すことになるとは思わなかったよ。」
「……はい。」
尚紀さんは、翌朝私を迎えに来た。
その為だけに、仕事はお休みをとったらしい。
「こういう時、自由がきくから今の仕事をしてるんだよ。」
なんて、笑って言っていた。
「学校に言って話をするからね。
百合、ちょっと我慢してね。」
学校に、到着した後向かった先は理事長室だった。
そこに入ると、
理事長、校長、そして隼人を除く生徒役員、そして結香さんがいた。
「君たちには、それなりの制裁をさせて頂いたから。
君たちの家との取引をやめる、と言ったらすぐに分かって頂けたよ。
家からは、勘当だそうだ。あと学校ももちろん退学。」
尚紀さんは、私の腰を抱きながら私にはけして見せない冷たい目で言う。
「まぁ、百合を傷つけたから当然だよね。
じゃ、百合帰ろうか。」
私にとろけるような笑顔を見せて、腰を抱きながら歩きだそうとしたその時、
「尚紀様!
やっとお会いすることができて嬉しいです。」
突然目の前に出てきたヒロインこと結香さん。尚紀さんは目に入っていないようだった。
「私、尚紀様のことがずっと好きでした!
学生の時に、最愛のお母様を亡くされたんですよね?愛に飢えた尚紀様。
私なら、あなたにそれ以上の愛をあげられます。」
こうして見ると、凄くお似合いに思えてくる。まぁ、もともと結香さんはヒロインだし。似合っていて当然か。
本当は、私の方が邪魔者。。。私さえいなければ……。
そんなことを思いながら私は、その様子を眺めていた。
結香さんが、尚紀さんの腕に触れた。
私は、自分が邪魔者だと分かっているのにその瞬間、尚紀さんをとらないで!って思っていた。
「触るなっ!!穢らわしい!
愛だと?笑わせるな。お前ごときの愛など私は必要としていない!」
尚紀さんは、私の心配もよそに結香さんの手を振り払い、先ほど以上の怒りを表していた。
「百合っ、一刻も早く帰ろう。
ここにいたら、百合が穢れてしまう!」
尚紀さんは、その後軽々と私を抱え上げて早足で歩き出した。
「百合が、俺の百合が穢れてしまう。
ここは、危険だ。早く、早く帰らなくては。
早く、早く。百合、百合。」
呟く尚紀さんの手に力が入る。
帰りの車に乗り込んだ後もそれは続き、
「百合、百合。」
と言いながら私を抱きしめて離さなかった。
尚紀さんの屋敷に着き、尚紀さんの部屋へと連れて行かれた。その間、何も話さない私を尚紀さんはおかしいと思ったらしい。
「百合?なぜ、何も言わない。
何を考えている?」
尚紀さんは、うつむいている私の顔をのぞき込む。その顔は、私にはあまり見せない不機嫌そうな顔をしていた。
「………。
尚紀さんも、私がいなければ、結香さんを好きになっていたのかと、思って。。。
隣に並んだ時、すごくお似合いでした。
私なんかより、、ずっと…。」
言ってしまった。。。
なんか、言っていてどんどん悲しくなってきた。
泣きたい。。
本当は、あの子がヒロインで私は悪役令嬢。
尚紀さんと、結ばれるのはあの子のはず。
「本気で、言っているのか?それとも、今さら私を捨てる気か?
百合は私の全てなんだよ。
あの時から、百合がいないと食事も喉を通らないし、睡眠も取れない。
私は、百合がいないと生きて行けないんだよ。
だから、、、俺を捨てるな。
百合と別れるくらいなら、お前を殺してでも手元におく。他の奴になんて絶対渡さない!
もう、お前は俺から逃げられないんだよ。」
そう言った私の愛しい人は、悪役も真っ青な悪役の顔をして微笑みを浮かべた。
あの子の言っていた、声が聞こえる。。。
「設定の尚紀様はね、格好良くて、セレブで、頭もよくて、優しくて完璧な人なんだよ。
でも、それは表向きの顔。
本当は、結構腹黒で、好きな人以外には酷い事も普通にできちゃう人なんだよ。それを悪いとも思ってないから恐いよね。
で、ヤンデレもちょっとはいってるから別れようとすると監禁エンドなんだよ。
他の人はねぇー、ーーー」
ヒーローsideを書きたいような、書きたくないようなー。