12話目 やっぱり3人がいい
死ぬほど本気で課題を解いていた白霧はいつの間にかあと一教科で夏休みの課題が終わろうとしていた。
時刻は七時を回っていたので晩御飯を食べることにした。
白霧「適当にご飯済ませるか、、一人だし。」
キッチンの棚を探ったら出てきた袋麺を作って食べた。「静かすぎる」親がいなくなってからは一人で送るべきだった生活なのにこの感情は贅沢なのだろうか。嫌に聞こえてくる時計の秒針の音。自分の中で響く咀嚼音。「うるさい」一人の静かな室内で食べる袋麺はうるさくていつもより不味かった。
洸希「桐葉さん今日はありがとう」
桐葉「うぬ!楽しかったぞ!」
洸希「ねぇ、桐葉さん」
桐葉「ぬ?なんじゃ?」
洸希「しばらく前に一緒に帰ったことあったよね?」
桐葉「た、確かにあったのぉ」(苦笑い)
洸希「桐葉さんのことを一目見てから頭から離れないんだ、、一回諦めようとしたけど、、無理だった、桐葉さん、、僕とあの天瀬くんより長い時間一緒にいて欲しい、付き合ってください。」
洸希の顔は赤かった。その真っ直ぐな告白に不覚ながら桐葉の心臓はドクンと大きく脈打った。洸希の手はふるふると震えていた。(相当勇気を振り絞ってくれたのじゃな…)
桐葉「洸希殿顔を上げてくれ。」
洸希「……」
桐葉「確かにうぬとの時間はたしかに楽しかった。」
洸希「なら…!」
桐葉「じゃがな、考えてしまうのじゃ、「これがいつもの二人とだったらこうだったじゃろうな」、と」
桐葉「浮かぶのじゃ、白霧と烏來の笑顔が」
洸希「…」
桐葉「白霧と同じ学校に通って早三ヶ月目に入ったのじゃが、わしをこうも思ってくれるやつがおるとはのぉ、、じゃがわしにはこの楽しい時間より、守りたい、一緒に送りたい奴らがおるのじゃ。たった二人じゃが、、な」
洸希「そっか、、」
桐葉「じゃあの、洸希殿、、恐らくじゃが、、気持ちが揺れることは無かろうて。」
桐葉は洸希に背を向けて歩き出す。洸希からしたら小さい背中だが、どう頑張っても掴めない気がした。
桐葉「じゃが……」
洸希「?」
桐葉が洸希の方に振り返り可愛らしい笑顔で言う。
桐葉「お主との時間が楽しかったのは嘘偽りないぞよ。」
桐葉「しかしわしは、、」
本気だった洸希の顔が濡れてしまったのは言うまでないだろう。あまりにも辛く、心地よい時間だった。
烏來たちは晩御飯を食べ終わったあと海辺のベンチに座っていた。かすかに響くさざ波の音は心地が良いものだった。
蓮也「烏來さん楽しかったね。」
烏來「はい。楽しかったです。」
蓮也「そっか、、」
蓮也「だいぶ前に烏來さんのことを教室で待ってた日のこと覚えてる?」
烏來「はい、微かながら、」
蓮也「あの日から僕は君に恋をしている。僕は君の気持ちを確かめるために君を呼んだんだ。」
烏來「私の気持ち、、、」
蓮也「そう。君は天瀬くんとずっとそばにいる。正直君を僕のものにできるとは到底思っていない。」
烏來「…」
蓮也「だけど、、もう限界なんだ。」
蓮也「烏來さん、!君の笑顔も、声も、全部——僕だけのものにしたい。」
烏來の目が潤う。感じたことの無い感情。どうにも名前がわからない。白霧といる時とは違う心の高鳴り。だが。
烏來「…私の知らない感情が私の中を掻き乱しています。」
烏來「この感情は初めてです、、」
蓮也「…付き合って、、くれるの?」
烏來「ですが!、、私は!あなたとどれだけ楽しい時間を過ごせても!この感情になっても……主と桐葉様のことが頭の中にいてしまうのです。」
烏來「確かに今日は楽しかったです。ですがなにか楽しいことがある度に。「あのお二方となら、、こうでしょうか?」と考えてしまうのです。」
蓮也「…… そっか、」
烏來はベンチから立つ。水平線に太陽が沈んでいる。だが浮つくこの感情。逆に腹立たしい
烏 來「やっぱり私は、、」
午後八時、なんと奇跡的に全ての課題を終えた白霧夜の散歩をしていた。もしかしたら二人に会えるかもしれない。という淡い期待があった。まぁ、会える訳もなくとぼとぼと家に帰った。すると、、ふたりが玄関にいた。ちょうど帰ってきたのだろうか。
白霧「おーい!師匠!烏來!」
桐葉&烏來「…!」
白霧「おかえり!お土産話ある?」
桐葉「あるのじゃ!やはりお主と烏來と一緒の方がいいという話があるぞ!」
烏來「私もそれと似たような話があります。」
白霧「あれ?二人ともあの人たちと出かけたんじゃないの?」
桐葉「いやー水族館楽しかったのじゃが、、何故かお主らと一緒だったら、、と何度も考えてしまったのじゃよ、、」
桐葉「しかし、わしは白霧と烏來といる方が楽しく思えてしまう。これも嘘偽りないことじゃ。」
洸希「うん、、ありがとう」
桐葉「しかしお主はいい男じゃからのぉ?別のおなごと愛を育むのじゃな。まぁ白霧には勝てぬがな」
桐葉「じゃあの」
烏來「やっぱり私は、主と桐葉様と一緒にいる方がいいと思います。主と桐葉様は私の命を救ってくれたと別に居場所も作ってくださいました。」
蓮也「そうだったんだね。」
烏來「あなたとこれから遊ぶのも楽しいのかもしれない。ですがそれ以上に壊したくない日常が私にはありました。」
烏來「ありがとうございます。あなたはそれを私に気づかせてくれました。」
烏來「それでは。」
白霧「どうした?そんなに泣きそうな顔して。」
桐葉「いや、ただなお主と烏來といる時間がやっぱりわしは好きじゃ!これからもよろしくな!」
烏來「私もです。蓮也さんと遊ぶのは楽しかったですが、主と桐葉様じゃなければ私の精神は安定しません。」
白霧「そっか、、、なんか照れくさいな笑」
白霧「あ!そうだよ!俺もう夏休みの課題終わったぞ!二人がきゃはうふふしてる間に俺は終わらせたかなぁァァァァ!」
桐葉「なぬ!?お主、、わしのも手伝え!」
烏來「桐葉様と同意見です!私のも手伝ってください主!」
白霧「えぇ!?なんでだよ!!」
桐葉「あと今日から3人とも同じ部屋で寝るぞ!決定事項じゃ!」
白霧「はぁ!?えぇ!?なんだそれ!?」
烏來「ふむ、、これで夜間も主のそばにいれるのですね!」
白霧「ああぁもうしょうがねぇなぁ!」
あぁ、やっぱりこれだ。この三人じゃないと盛り上がれないこの感じ。たまらなく好きだ。どうかこの先もできるだけ私たちの元を離れないでいて欲しい。そう思う神社なき狐の元神と恩返しガラスとただの人であった。




