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大聖女と休息

会議が終わった直後の廊下は、冬の空気のように冷たく張りつめていた。

内務卿パパラエは難しい顔で書簡を抱え、軍務卿グラディウスは肩を怒らせて去っていく。


財務卿ベリオスはいやしい笑みを浮かべ、信仰卿サリエラは静かに祈りの言葉を口にしていた。 


そして外務卿イリーナは――振り返りもせず、ただ小さな含み笑いを残して闇の廊下に消えた。


「……疲れたぁ……」


大聖女レシュリ・パルミアは会議室の扉が閉まった瞬間、糸が切れたように肩を落とした。

「パルミア様...!姿勢をお崩しになっては……」

きっちりと背筋を伸ばしたカリラ・タナハがパルミアの行動に慌てて、背筋が崩れる。


「いいじゃない、タナハ。あんな重い空気の中でずっと笑顔を保っていたのよ?顔が固まっちゃいそう……」


「では今すぐお茶を淹れましょう」


朗らかに口を挟むのはエラ・ユリシェ。


「たしか、先日届いた新しい茶葉がありましたよね。お菓子も一緒に……」


「やった! やっぱりユリシェはわかってる!」


「甘やかしすぎです!」


カリラの小言も、パルミアの心には届かない。

私室へ戻った三人は、湯気の立ちのぼる茶を囲んだ。

窓の外では、街の子どもたちがで笑顔で花を片手に持ち走り回っている。

すると、シスターの一人が、抱えきれないほどの花籠を持ってきて、こう言った。

「大聖女さま、子どもたちからの贈り物だそうです。」


パルミアは少し照れながら受け取る。


「……私は、何もしてないのにね」


「何もしていないことはありません。あなたがいるから、人々は安心できるのです」


エラの柔らかな言葉に、パルミアは視線を伏せて微笑んだ。

夜。

広い聖堂の中、蝋燭の灯りに照らされてパルミアはひとり立ち尽くしていた。


「……私は本当に、この国を守れているのだろうか」


ぽつりと呟いたその声は、石造りの壁に吸い込まれて消えていく。

会議で見せた威厳も、民の前で浮かべる笑顔も、ここにはなかった。

あるのはただ、一人の女性の揺らぎ。

――その時。


「報告です!」


走り込んできた神官が、床に膝をついて声を上げた。


「国境に、隣国の使者が姿を現しました!」


パルミアの胸に、冷たいものが走る。

平穏な日常に、再び波紋が広がろうとしてい

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