(40)空からの脅威!ドラゴンと魔法の死闘
「何ですって!?」
ロザリンダの顔から血の気が引いた。広場に集まっていた村人たちからも悲鳴が上がる。
「結界は大丈夫なのか?」俺は即座に尋ねた。
村の周りには、エレノアの魔力による結界があり、外敵の侵入から守っている。
「結界は維持されています。しかし、それは地上からの侵入を防ぐもの。上空からの攻撃には……」
ロザリンダの言葉に、俺は状況を理解した。地上に比べて、空からの攻撃には脆弱なのだ。村に侵入する前に食い止めなければならない。
「みんな、行くぞ!」
俺の一声で、エレノア、ミュウ、リリアの三人が集まってきた。
「私が先頭で戦うわ」エレノアが意気込む。
「ボクも行く!」リリアも元気に応じた。
「わたくしも戦うのです!」ミュウも猫耳を立てて言った。
俺は三人を見て、作戦を考えた。「リリア、お前は村に残って村人の避難誘導を頼む。魔力はなくても、お前の動きと判断力は村の役に立つはずだ」
「師匠……わかった!」
リリアは一瞬残念そうな顔をしたが、すぐに使命を理解したようだ。彼女は村人たちの安全確保に走り出した。
「エレノア、ミュウ、俺たちは北へ向かう。まずは敵の全容を確認するぞ」
三人は村の北側へと駆け出した。途中で俺はブレイサーを掲げる。
「蒼光チェンジ!」
青い光に包まれ、アポロナイトへと変身する。エレノアとミュウも変身した姿で、俺たちは村の外れに到着した。
そこで俺は初めて敵を目にした。空高く、巨大な翼竜のような生物が飛んでいる。翼の長さは優に20メートルはあるだろう。鋭い牙と爪、そして長い尾が特徴的だ。暗い紫色の鱗に覆われた体からは、邪悪な魔力が漂っている。
「ドラゴンタイプの魔獣だわ」エレノアが即座に分析した。「目にしたことはあるけど、とても珍しい種類なの。この村に現れるのは初めてよ」
「どうすれば対抗できる?」
「私の氷の魔法が効くはず」
「風の精密操作で狙いを定めるのです!」ミュウも戦略を立てる。
俺は魔獣の飛行パターンを注視した。変則的に飛び回っているが、一定のリズムがある。『蒼光剣アポロナイト』の世界でも、空飛ぶ敵と戦うエピソードが何度かあった。その経験が活かせるかもしれない。
「あの魔獣、旋回して地上の獲物を見定めているようだな。三分周期で同じ軌道を描いている。次に村の真上を通過するのは……約60秒後だ」
「武流の観察力、さすがね」エレノアが感心したように言った。
「わたくしにはそこまで見抜けないのです……」ミュウが猫耳を動かしながら言う。
「よし、作戦を立てる。ミュウ、あの大きな樹の上に陣取れ。エレノア、あの岩場から氷の魔法を放て。俺はここから蒼光剣の攻撃を仕掛ける。魔獣が通過する瞬間を狙え!」
「了解なのです!」
「ええ、任せて!」
三人は素早く持ち場に散った。俺は大木の陰に身を隠し、魔獣の飛行を見計らう。ミュウは俊敏に木に登り、エレノアは岩場へと移動した。
「あと30秒……」
魔獣は予想通りの軌道で飛来していた。その巨体からは紫の魔力が波打ち、不吉な予感を覚える。
「あと20秒…」
ミュウが緑色の杖を掲げ、風の魔法を準備している。エレノアも氷の魔法を集中させていることが、凍てつく空気から感じられた。
「あと10秒……9……8……」
魔獣が近づく。想像以上の速さだ。翼を広げた姿は圧倒的な存在感を放っている。
「今だ!」
「ウィンド・アロー!」
「アイス・ジャベリン!」
「蒼光スラッシュ!」
三人の攻撃が一斉に放たれた。しかし――
魔獣は急に方向を変え、三人の攻撃をかわした。
「なっ……!」エレノアが驚きの声を上げる。
予想外の機動力だ。
魔獣は咆哮を上げると、突然急降下してきた。その標的は――エレノアだ。
「危ない! 逃げろ!」
俺の叫びに、エレノアは素早く岩場から飛び降りた。魔獣の爪が地面を抉り、岩が砕け散る。
「予想以上の知能を持ってるわ!」エレノアが悔しそうに言った。
魔獣は再び上空に舞い上がり、今度はミュウに向かってきた。
「にゃっ!」
ミュウは猫の俊敏さで木から木へと飛び移り、攻撃をかわす。魔獣の牙が大木を両断し、木が倒れていく。
「作戦変更だ!」俺は二人に叫んだ。「地上からの攻撃は難しい。敵は俺たちの動きを予測している」
魔獣は再び高度を上げ、村の方向へと旋回し始めた。
「村を狙う気か!」
俺は蒼光剣を構え直し、「アポロ・ウェイブ!」と叫んだ。剣から放たれた青い波動が空に向かって飛んでいく。しかし、魔獣はそれをも華麗にかわした。
「厄介な相手だな」
魔獣の尾が不気味に蠢き、紫の光を放ち始めた。次の瞬間、尾から紫色の火球が次々と放たれた。
「避けろ!」
火球は俺たちの目前の地面に落下し、爆発する。衝撃波で木々が倒れ、土煙が立ち上る。
「村が危ない!」エレノアが叫んだ。
「ミュウ、村の上空に風の壁を作れるか?」俺は急いで尋ねた。
「はいなのです! でも、エレノア様の魔力による結界のように強くはないし、維持できる時間も限られるのです……」
「構わない、やってくれ!」
ミュウは杖を高く掲げ、「エアリアル・ウォール!」と叫んだ。村の上空に緑色の風の壁が形成される。次の火球の波が壁に当たり、爆発するが、村への被害は防がれた。
「よし! 時間稼ぎはできた。次の一手を考えるぞ」
俺は周囲を見回した。このままでは地上からの攻撃では効果がない。魔獣の動きは予測不可能だし、高度もある。
エレノアが氷の槍を次々と射出するが、魔獣はそれらをすべてかわしていく。彼女の表情には焦りが見える。
「くっ……当たらないわ!」
これはまずい。このままでは消耗戦になる。魔獣は体力の衰えも見せず、攻撃の手を緩めない。ミュウの風の壁にも限界がある。
「どうすれば……」
俺は『蒼光剣アポロナイト』での戦いを思い出した。そう、あの時も同じような窮地に立たされた。でも、そこから逆転したんだ。
「あの時のように……」
俺の脳裏に、ある閃きが走った。
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