マモ村、マモ教。誕生。
「キュイーーーーー!?」
「すごいですね!賢者様!空を飛んでますよ!」
「あわわわ!!」
それどころじゃねー!
今、俺達は空中散歩中だ。
ドラゴン夫婦によって馬車は足で掴まれ、空を飛んでいる。
つまり命綱なしのフライトだ。
「キュキュキュキューーーーーーー!!」
「楽しいですね?」
だから叫んでいるのであって楽しくない!!
命がけのフライトからしばらくして村に着く。
い、生きてる。
生きてるって素晴らしい!
俺は膝をつき神に感謝する。
まあ、ただの四足歩行なのだが。
「し、死ぬかと思った……」
ライラも四つん這いになっていた。かなり怯えていたからな。
俺はそっと近づき肩に手を置く。
「キュイ……」
ドンマイ。
「け、賢者殿!!」
思いっきり抱きつかれる。
く、苦しい。
「キュキュイ…」
「す、すまん!」
俺の表情に気付いてやっと放してくれた。
ま、まあ。それほど怖かったのだろう。
「ほう、ここがお主の村か。普通じゃの?」
それはそうだろ。
普通の村だからな。
「いえ、ここから賢者様のお力で大改造されるのです!」
また勝手なこと言ってるなこの子は。
「キュイキュイ」
俺は手を振り拒否する。
そんなのは無理だ。
「うん?無理なのか?」
「キュイ」
当たり前だろ?
俺は建築士ではない。
違法建築は嫌だ。
「賢者様……」
リリーの目が少し潤む。
またこの目か……
まあ、やるだけやるか。
恩もあるしな。
俺は何となく適当な巨大な岩に近づき手を当てる。
このくらいの岩なら小さな家が出来そうだな。
なんて考えていた。
「その岩がどうか……」
うん?ライラの目が大きく開いて固まっていた。
ドラゴン夫婦も大きく口を開け固まっていた。
「キュイ?」
視線は岩に行っていた。
俺は嫌な予感がしてそっと後ろを見る。
「キュ、キュ、キューーーーーーー!?」
そこには想像していたとおりの小さな家があった。
違法建築じゃん!
ドーピングだよ!こんなの!
身に覚えない力に恐怖する。
「さすが賢者様!!」
い、いや、身に覚えなすぎて怖い。
何でそれで家が出来るの!?
俺は一人キュイキュイ慌てていた。
「おそらく、賢者様の魔力が岩に触れたことで流れて、無意識に家を作ってしまったのかと」
はい!?
触れるだけで建築とか、レンチンじゃないんだよ!?
「おお、これならわしの家もできそうじゃな!」
「ええ、そうね」
二人ほどでかい岩があるかな?
二人にキュイキュイと説明する。
「ああ、それなら」
そういって二人はみるみる小さくなり奥さんはリリーによく似た年上のお姉さんになり、旦那は頑固おやじのようになった。
「これならいいですか?」
「キュ、キュイ?」
「ああ、これは人化の術ですよ」
へー、そんな便利なものがあるのか……!?
まてよ、俺もできるのでは!?
「キュイキュイ!」
「すみません。これはドラゴンだけの秘術でして」
「キュイ……」
夢の人間生活ライフは一瞬で崩れた。
俺は四つん這い。いな、四足歩行で肩を落とす。
「賢者様はそのままでかわいいのでいいのです」
まあ、いいか。
とにかく、家を作っていこう。
そうして村人全員に家を作っていった。
「賢者様万歳!!」
「賢者様最高!!」
そしたらこの結果である。
お祭りになってしまった。
俺は胴上げされて空中だ。
「ふむ。なかなか愉快な村ですね?」
ドラゴンの奥さんが言う。
だといいが。
とにもかくにも村は発展した。
「皆の者!」
声がして俺は地面に降ろされる。
「村長!」
そこには長いひげを生やした老人がいた。
確かこの村の村長のフォンさんだ。
「この村はもはや村ではない!」
いきなり何を言っているんだ?
「賢者様の住まう場所であり、賢者様を信仰する村じゃ!」
ただのマーモットですが?
なぜそんな宗教染みたことを?
「なので、今日からこの村は生まれ変わる!一層、賢者様を敬い信仰するのじゃ!ーーーー」
「「おお!!」」
熱はヒートアップして声が響く。
まるでそこだけが熱帯のように熱い。
いや、ドン引きなんですけど。
俺はやめさせようと必死に鳴く。
「キュイ!キュキュキュイ!」
もうやめろ。
俺はただのマーモットだぞ!
「おお!賢者様よりありがたい言葉をいただいた!」
うん?伝わったか?
「この村の名前はマモ村!宗教の名前はマモ教じゃ!」
「「おお!!」」
全然、違うんですけど。
なんか悪化した。
……なんか、もういいや。
俺は知らないふりをしてニンジンを食べていた。
「お主も大変じゃな……」
こうして、俺の村、俺の宗教が出来た瞬間だった。
これがまさか、世界を揺るがす宗教の誕生だとは思いもしませんでした。
拝啓、母さん、父さん。
俺、宗教のボスになりました。
え、なに言ってるんだって?
俺にも分からない。
なってた。それが現実でした。
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