邂逅
―――ねえ、本当に?
私は気付けば、彼の瞳をじっと覗きこんでいた。夕焼けの所為か、ひどく輝いてみえる。
さっき聞いた話のせいだろう、彼は今にも折れて壊れてしまいそうな氷柱のようだった。すこし痛みを帯びたそれは、いとも簡単に割れてしまう。
―――本当だよ。僕は、
そう言って彼の顔は少し翳る。言葉が紡がれない。溢れてきたものか、溜まっていたものか。どちらかは分からないのだけれど今の彼からは何かが込み上げているようだった。
それと同時に私も自分自身から何かが溢れそうなのがよく分かった。今の私は彼と同じ気持ちだ。
真逆で、同じことを、経験してきたのだ。
―――…僕は?
彼の続きを促す。意地の悪い行為だとは分かっていた。こんなにも脆い今の彼にこれ以上話させてはいけないと分かっていた。でも、駄目なんだ。今じゃないと駄目なんだ。
今でなければ―この心の繋がった今でなければ―彼のこの言葉を聞いてはいけないんだ。
カタン、と彼は座っていた椅子から立ち上がる。顔はうつむいたままだった。そして彼の長い指が彼の薄っぺらい胸に触れる。彼はまるで胸が傷ついて、痛んでいるかのように優しく触れた。
静かな空間のなかで、私は彼見つめた。彼は顔を上げて私を見てから、本当に小さい声で私にそっと囁いた。今にも泣きそうな、見ている人すら泣かせそうな顔をして。
―――なくした。僕を救ってくれた人を、なくしたんだ。
彼の瞳からすうっ、と一筋の涙が零れた。透明な雫が落ちる、落ちる。
彼はそれを意に介さず、私に問いかけた。
―――君も、同じなの?
プロローグのようなものです。
次話からちゃんとした話が始まります。




