(79)魔法杖の大暴走とエレノアの大開脚
アイリーンは恐怖で硬直し、その場から動くことができない。眼鏡の奥の瞳が恐怖で見開かれ、エネルギーの塊が迫ってくるのをただ見つめている。
俺は瞬時に判断した。
「蒼光閃!」
青白い光に包まれながら、俺は観客席に向かって瞬間移動した。アイリーンの前に立ちはだかり、蒼光剣を構える。
「蒼光盾・最大展開!」
蒼光剣から巨大な光の盾が展開された。エレノアの暴走したエネルギーが光の盾に激突し、激しい衝撃音と共に四方に散らばって消滅した。
全ては一瞬の出来事だった。
「大丈夫か? 生徒会長さん」
俺は振り返ってアイリーンに声をかけた。彼女は呆然とした表情で俺を見つめている。
「あ......あ......」
アイリーンは言葉にならない声を漏らしながら、立ち上がる。その拍子に体のバランスを崩し、後ろにひっくり返った。
「うわああああ!」
アイリーンは仰向けに倒れ、足をばたつかせながらもがいている。眼鏡もずり落ちて、どこかに転がってしまった。
「め、メガネ......メガネはどこ......」
彼女は倒れたままの体勢で手をばたばたと振り回す。その顔は真っ赤に染まっており、命を救ってもらった動揺と、複雑な感情が入り混じっているように見えた。
「メガネ、ここにあるぞ」
俺はアイリーンの眼鏡を拾い上げ、彼女に手渡した。
「あ......ありがとうございます......」
アイリーンは小さな声で礼を言いながら眼鏡を受け取る。その指が俺の手に触れた瞬間、彼女の顔がさらに赤くなった。
「アポロナイト様……」
アポロナイト様? さっきまでの冷ややかな態度とはずいぶん違う。どうやら、これまで抱いていた男性への嫌悪感に変化が生じているようだ。
しかし、今はそれどころではない。俺は闘技場の中央に向き直り、エレノアを睨みつけた。
「エレノア!」
俺の声が闘技場全体に響く。その声には明らかな怒りが込められていた。
「もう少しでアイリーンに当たっていたところだぞ! 観客を傷つけるなど言語道断だ!」
エレノアは杖を握りしめたまま、俺の怒りに動揺している。
「これは......その......」
「これがお前の実力か?」俺は厳しい口調で続けた。「力を制御できず、観客を危険に晒す。まだまだ未熟である証拠だ!」
観客席の生徒たちも、アイリーンが危険な目に遭ったことで俺の言葉に同調し始めた。
「確かに......エレノア様、危険すぎるわ」
「アイリーン会長が怪我をするところだった」
「制御できない力なんて、意味がないじゃない」
全校生徒と教師の前で子供のように叱られたエレノアの顔が、屈辱で真っ赤に染まった。
「う......うるさい!」
エレノアが激怒して叫んだ。
「忘れたの!? これは私とあなたの一対一の勝負よ! 私が勝ったら、あなたは全校生徒の前で土下座する! まだ戦いは終わっていないわ!」
彼女は杖を振り上げ、怒りに任せて次々と攻撃を放ち始めた。
「フロスト・ライトニング! アイス・ブラスト! クリスタル・ビーム!」
しかし、感情的になったエレノアの攻撃は、さらに制御が効かなくなっていた。なんとしても俺に勝利して跪かせるという思いに執着している。青白いエネルギーが不規則な軌道を描いて飛び回り、観客席の様々な場所に向かって飛んでいく。
「きゃー!」
「危ない!」
生徒たちが慌てて身を伏せる。教師たちも防御魔法を発動して生徒たちを守ろうとしている。
「エレノア!」
俺の怒りが爆発した。
「俺の教えがわからないのか! いい加減にしろ!」
俺は蒼光剣を高く掲げ、飛び回るエネルギーの塊を全て吸収し始めた。蒼光剣の刃が青白く輝き、エレノアの暴走したエネルギーが磁石に引き寄せられるように集まってくる。
剣に集まったエネルギーが巨大な光の球となって輝いた。
「少し頭を冷やせ! お前にこのエネルギー、返してやる!」
俺は蒼光剣を振り下ろし、集約したエネルギーを一気にエレノアに向けて放った。巨大な青白いエネルギーの奔流がエレノアに向かって襲いかかる。
「そんな......!」
エレノアは慌てて杖を構えて防御しようとする。
「アイス・シールド・マキシマム!」
氷の壁を作ろうとするが、蒼光剣から放たれたエネルギーの威力は凄まじく、氷の壁は瞬時に粉砕された。
エネルギーの奔流がエレノアの杖に直撃する。
「うわああああ!」
杖がエレノアの制御を完全に離れ、暴走し始めた。杖は生き物のように上下左右に跳ね回り、エレノアはそれにしがみつくことしかできない。まるで新人魔法使いが暴走するほうきに振り回されているかのような光景だった。
「やめて! 止まって!」
エレノアが必死に杖を制御しようとするが、杖は彼女の意思とは無関係に暴れ回る。
最初に杖は空中高く急上昇した。
「きゃああああ!」
エレノアは杖にしがみついたまま空中高く舞い上がる。彼女のスカートが風でめくれ上がり、観客席からは見えてはいけないものが見えそうになる。
次に杖は急降下を始めた。
「うわああああ!」
エレノアは杖と共に床に向かって落下し、床に激突する寸前で杖が再び方向を変える。今度は壁に向かって横に飛んでいく。
「止まりなさい! お願い!」
エレノアの懇願も虚しく、杖は彼女を壁に激突させた。
ドンッ!
「あぅ......!」
エレノアが壁にぶつかった瞬間、杖は再び暴れ始める。今度は床に向かって急降下し、エレノアを床に叩きつけた。
「うぐっ......」
床に叩きつけられたエレノアだったが、杖はまだ暴走を止めない。再び空中に舞い上がり、今度は別の壁に向かって突進する。
「止まって......!」
エレノアの声は弱々しくなっていたが、杖は容赦なく彼女を振り回し続けた。
観客席の生徒たちは、あまりの光景に呆気に取られて言葉を失っていた。教師たちも同様で、ただ唖然とエレノアが杖に翻弄される様子を見つめている。
そして最後に――
杖は最大の速度で壁に向かって突進した。エレノアは頭を下にした逆さまの体勢で、杖と共に壁に激突する。
激しい衝撃音と共に、壁にひび割れが走った。エレノアの体は、杖と共に壁にめり込んでいる。杖に秘めたれたエネルギーは尽きたらしく、暴走が止まった。
しばらくの静寂の後――
エレノアが壁から剥がれた。
ドサッ!
エレノアは頭から床に落下した。逆さまの大の字で、壁にもたれかかるように大股開きで静止する。魔法衣装は所々破れている。スカートが大胆に捲れ、わずかに痙攣する白い太腿が露わになっている。胸元も乱れて、谷間が見えそうになっていた。
「はぁ......はぁ......はぁ......」
エレノアは荒い息をつきながら体を震わせている。長い銀髪は汗で濡れて顔に張り付き、頬は羞恥心で真っ赤に染まっていた。
その時、壁にめり込んでいた杖が落下した。杖は、大きく開かれたエレノアの太腿の間にヒットした。
「んっ……」
エレノアの体がビクッと小さく跳ねる。
観客席は静まり返っている。あまりにも惨めなエレノアの姿に、誰も声をかけることができない。
そして――
青白い光がエレノアの体を包み、魔法少女の変身が解除された。
制服姿に戻ったエレノアが、逆さまで壁にもたれかかっている。ブレザーの制服はボロボロに破れており、スカートは重力で捲れて太腿が露わになっている。
「やれやれ……自業自得だな」俺はため息をついた。
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