表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】特撮ヒーローの中の人、魔法少女の師匠になる【PC推奨高画質画像1000枚以上公開】  作者: 久遠琥珀
第3章 魔法少女学園篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/348

(89)指導者の心得★

「ミュウ!」


 俺は拍手を浴びるミュウに向かって歩いていく。


「は、はい!」


 ミュウが嬉しそうに振り返る。勝利の余韻に浸り、褒められることを期待している表情だった。猫耳もピンと立ち、尻尾も嬉しそうに揺れている。


「何をやっていたんだ、お前は!」


 俺の怒声が校庭に響いた。


「え?」


 ミュウの表情が困惑に変わる。勝ったのに怒られるとは思っていなかったのだろう。猫耳がピクンと動いた。


「最初から本気でやっていれば、ステラをあんなに苦しませることはなかった!」


「で、でも......」


「お前の個人的な欲求のために、相手に失礼な戦いをするなんて、教師失格だ!」


 俺は容赦なく叱り続けた。ミュウの目がキラキラと輝き始める。


「わざと手を抜いて負けそうになり、相手を混乱させ、最後に本気を出して勝つ? そんな戦い方が許されると思っているのか!」


「申し訳ございません......」


 ミュウの目に涙が浮かんできた。しかし、その表情は苦痛ではなく、むしろ恍惚に満ちている。


「情けない! お前は先生なんだぞ! 生徒たちの模範となるべき立場だろう!」


「はい......はい......もっと叱ってください......」


 ミュウが小さく呟いた。


「最低だ! 最悪だ! こんな教師は見たことがない!」


「そ、そんなに......」


 ミュウの声が震えている。涙を流しながらも、その表情は笑みが浮かんでいた。体を小刻みに震わせて、明らかに喜んでいる。


「うわあ......」


「ミュウ先生、本当にドMなんだ......」


「勝ったのに怒られて、しかも喜んでる......」


「ドン引きです......」


 生徒たちが完全に引いている。罵倒されて喜んでいるミュウの姿に、みんな戸惑いを隠せない。アイリーンは眼鏡を外して拭いている。


「ダメな猫耳だ! 最悪の教師だ! 」


「ああ......ありがとうございます......」


 ミュウが恍惚の表情で涙を流している。


 一方、俺はステラの方に向き直った。木の枝に引っかかっていたステラは、自力で枝から地面に降りてこちらを見つめている。


挿絵(By みてみん)


「ステラ」


「は、はい......」


 ステラが不安そうに返事をする。負けたのだから、厳しく叱られると覚悟していた。背筋を伸ばして、叱責を受ける準備をしている。


「お前は素晴らしい戦いをした」


「……えっ?」


 ステラの目が丸くなった。


「スピードを活かした攻撃、的確な判断力、そして最後まで諦めない心。どれも一級品だった」


「そ、そんな......自分は負けたのに......」


「勝敗は結果の一つに過ぎない」俺は優しく言った。「お前は自分の実力を存分に発揮し、観客を魅了した。それが何より大切なことだ」


「武流先生......」


 ステラの目に涙が浮かんだ。今度は感動の涙だった。


挿絵(By みてみん)


「お前の真っ直ぐな戦い方、体育会系らしい諦めない精神、後輩たちを引っ張る姿勢。すべてが素晴らしい」


挿絵(By みてみん)


「ありがとうございます......こんなに褒めていただいて......」


 ステラが感激で涙を流している。


挿絵(By みてみん)


「えーっと......」


 観客席の生徒たちが困惑している。


「勝った方が怒られて、負けた方が褒められるって......」


 リリアが苦笑いを浮かべながら呟いた。


「しかも、怒られた方は喜んでて、褒められた方は感動してる......」


「どういう状況なのよ、これ」エレノアも頭を抱えている。「でも、不思議ね。どちらも満足そうだわ」


 確かに、ミュウもステラも、それぞれ至福の笑みを浮かべていた。


 ミュウは涙を流しながらも幸せそうで、「もっと叱ってください......」と小声で呟いている。


 ステラは褒められて心から喜び、「自分、こんなに嬉しいの初めてです!」と感激している。


「なかなか面白い指導法ね」エレノアが感心したように言った。「人それぞれに合った言葉をかけているのね。まあ、一人は完全におかしいけど」


 俺は内心で頷いた。スーツアクターとして若手を指導してきた経験が、ここで活かされている。


 どうすれば相手がやる気になるか、どうすれば伸びるか——それは人それぞれ違う。ミュウには厳しく叱ることで、ステラには認めて褒めることで、それぞれの成長を促すことができる。


 俺はミュウにもステラにも、もっと伸びてほしいという想いがある。そのための方法が違うだけなのだ。俺は朝倉明日香のことを思い出していた。彼女にも適切な指導法があったのかもしれない。それを見出していれば、セクハラとパワハラで告白されることもなかったのだろう。


「すごい......」


「武流先生って、本当にすごいんですね」


「私たちも指導してもらいたいです!」


「ぜひお願いします!」


 生徒たちが口々に言い始めた。


「武流先生の授業、もっと受けたいです!」


「私も強くなりたいです!」


「でも、ミュウ先生みたいに叱られるのは嫌です......」


 俺の指導法を見て、生徒たちの俺への信頼が一層深まったようだった。ただし、ミュウの反応には全員が引いているが。


「分かった」俺は頷いた。「これからも、お前たち一人一人に合った指導をしていこう」


「わーい!」


 生徒たちが歓声を上げた。


「それでは、今日の授業はここまでだ」


 俺が授業の終了を宣言すると、生徒たちは名残惜しそうにしながらも片付けを始めた。


「武流先生!」


 ステラが駆け寄ってきた。


「今日は素晴らしい指導をありがとうございました!」


「いや、こちらこそ良い模擬戦を見せてもらった」


「お礼に、何かさせてください!」ステラが目を輝かせた。「武流先生のお部屋の掃除でも、お食事の準備でも、なんでも!」


「そんなことしなくても......」


「いえいえ! 自分、体力だけが取り柄ですから! きっとお役に立てます!」


 ステラがハキハキと申し出る。


「武流先生の洗濯物も、アイロンがけも、お部屋の整理整頓も、全部やらせてください!」


「そこまでしなくても......」


 俺が困惑していると、少し離れた場所でアイリーンがその様子をじっと見つめていることに気づいた。


 アイリーンの表情は普段の人懐っこい笑顔ではなく、何か複雑な感情が宿っていた。


 眼鏡の奥の瞳には、明らかに嫉妬の色が浮かんでいる。


(ステラが武流先生のお気に入り生徒になった......)


 アイリーンの心の中の声が、まるで聞こえてくるようだった。


(私だって武流先生のお役に立ちたいのに......)


 周りの生徒たちは、ステラの積極的な申し出に感心したり、羨ましがったりしているが、アイリーンの嫉妬心には気づいていない。


 しかし、俺だけはその視線を感じ取っていた。


 アイリーンの複雑な感情が、俺の胸に重くのしかかってくる。


 確かに、俺はステラの実力を評価し、褒めた。それが彼女のやる気を引き出すと判断したからだ。


 しかし、そのことでアイリーンが傷ついているとすれば......

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ