書籍発売記念SS 『幸せな家族』
「わはー!」
私の旦那様となったメル様が、私たちの娘であるエリュシアを抱き上げます。
「ほうら、高い高い!」
「わはー!」
高く持ち上げられるとキャッキャと嬉しそうにはしゃぐエリュシア。
「ふふっ」
そんな二人の姿を見て、思わず幸福感を覚えてしまいます。
メルウィック様……メル様はとても素敵な旦那様になってくださいました。
そうして生まれてきた、私たちの娘は、とてもとても可愛らしいんです。
ひとしきりメル様と遊んだあとは絵本を読んであげる時間です。
私はエリュシアを膝の上に乗せて、一緒になって絵本を開きました。
「昔、昔、あるところに幸せな王子様がいました……」
絵本を読み聞かせている私の隣に、メル様が静かに座ります。
貴族の子ですから、子育てをしてくれる乳母も雇っています。
でも、私たちはこうして時間を見つけては娘のところへ集まって、そうして幸せな時間を過ごすんです。
「そうしてツバメは飛び立つのです」
メル様は、絵本を読む私の言葉を引き継ぎ、ついでにニュッと手を目の前に差し出します。
すると、彼の手の平の上には一匹の魔法のツバメが現れました。
『キュイキュイ、キュー』
囀る魔法のツバメがクリッとした目で娘を見つめます。
「わはー!」
その姿を見て、はしゃいでくれる娘。
むむ、私だって負けていられませんよ。
「そうして、黄金の王子様は囁きます」
私はメル様に負けじと【黄金魔法】で小さな王子様像を作り上げました。
モデルはもちろん、メル様です。
私にとっての〝王子様〟はメル様ですからね!
「わは! パパだぁ!」
黄金のメル様像にエリュシアは、きゃっきゃと喜んでくれます。
「すると、ツバメは虹の上を飛び回り……」
メル様が絵本の上に浮かぶ小さな魔法の虹を作って。
「黄金の王子様はツバメと一緒に走り出します!」
黄金のメル様像が駆ける仕草をします。
「わはー!」
「王子様が走り出しちゃった」
「ふふっ、こっちの方が楽しいでしょう?」
私とメル様の魔法で紡ぎ出す物語。
娘であるエリュシアはずっと楽しそうにその物語に魅入ってくれます。
やがてスペクタクルな物語は幕を閉じ、ハッピーエンドを迎えました。
その頃には、はしゃいで疲れてしまったのか、エリュシアは眠ってしまっていました。
「ふふ、可愛い寝顔ね」
「ああ、レティにそっくりだ」
「メル様にも似ていますよ」
「二人に似ているんだね」
私たちは愛しい我が子の寝顔を見て、そのまま互いに微笑み合います。
そうして、お互いに求め合うように口付けを交わしました。
「メル様ったら」
「レティ、愛しているよ」
「……はい。私も愛しています」
私は今の幸せを噛みしめながら、こうして家族の時間を過ごすのでした。
働き詰め令嬢、目覚めたら人生が一変していたようです
~最強魔術師にブラックな王宮から連れ出されたら、極楽生活が待っていました~
(旧題:黄金のレティシア)
書籍発売記念SSです! 書籍版にも加筆あり!




