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(95)俺の真の目的

 三人が俺の前に座り、真剣な表情で聞く姿勢を整えた。月明かりが四人の顔を神秘的に照らしている。


「俺がこの学園の教師を引き受けた本当の理由」俺は月明かりの中で口を開いた。「それは、深淵魔法を司る妖精アステリアの手がかりを探すためだ」


「アステリア……」リリアが息を呑んだ。


「ロザリンダに見せてもらった古文書に、重要な記述があったんだ」俺は続けた。「アステリアと契約していた百年以上前の魔法少女が、かつて開校したばかりのこの学園の生徒だったという記録さ」


 エレノアの表情が変わった。


「つまり、あなたは……」


「リリアをもう一度魔法少女に変身させる方法を探すために、この学園に来たんだ」


 俺の告白に、リリアの瞳が輝いた。


「師匠……ボクのために……」


「深淵魔法が使えるようになれば、クラリーチェとも対等に戦える」俺は拳を握りしめた。「お前たちはもっと強くなり、両親の仇を取ることもできるかもしれない」


「でも」エレノアが眉をひそめた。「だったら、どうして最初からそう言わなかったの?」


「クラリーチェの前では言えなかった」俺は理由を説明した。「あいつは確実に俺たちを監視している。今日のアイリーンの件で確信した」


「あの魔法書の暴走……」ミュウが思い出したように言った。


「ディブロットの仕業だ。クラリーチェが裏で糸を引いている」


 俺は三人に今日の出来事の真相を説明した。深淵魔法による心の操作、そしてクラリーチェの真の目的について。


「だから、俺たちも行動を起こす必要がある」俺は書棚を見上げた。「この学園には、まだ多くの秘密が隠されているはずだ」


 リリアが立ち上がり、俺の手を握った。


「師匠、ありがとう。ボクのために……」


 彼女の瞳には感謝と希望の光が宿っていた。


「わたくしも協力するのです!」ミュウが猫耳を立てて宣言した。「リリア様とエレノア様のために、何でもするのです!」


 エレノアは少し複雑な表情を浮かべていた。


「武流……私、あなたのことを疑っていたのね」


 彼女の声には申し訳なさそうな響きがあった。


「女子生徒たちに囲まれてチヤホヤされたいのかと思っていた……。でも、これでやっと理解できたわ。あなたがなぜクラリーチェの申し出を受けたのか」


「気にするな」俺は微笑んだ。「疑うのも当然だ。俺だって、お前の立場なら同じように考えただろう」


「ならば急ぎましょう」エレノアが立ち上がった。「時間がないわ。クラリーチェがいつ気づくかわからない」


 四人で書棚を漁り始めた。緊張感が室内を支配している。一刻の猶予もない。


 俺たちは手分けして書棚を調べた。古い記録、卒業生名簿、特別な事件の報告書……様々な資料を慎重に、しかし迅速に確認していく。


 時間は容赦なく過ぎていく。窓の外を見ると、夜空の東端が微かに白み始めている兆候が見えた。


「急がないと……」俺は焦りを感じながら、さらに古い資料に手を伸ばした。


 リリアとミュウも必死に書物を調べている。エレノアは特に古い個人記録に集中していた。


 そして、空が白み始めた頃――


「これよ……」エレノアが震える手で一冊の古い書物を取り出した。


 その本には、百年以上前の記録として、一人の魔法少女の詳細な記録が残されていた。


 名前は「アリエル・フロストヘイヴン」。


 そして、その肖像画を見た瞬間、エレノアとリリアは言葉を失った。


「これって……」リリアが呟いた。


「お母様に……そっくり……」エレノアも息を呑んでいる。


 肖像画に描かれた女性は、銀髪で気品ある顔立ちをしている。そして、氷の魔力を思わせる冷静な瞳。


「王族の血筋を引く魔法姫……つまり、エレノアとリリアの祖先に当たる女性だな」俺が記録を読み上げた。「この学園在学中に、ただ一人、深淵魔法を司る妖精アステリアとの契約に成功……」


 しかし、記録はそこで暗い展開を見せる。


「その強大な力ゆえに、王室からも学園からも危険視され……最終的に追放された」


「追放……」エレノアが唇を噛んだ。理由は異なるが、王宮を追放された自らの過去を思い出したのだろう。「追放されたから、王室の歴史にも残っていないのね。私、初めて知ったわ」


「ボクも……」とリリア。


「でも、アステリアとの契約に成功したのは事実」俺は希望を込めて言った。「つまり、その方法が存在するということだ」


 記録には、アリエルがどのようにしてアステリアと出会い、契約を結んだのかについては詳しく書かれていない。しかし、重要な手がかりが一つ記されていた。


「地下の『星見の間』にて契約儀式を行った……。そう書かれている」


「星見の間?」ミュウが首を傾げた。


「聞いたことのない場所ね」エレノアも困惑している。「この学園の案内図には、そんな部屋は載っていなかった」


「恐らく秘密の部屋だろう」俺は推測した。「この学園の構造を見る限り、表向きには存在しない隠された空間なんだろう」


 俺たちは他の資料も調べたが、星見の間についての詳細な情報は見つからなかった。まるで意図的に隠されているかのように、その謎の間に関する記録は徹底的に抹消されている。


 しかし、確実に言えることが一つあった。


 この学園には、リリアを救う手がかりが眠っている。


「今夜はここまでにしよう。もうすぐ夜明けだ」


 四人で書物を元の位置に戻し、理事長室を後にした。ドアを施錠して、監視の魔法陣や圧力センサーの仕掛けを元通りすることも忘れない。廊下を歩きながら、俺は仲間たちを見つめた。


「これから先、俺たちの戦いは本格化する」俺は真剣な口調で言った。「クラリーチェは強大な敵だ。生半可な覚悟では勝てない」


「分かってる」エレノアが決意を込めて答えた。「私たち、もう後戻りはできないもの」


「師匠と一緒なら、ボクは怖くないよ」リリアも明るく言った。


「わたくしも、みんなと一緒に戦うのです!」ミュウの猫耳が力強く立っている。


 俺たちは教師用の宿舎に戻る途中、中庭で立ち止まった。東の空が薄っすらと明るくなり始めている。


「必ず見つけ出してやる」俺は空を見上げながら誓った。「星見の間を、アステリアの手がかりを、そしてリリアを救う方法を」


「そして」エレノアが続けた。「クラリーチェを倒して、真実を明らかにする」


「ボクたちの両親の仇を取るんだ」リリアも拳を握りしめた。


 だが、俺の心の奥では、さらに大きな野望が燃え続けている。深淵魔法の秘密を解き明かし、アステリアの力を手に入れた時、彼女たちは最強になる。その先に、俺がこの世界の真の支配者となる未来がある。


 クラリーチェも、王室も、すべての権力者たちを従わせる。そのためにも、まずは仲間たちの信頼を得て、共に困難を乗り越えなければならない。


 不意にエレノアが立ち止まった。しばらく黙っていたが、やがて深く息を吸うと、俺を見つめて口を開いた。


「武流」


 彼女の声には、これまで聞いたことのない真剣さが込められていた。その青い瞳の奥には、熱い炎が燃えているのが見えた。リリアとミュウは気づかずに歩き去っていく。


「どうした、エレノア?」


 彼女は俺の前に立つと、深く息を吸った。そして、決意を込めた声で語り始めた。


「昨夜、眠れなくて考えていたの。王宮での屈辱を……クラリーチェの深淵魔法『虚空結界』のことを」


 エレノアの顔が僅かに紅潮する。恥辱の記憶を思い出しているのだろう。あの時、彼女は半透明の球体に閉じ込められ、自らの杖を操られて背後の弱点を突かれ続けた。王宮中の人々の視線に晒されながら、最終的には壁面に磔にされるという屈辱を味わったのだ。


「あの時の無力感……」彼女は拳を握りしめた。「自分の魔力すらも操られ、衆人環視の下であんな醜態を……。父上と母上の仇を前にして、何もできなかった自分が許せない」


 彼女の声が震える。それは悔しさだけでなく、強い決意に満ちた震えだった。


「でも、諦めるつもりはないわ」エレノアは顔を上げ、俺をまっすぐ見つめた。「必ずクラリーチェを越えてみせる。深淵魔法に屈しない力を手に入れて、あの憎たらしい女を完全に打ち倒す」


 彼女の瞳に宿る炎は、この一ヶ月で見せてきた高慢さとは違う、純粋な闘志だった。


「そして……」エレノアは一歩前に出て、俺に向き直った。「あなたにも勝ってみせる、武流」


「俺に?」


「そうよ」彼女の口元に、挑戦的な微笑みが浮かんだ。「クラリーチェを倒した後は、あなたが私の最後の標的。忘れたわけじゃ無いでしょう? この世界の支配者になるという野望を持つあなたを、私の足元に跪かせてみせる」


 その瞬間、俺の鼓動が一瞬止まった。エレノアの魔力が空間に満ちているのを感じ取ったからだ。


 まさか――


 思考が完結する前に、エレノアの右手が虚空を切り裂いた。彼女の指先から青白い光が迸り、瞬時に氷の槍が三本、音もなく現れる。透明度の高い氷で形成された槍は、月光を受けて鋭く輝いていた。


「フロスト・ランス!」


 エレノアの声に殺気が宿っていた。


 氷の槍は彼女の意思に従い、空中で複雑な軌道を描きながら俺に向かって襲いかかってきた。一本は正面から、一本は右斜め上から、そして最後の一本は足元を狙って低い軌道で突進してくる。三方向からの同時攻撃――これは彼女が王宮で披露した技の応用だった。


 しかし、俺は動じなかった。


 むしろ、口元に微笑みが浮かんだ。


「面白い……変身せずに攻撃してくるとはな」


 俺は右足を軸に半身をひねり、正面から来る槍を僅かに身を反らして回避した。風圧で頬を掠める氷の冷気を感じながら、同時に右手を伸ばす。


 俺の指先が氷の槍の柄を掴んだ瞬間、エレノアの表情が変わった。


「え――」


 俺は槍を握ったまま、勢いを利用して回転運動に転じた。掴んだ槍で残りの二本を薙ぎ払い、砕け散った氷の欠片が月光の下でキラキラと舞い散る。


「まだまだ甘いな、エレノア」


 俺は奪った氷の槍を逆手に持ち、一気に彼女との距離を詰めた。エレノアは慌てて後ずさりしようとしたが、俺の方が速い。


 俺は彼女の攻撃の勢いを利用し、槍を巧みに操って彼女の動きを封じにかかった。まず、槍の柄で彼女の右手首を打って魔力制御を乱す。


「きゃっ――」


 次に、槍を回転させながら彼女の左膝の裏を突いた。エレノアのバランスが崩れ、体勢が前のめりになる。


 そして俺は彼女の背後に回り込むと、槍の先端部で素早く下方へと切り払った。


 シュッという鋭い音と共に、エレノアの制服のスカートが縦に切り裂かれた。だが、それだけでは終わらない。槍の鋭利な先端は、その下に隠されていた白いレースの下着をも同様に縦に裂いてしまったのだ。


 最後に、槍の石突きで彼女の背中を軽く押し出した。


 エレノアは抵抗する間もなく、膝から地面に崩れ落ちた。月明かりの下、彼女は四つん這いの格好で俺の前に跪いている。


 裂けたスカートから覗く白い肌と、同じく縦に裂けた下着。決して人に見せてはならない最も神聖な場所が、月光の下で無防備に晒されていた。ふっくらとした丸みを帯びた双丘と、その間に走る繊細な谷筋。さらにその奥深くに隠されているべき場所まで――すべてが俺の視界に収まっている。


 エレノアは自分の状況を理解すると、顔を真っ赤に染めて震え声を上げた。


「あ、あああ……!」


「いい攻撃だったが、まだまだだな」


 俺は奪った氷の槍を地面に突き立て、跪くエレノアを見下ろした。


 彼女の顔は屈辱で真っ赤に染まっていた。プライドの高い王女が、自らが仕掛けた戦いで完膚なきまでに打ち負かされ、しかも下着の下まで見られてしまったのだ。その羞恥心は想像を絶するものだろう。


「くっ……」エレノアが震え声で呟いた。


 彼女の青い瞳には、悔しさと屈辱の涙が浮かんでいた。しかし、その奥に燃える闘志は消えていない。むしろ、この敗北によってさらに激しく燃え上がっているようだった。


「武流……」彼女は唇を噛みしめながら俺を見上げた。「覚えておくのね……今度こそ、絶対に……」


 その言葉は、ただの負け惜しみではなかった。全身から迸る魔力が、激しい感情の波に呼応して乱れ始める。


 エレノアは四つん這いの姿勢から、俺を睨みつけると、不意に右腕を素早く動かした。


 俺の視線がエレノアの右手に注がれた瞬間、彼女の掌から青い光が迸る。


 ヒュン!


 それは、先ほどの氷の槍とは違う、しなやかな鎖の形をしていた。鎖はエレノアの魔力によって、瞬時に何メートルもの長さに伸び、鞭のようにしなる。


「変身もせずに、そんなものまで……⁉︎」


 俺が驚いたように呟くと、エレノアはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。彼女はまだ戦うつもりなのだ。


「侮らないで。これであなたを縛り上げ、跪かせてあげる」


 彼女は氷の鎖を巧みに操り、鞭のように俺へと襲い掛かってくる。その動きはしなやかで、かつ鋭かった。鎖は自在に伸縮し、まるで生き物のように俺の動きを追う。


 俺は鎖をかわしながら、エレノアの技術の向上ぶりに舌を巻いた。


 次の瞬間、俺の右腕に冷たい衝撃が走る。エレノアが操る氷の鎖が、俺の腕に巻きついたのだ。鎖から伝わる凍てつくような冷たさに、俺は僅かに眉をひそめる。


「捕まえたわ、武流! これが私の本気よ!」


 エレノアは全身の魔力を鎖に込め、俺の腕を力強く引っ張った。その力は、俺の体勢を崩すには十分だった。


 俺は地面に片膝をつき、不意打ちに屈辱を味わう。エレノアが勝利への希望を見出し、口元が緩む。


「面白い……だが、まだまだ甘いな!」


 俺は巻き付いた鎖を掴み、一気にエレノアを引き寄せた。


「えっ……?」


 驚くエレノアの隙をつき、俺は鎖を奪い取ると、そのままエレノアめがけて振り回した。鎖の先端が、鞭のようにエレノアの身体に鋭い衝撃を与える。


「きゃっ!」


 一度目は彼女の腕を叩き、二度目は太ももを打った。


 そして三度目の鎖は、彼女の胸元をかすめた。


「あああああ!」


 エレノアは痛みと冷たさに悲鳴を上げ、その場にうずくまる。


「どうした、もう終わりか? お前の本気はその程度か?」


 俺は挑発するように告げると、追撃の手を緩めない。氷の鎖をエレノアの胴体にぐるぐると巻きつける。


「ちょっ……⁉︎ 何するの⁉︎」


「こうするのさ」


 俺はそのまま力強く引っ張った。


 エレノアの身体はコマのように数回転し、裂けたスカートが捲れ上がる。スカートの下に隠されていた白い半球が露わになり、そのまま地面に倒れ込んだ。


「くっ、卑怯よ!」


 地面に倒れたまま、エレノアは俺を睨みつける。その瞳には、今度こそ純粋な怒りが宿っていた。


 エレノアは転がったまま、蹴りで俺の急所を狙う。俺は再び眉をひそめた。


「卑怯なのはどっちだ?」


 俺はエレノアの蹴りをかわすと、再び氷の鎖を彼女の身体に巻きつけた。


「あっ!」


 エレノアは両腕を封じられ、身動きが取れなくなる。


 最後に、俺は氷の鎖の端をエレノアの足の付け根に通した。


「くっ、やめなさい……! そ、そこは……!」


 エレノアは悲鳴のような声を上げた。その声は、恐怖と屈辱に震えている。


 俺はエレノアの背後から、氷の鎖をグッと引っ張り上げた。鎖が食い込み、エレノアの身体が悶絶する。


「あああああ……!」


 特に、先ほどスカートと下着を切り裂いて露わになった部分、普段決して触れることのない神聖な場所に、鎖が直接食い込んでいく。


 エレノアの顔は苦痛に歪み、その瞳には涙が浮かんでいた。


「降参するか? まだ続けるか?」


 俺はエレノアに降参を迫る。だが、エレノアは歯を食いしばり、首を横に振った。


「ぜ……絶対に……しない……!」


「見上げた根性だ。さすが俺の弟子だな」


 俺はさらに力を込めて、鎖を上に引っ張る。


「あ、あ、あぁぁ……!」


 エレノアは立っていられなくなり、ガクッと膝立ちになる。その体勢で、鎖はさらに深く食い込んでいく。


 一秒、二秒、三秒……。鎖が食い込んでいる時間は、ひどく長く感じられた。


 エレノアは膝立ちのまま胸を反らした。鎖が彼女の中心部に食い込み、身体が激しく痙攣している。


 鎖がエレノアの体温で溶け始め、膝の下の地面に、ぽたぽたと雫が垂れていく。それはまるで、彼女の屈辱を象徴しているかのようだった。


 エレノアの喉からは、もはや声にならない呻き声が漏れ続けていた。


「……は、はぁん……」


 俺は背後から彼女の顔をじっと覗いて観察していた。その瞳に宿っていた炎が、薄れつつあるのを感じ取った。


 気絶寸前……。その瞬間、俺は鎖を緩めた。


「……っ」


 エレノアは氷の鎖に巻かれたまま、地面に仰向けにガクッと倒れた。


 両足はだらしなく開いたままで、全身を震わせている。鎖は白い下着もろともエレノアの足の付け根にめり込んだままで、見るも無惨な有様だった。だが、自らの武器で自らが招いた醜態である。


 エレノアの体温で溶けた氷の雫が地面をたっぷり濡らし、まるでお漏らしをした跡のように見えた。


「はぁ……はぁ……」


 エレノアはしばらくの間、動けなかった。全身を走る痛みと、全身を包む屈辱感。その両方が、彼女の身体を地面に縫い付けているようだった。


 ようやく、エレノアの身体が微かに動き始める。彼女はゆっくりと腕を動かし、身体に巻き付いた鎖を払いのけた。鎖は音もなく砕け散った。


 だが、太ももの間の鎖だけは、まだめり込んだままだ。エレノアは足の付け根にそっと指先を当て、氷の鎖を取り除く。


「ん、ん……」


 肌に食い込んだ下着はぐっしょり濡れてしまい、何の意味をなしていなかった。


「お前の負けだ」俺はそう告げた。


「くっ……」エレノアは両手で太ももの間を隠しながら、よろめくようにして立ち上がった。


 彼女の青い瞳には、悔しさと屈辱の涙が浮かんでいた。しかし、その奥に燃える闘志は消えていない。むしろ、この敗北によってさらに激しく燃え上がっているようだった。


「武流……」彼女は唇を噛みしめながら俺を見上げた。「覚えておくのね……今度こそ、絶対に……」


 彼女の声は震えていたが、そこには不屈の意志が込められていた。この屈辱を糧に、さらに強くなろうとする決意が感じられた。


 俺は思わず苦笑した。完膚なきまでに打ちのめされたというのに、この少女はまだ俺への挑戦心を失っていない。それどころか、以前にも増して燃えているようだ。


「面白いことを言うな」俺は腕を組んだ。「クラリーチェに勝てもしないくせに、俺に勝とうとするなんて」


「馬鹿にしないで」エレノアの眉が上がった。「確かに今はまだ力不足よ。でも、必ず追いつく。そして越えてみせる」


 彼女はゆっくりと俺に歩み寄り、その青い瞳で見上げた。


「あなたは私の師匠であり、目標であり……そして、いつか必ず跪かせる相手よ」


「いいだろう」俺は微笑んだ。「お前がそれだけの力を身につけることができたら、また相手になってやる」


「約束よ」エレノアは満足げに頷いた。「その時が来るまで、私は決して油断しない。クラリーチェにも、あなたにも負けない力を手に入れる」


 彼女は踵を返すと、両手で背後を必死に隠しながら、よろめくような足取りで朝の光の中を歩いていく。裂けたスカートをかき合わせようとする仕草が、かえって彼女の屈辱を際立たせていた。それでもその後ろ姿には、王女としての誇りと戦士としての決意が失われていなかった。


 俺は一人その場に残り、空を見上げた。


 エレノアの野心、リリアの純真な想い、ミュウの献身的な愛情。彼女たちそれぞれの思いを背負いながら、俺はこの世界の支配者への道を歩み続ける。


 面白くなってきた。


 朝日が昇り始め、新しい一日が始まろうとしていた。俺たちの本当の戦いは、これからが始まりだった。

お読みいただき、ありがとうございます!

以上で第3章は完結です!

第4章も引き続き、舞台は魔法学園。急展開する物語にご期待ください。

その前に、明日から3日連続で過去の番外編をお送りします!


そして、本日、短編『婚約者の前で名乗りすぎた魔法少女の末路』を投稿しました。本作のスターフェリアを舞台にした完全スピンオフ作品です。

こちらの短編、単体でもお楽しみいただけますので、宜しければ読んでみてください。


面白いと思った方、続きが気になる方は、ぜひブックマークや★★★★★評価をいただけると励みになります!

よろしくお願い致します。

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