(85)学食大騒動と学園ハーレム開幕
エレノアは、俺とアイリーン、ステラ、そして新入生たちの賑やかな様子を見て、明らかに不機嫌そうな表情を浮かべている。その瞳には、呆れと共に何か別の感情——嫉妬のようなものが宿っていた。
「あ、エレノア先生!」
ステラが元気よく振り返り、背筋をピンと伸ばして敬礼した。
「おはようございます! 自分、ステラ・ウィンドロアです!」
「エレノア先生、おはようございます!」
新入生たちも一斉に立ち上がり、整列してエレノアに挨拶する。ステラの指導が行き届いているのか、みんな礼儀正しい。
「お、おはよう......」
エレノアは戸惑いながら挨拶を返した。これほど礼儀正しく挨拶されることに慣れていないようだ。
その時、食堂の入り口からリリアとミュウも現れた。
「おはよう、師匠! お姉様!」
リリアが元気よく手を振る。
「おはようございますなのです!」
ミュウも猫耳をピクピクと動かしながら挨拶した。
二人は俺の周りでアイリーンとステラが忙しなく動き回っている様子を見て、目を丸くした。
「わあ......師匠、すっかり人気者だね」
リリアがクスクスと笑いながら言った。
「師匠を取られちゃって、お姉様、気が気じゃないんじゃない?」
「誰が!?」
エレノアが顔を真っ赤にして叫んだ。
「私は別に武流なんか......!」
しかし、その時ステラが重大な勘違いをした。
「あっ! 失礼しました!」
ステラが慌てて深々と頭を下げる。
「武流先生とエレノア先生は、男女のご関係でしたか! 自分、お邪魔して大変失礼しました!」
「え!?」
新入生たちもざわめき始める。
「ステラ先輩、武流先生とエレノア先生って付き合ってるんですか?」
「すごーい! 学園内恋愛!」
「ロマンチックです!」
「違う!」エレノアが必死に否定した。「男女の仲じゃないわ!」
しかし、ステラはもう聞いていなかった。
「そうか! それなら自分がサポートしなければ!」
ステラが俄然やる気を出し始める。
「新入生たち! 恋人同士の朝食タイムをサポートするぞ!」
「はい、ステラ先輩!」
新入生たちが一斉に動き始めた。エレノアを無理やり武流の隣の席に座らせ、あれこれと面倒を見始める。
「エレノア先生、お飲み物はいかがですか?」
「武流先生の隣で朝食なんて、素敵ですね!」
「お二人、とてもお似合いです!」
「だから違うって言ってるでしょう!」
エレノアが顔を真っ赤にして抗議するが、新入生たちの勢いに押し切られてしまう。
その様子を見ていたアイリーンが、突然立ち上がった。
「ちょっと待ってください!」
アイリーンが眼鏡をクイッと押し上げる。
「生徒会長として申し上げますが、学園内での恋愛関係は校則で禁止されています! 純潔を守るのが私たち魔法少女! たとえ教師同士であっても、恋愛もは重大な規律違反です!」
「え? 教師同士も?」俺は驚いた。
「もちろんです! これは理事長に報告しなければなりません!」
アイリーンが手帳を取り出して何かメモし始める。
「だから付き合ってないから!」
エレノアがさらに真っ赤になって否定した。
「私と武流は師弟関係でもないし、同僚でもないし、ただの......ただの......」
「ただの?」リリアが意地悪く聞き返す。
「ただの、知り合いよ!」
「へぇ〜」リリアが納得いかない様子で頷く。
その時、ミュウがステラに興味を示した。
「ステラさん、わたくしと同じ風の魔法少女なのですね」
「ミュウ先生!」
ステラが目を輝かせて振り返った。
「自分、ミュウ先生のことを尊敬しています! 昨日の戦いを見て、風の魔法の素晴らしさを改めて実感しました!」
「そ、そんな......わたくしなんて......」
ミュウが恐縮している。
「ぜひ、自分の風の力を見ていただきたいです!」
ステラが張り切って立ち上がった。
「実は、自分、新しい技を開発したんです!」
「ステラさん、ここは食堂ですよ......」ミュウが心配そうに言う。
しかし、ステラはもう止まらなかった。
「ウィンド・トルネード・エクストリーム!」
ステラが杖を振ると、食堂に小さな竜巻が発生した。
「きゃー!」
新入生たちが歓声を上げる中、食器やパン、フルーツが宙に舞い始めた。
「ちょっと、ステラ!」俺が制止しようとしたが、もう遅かった。
食堂中の食器が風に巻き上げられ、空中でくるくると回り始める。アイリーンのハーブティーも宙に浮き、彼女の頭上でくるくると回っている。
「きゃああああ! 私のハーブティーが!」
アイリーンが慌てて手を伸ばすが、カップは手の届かない場所を飛び回っている。
「ステラ先輩、すごーい!」
「でも、お皿が飛んでます!」
「パンも飛んでる!」
新入生たちは大喜びだが、他の生徒たちは困惑している。
「あ、あぁ......」
ステラも自分の魔法が思った以上に強力だったことに気づき、慌て始めた。
「み、みなさん、すみません! 少し張り切りすぎました!」
エレノアの前のお皿も空中を飛び回り、彼女の髪にパンくずがくっついている。
「もう......何なのよ、この騒ぎは......」
エレノアが呆れながら髪からパンくずを取り除いている。
「ステラさん、魔法を止めてください!」ミュウが慌てて言った。
「は、はい! すぐに止めます!」
ステラが慌てて魔法を解除すると、宙に舞っていた食器や食べ物が一斉に落下し始めた。
「危ない!」
俺は咄嗟に立ち上がり、落下してくる食器を受け止めようとした。しかし、数が多すぎる。
「みなさん、気をつけてください!」
アイリーンが叫んだ瞬間、食堂中に食器が落ちる音が響いた。
ガシャーン! ガシャーン! ガシャーン!
幸い、怪我をした人はいなかったが、食堂は大変なことになっていた。床には割れた食器の破片や食べ物が散らばり、まるで戦場のような有様だった。
「あ......あぁ......」
ステラが青ざめている。
「自分、とんでもないことを......!」
「大丈夫、大丈夫」俺は苦笑いを浮かべながら言った。「怪我人がいなかっただけでも良かったよ」
「大変失礼いたしました! 罰として、外周100周走ってきます!」
「いや、走らなくていいから……」と俺。
「でも、食堂が......!」
「後で掃除すればいいさ」
新入生たちも申し訳なさそうにしている。
「ステラ先輩、大丈夫ですか?」
「私たちも手伝います!」
「掃除、みんなでやりましょう!」
エレノアが呆れたような表情で俺を見つめた。
「あなたって、本当に騒動を引き起こすのが好きね」
「俺は何もしてないぞ」
「でも、あなたがいると必ず何かが起こるのよね」
アイリーンも眼鏡を拭きながら苦笑いしている。
「まあ、退屈はしませんね」
ミュウも猫耳を困ったように動かしながら言った。
「ステラさんの魔法、確かに強力なのです......」
リリアだけが楽しそうに笑っている。
「師匠の周りって、いつもこんな感じだよね〜」
やれやれ、と俺は頭を振りながら苦笑した。
確かに、この学園での生活は退屈しそうにない。そして、俺の周りには個性豊かな美少女たちが集まってくる。
これが俺の新しい日常になるのだろうか。
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