俺、拾われ現在。新たな問題。
俺の悲痛な叫びが森に強く響き反響する。
なんなんだよ!?
夢か?夢なのか!?
短い手で思いっきり顔をつねる。
痛い……痛い!
どうも夢ではない様だ。
いや、落ち着け。
俺はマーモットになった。
だが、と言う事は会社にもう行かないくていいじゃないか!
「キュイーーーーー!!」
歓喜の鳴きであった。
そうして謎のポジティブによって落ち着くことに成功。
しかし、ここはどこだ?
日本の森にしてはなかなか広大そうだが。
鳥の声やなにか分からないものの鳴き声がする。
もしかしてとんでもなくド田舎では?
いや、そもそもマーモットは日本出身ではないから、ここは日本ではないのかも。
うむ。
まあ、とにかく水を飲もう。
喉が余計に乾いた。
短い手で川の水をすくい飲む。
ごくごく。
うまうま。
うん。水は人間でもマーモットでも変わらずおいしいな。
がさ。
後ろから物音が聞こえる。
俺は急いで少し距離を取る。
も、もしかして、く、熊か!?
このぷにぷにの魅惑のボディでは食われてしまう。
俺の第二の人生がすぐゲームオーバーは嫌だ!
「キキ?」
出てきたのは額に角の生えたウサギだった。
う、ウサギなのか?
でも、なんか額に角があるぞ?
ウサギはこちらを見て様子をうかがっている。
これなら同じ動物同士コミュニケーションが取れるのでは?
「キュキュイ!」
俺は一生懸命挨拶をしてみるが……
「キ、キキキーーーー!!」
怯えたようにウサギは逃げていった。
そ、そんな……
俺は四つん這いにになり落ち込む。
しかし、四つん這いではなく四足歩行になっただけだが。
ま、考えても仕方ない。
やはり、畜生では俺とはコミュニケーションが取れない。
なら人間を探そう。
そうして、歩き1時間。
俺は森を彷徨っていた。
「キュ、キュイー……」
もう意識が飛ぶほど腹ペコである。
この体燃費悪すぎだろ。
「キュ、キュー……」
俺はそこで意識が飛んでいた。
また死ぬのだろうと覚悟しながら。
ぱちぱち。
うん?何か燃える音がする。
ゆっくり瞼を開ける。
すると見慣れぬ天井だった。
や、やはり夢だったんだ。
俺は少しがっかりして、起き上がる。
うん。やっぱり現実だわ。手足が短い。
「あ、おきましたか?」
声の方向を向くとそこには若い娘がいた。
君が助けてくれたのか?
「キュイ?」
俺は声を出すがやはり可愛い鳴き声だけだった。
「はい、私が森を散策していると倒れていたのでここまで運びました」
おお、コミュニケーションが出来ている!!
ぐう。
俺のお腹が鳴る。それを聞いて娘は焼いたきのこを渡してくれる。
「はい、これしかありませんが」
「キュイ!?」
いいのか!?
「ふふ、食べていいですよ」
なんていい人だ。
俺は一心不乱に短い手を使って握りキノコを食べる
あまりのおいしさと久しぶりの食で嬉しくて少し泣く。
「ふふ」
少女は笑う。
まるで太陽の香りがするような笑みだ。
ここが天国ですか?
「おい大変だ!魔物がこの村に向かっているってよ!」
「そ、そんな、逃げる準備をしなくちゃ!」
「そんな暇はない!逃げるぞ!」
外が慌ただしい。食事中だぞ?
うん?と言うか魔物って言わなかった?
ここって……
まさか、異世界?
………
やばい!!やばい!!
こんなプリティーボディでは敵いっこないじゃん!?
俺は手足をじたばたさせる。
娘はそんな俺を抱きしめ外に連れ出す。
「大丈夫です。ここには賢者様がいます!」
「け、賢者様?ほ、本当かリリー?」
「はい。ほら、ここに」
そう告げ俺を掲げる。
「そ、それは!?」
村人たちが騒がしい。
人の声が重なり重く響く。
「賢者様どうぞ私たちの村をお救いください」
そうして俺は魔物たちの向かってきている方向に置かれる。
向こう側には俺達を食べようとこちらに向かってきている見たことがない生物がいた。
どないしろと言うねん。
わて、ただのマーモットですさかい。
後ろを振り返ると目をキラキラさせた少女が俺を見ていた。
ええい!ままよ!
と言うのがここまでの流れなわけだ。
回想終了。
で、今なんだが、さっきから俺の書いた文字を村娘、リリーは唸りながら何回も見てる。
やはりショックな出来事だったか。
この子からしたら俺は賢者様だって思っていたわけだしな。
うん。うん。小さく頭を振る。
「あのー賢者様」
「キュイ?」
「これは文字ですか?」
「キュイ………キュキュキュイ!?」
え、読めないの!?
ご、誤算だった…
まあ、バリバリ日本語だしな……
でも、俺イングリッシュできないし……
しかし、聞いている感じ日本語にしか聞こえないのだが。
なぜ、日本語が通じない?
まあ、通じないなら仕方ない。
「キュキュイ!」
「え、気にしなくていいですか?」
うん。これは伝わるのね。
むしろ日本語よりマモ語の方がいい気すらするな。
まあ、とにかく、食事だな。
あの美味しいニンジンをいただこう。
「キュイ!キュキュイ!」
「はい、ニンジンですね?」
俺を抱っこする。
なんかこの子、俺の言葉どんどん理解してね?
今なら伝わるのでは?
「キュキュキュイ、キュイキュイ!」
必死に俺はこの世界の住人ではないと伝える。
「はい!分かりました!」
おお!伝わったか!
「大盛ですね!」
ちっがーーーう!
そっちじゃねーー!
「賢者様、暴れると危ないですよ?」
手足が抑えられ、完全におくるみ状態だ。
ああ、なんか安心する。
そうして、俺はリリーに連れられ村に戻る。
村は少し慌ただしかった。
村の男性が俺に気付き近づいてくる。
「賢者様助けてください!」
「キュイ?」
また魔物か?
「や、野菜が動物にくわれて全滅なのです!」
「キュキュイ…」
だから、どないしろ言うねん!
俺、ただのマーモットですがな!
拝啓、父さん、母さん。
空は青く、雲はたなびき、進む。
そして俺は異世界でマーモットです。
そんな毎日です。




