俺がマーモットになった理由。
「お疲れ様です」
「ああ、お疲れ」
俺の目にはささっと退勤する後輩が映る。
その姿は遠い景色のようだ。
「おい、田中まだ終わんねえのか?」
「は、はい。すんません」
「ふん、ちんたらやってねえで、さっさと終わらせろよ」
この怒っている豚こと課長はおおれの直属の上司に当たるのだが……
見事に上司ガチャ爆散品だった。
仕事は俺に押し付け、自分は社内でセクハラまがいの発言や言動ばっかりの豚だ。
給料は安い。
クレームだらけの営業。
どう考えてもブラック企業だ
どれをとっても最低だ。
だが、俺にはこれが生活の線だ。
致し方ない。
そう思い今日も田中は行く。
その日は珍しく残業が早く終わりいい時間で帰れた。
それを活かして俺は前々から行ってみたかったお店に行ってみることにした。
「いらっしゃいませー」
そう、ここマーモットカフェである。
中からは素敵な獣臭がする。
ここがオアシスか…
「奥の席へどうぞー」
俺は店員さんに案内されて注意事項などを説明される。
そうしてやっと餌をあげられることになった。
「キュイ!キュイ!」
「おー可愛いな。ほら。どうぞ」
トングで餌をあげる。
それをマーモットは短い手で可愛くもしゃもしゃしていた。
これがマーモット。
癒しの存在。
俺はマーモットたちを見ながら飲物を飲んで安らいでいた。
すると安心したのか俺は目が落ちて眠っていた。
そこで意識は途切れていた。
草木の香りがする。
最近は、嗅いでいなかった匂いだ。
それに鳥の鳴き声もする。
最後に自然に触れたのはいつだろう?
そんなことを思いながら俺はゆっくり目を開ける。
うん?ここは?
目線の先には空に溶けるように木々があった。
寝転んでいるようだ。
しまった!?
店の中で寝た!
俺は体に違和感を感じながら飛び起きる。
店?
うん?ここは店なのか?
木々なんて置いてあったか?
そんな装飾なかったぞ?
周りを見渡すとそこは森の中のようだった。
どういうことだ?
少し左から、水が流れる音がする。
俺は音に誘われてそちらに歩いていく。
うん?なんか視線低くね?
てか歩幅小さくね?
なんか歩きづらいし。
違和感に必死に耐えて音の正体にたどり着く。
川だ。
そこには純度が高そうな綺麗な川があった。
透明で底の石が見え、光が反射してパズルのようになっている。
こんな綺麗な川、日本ではなかなか見れないぞ。
田舎住みの俺でもこんな綺麗な川は見ない。
これは飲めるかもしれないな。
ちょうど喉が渇いていたのだ。
そうして、手を前に差し出す。
そこには茶色い毛むくじゃらの手があった。
え?
なんだこれ?
短いし、毛むくじゃらだし、まるでマーモットみたいな……
は!?
俺は慌てて水面を見る。
「キュイ!」
そこには見事なマーモットがいた。
まさに理想のマーモットだった。
だが!
「キュイ!キュキュイ」
(俺がなりたいわけじゃねーーー!!)
俺の悲痛の叫びは虚しく森に響いていた。
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