表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/227

(40)空からの脅威!ドラゴンと魔法の死闘

「何ですって!?」


 ロザリンダの顔から血の気が引いた。広場に集まっていた村人たちからも悲鳴が上がる。


「結界は大丈夫なのか?」俺は即座に尋ねた。


 村の周りには、エレノアの魔力による結界があり、外敵の侵入から守っている。


「結界は維持されています。しかし、それは地上からの侵入を防ぐもの。上空からの攻撃には……」


 ロザリンダの言葉に、俺は状況を理解した。地上に比べて、空からの攻撃には脆弱なのだ。村に侵入する前に食い止めなければならない。


「みんな、行くぞ!」


 俺の一声で、エレノア、ミュウ、リリアの三人が集まってきた。


「私が先頭で戦うわ」エレノアが意気込む。


「ボクも行く!」リリアも元気に応じた。


「わたくしも戦うのです!」ミュウも猫耳を立てて言った。


 俺は三人を見て、作戦を考えた。「リリア、お前は村に残って村人の避難誘導を頼む。魔力はなくても、お前の動きと判断力は村の役に立つはずだ」


「師匠……わかった!」


 リリアは一瞬残念そうな顔をしたが、すぐに使命を理解したようだ。彼女は村人たちの安全確保に走り出した。


「エレノア、ミュウ、俺たちは北へ向かう。まずは敵の全容を確認するぞ」


 三人は村の北側へと駆け出した。途中で俺はブレイサーを掲げる。


「蒼光チェンジ!」


 青い光に包まれ、アポロナイトへと変身する。エレノアとミュウも変身した姿で、俺たちは村の外れに到着した。


 そこで俺は初めて敵を目にした。空高く、巨大な翼竜のような生物が飛んでいる。翼の長さは優に20メートルはあるだろう。鋭い牙と爪、そして長い尾が特徴的だ。暗い紫色の鱗に覆われた体からは、邪悪な魔力が漂っている。


「ドラゴンタイプの魔獣だわ」エレノアが即座に分析した。「目にしたことはあるけど、とても珍しい種類なの。この村に現れるのは初めてよ」


「どうすれば対抗できる?」


「私の氷の魔法が効くはず」


「風の精密操作で狙いを定めるのです!」ミュウも戦略を立てる。


 俺は魔獣の飛行パターンを注視した。変則的に飛び回っているが、一定のリズムがある。『蒼光剣アポロナイト』の世界でも、空飛ぶ敵と戦うエピソードが何度かあった。その経験が活かせるかもしれない。


「あの魔獣、旋回して地上の獲物を見定めているようだな。三分周期で同じ軌道を描いている。次に村の真上を通過するのは……約60秒後だ」


「武流の観察力、さすがね」エレノアが感心したように言った。


「わたくしにはそこまで見抜けないのです……」ミュウが猫耳を動かしながら言う。


「よし、作戦を立てる。ミュウ、あの大きな樹の上に陣取れ。エレノア、あの岩場から氷の魔法を放て。俺はここから蒼光剣の攻撃を仕掛ける。魔獣が通過する瞬間を狙え!」


「了解なのです!」

「ええ、任せて!」


 三人は素早く持ち場に散った。俺は大木の陰に身を隠し、魔獣の飛行を見計らう。ミュウは俊敏に木に登り、エレノアは岩場へと移動した。


「あと30秒……」


 魔獣は予想通りの軌道で飛来していた。その巨体からは紫の魔力が波打ち、不吉な予感を覚える。


「あと20秒…」


 ミュウが緑色の杖を掲げ、風の魔法を準備している。エレノアも氷の魔法を集中させていることが、凍てつく空気から感じられた。


「あと10秒……9……8……」


 魔獣が近づく。想像以上の速さだ。翼を広げた姿は圧倒的な存在感を放っている。


「今だ!」


「ウィンド・アロー!」

「アイス・ジャベリン!」

「蒼光スラッシュ!」


 三人の攻撃が一斉に放たれた。しかし――


 魔獣は急に方向を変え、三人の攻撃をかわした。


「なっ……!」エレノアが驚きの声を上げる。


 予想外の機動力だ。


 魔獣は咆哮を上げると、突然急降下してきた。その標的は――エレノアだ。


「危ない! 逃げろ!」


 俺の叫びに、エレノアは素早く岩場から飛び降りた。魔獣の爪が地面を抉り、岩が砕け散る。


「予想以上の知能を持ってるわ!」エレノアが悔しそうに言った。


 魔獣は再び上空に舞い上がり、今度はミュウに向かってきた。


「にゃっ!」


 ミュウは猫の俊敏さで木から木へと飛び移り、攻撃をかわす。魔獣の牙が大木を両断し、木が倒れていく。


「作戦変更だ!」俺は二人に叫んだ。「地上からの攻撃は難しい。敵は俺たちの動きを予測している」


 魔獣は再び高度を上げ、村の方向へと旋回し始めた。


「村を狙う気か!」


 俺は蒼光剣を構え直し、「アポロ・ウェイブ!」と叫んだ。剣から放たれた青い波動が空に向かって飛んでいく。しかし、魔獣はそれをも華麗にかわした。


「厄介な相手だな」


 魔獣の尾が不気味に蠢き、紫の光を放ち始めた。次の瞬間、尾から紫色の火球が次々と放たれた。


「避けろ!」


 火球は俺たちの目前の地面に落下し、爆発する。衝撃波で木々が倒れ、土煙が立ち上る。


「村が危ない!」エレノアが叫んだ。


「ミュウ、村の上空に風の壁を作れるか?」俺は急いで尋ねた。


「はいなのです! でも、エレノア様の魔力による結界のように強くはないし、維持できる時間も限られるのです……」


「構わない、やってくれ!」


 ミュウは杖を高く掲げ、「エアリアル・ウォール!」と叫んだ。村の上空に緑色の風の壁が形成される。次の火球の波が壁に当たり、爆発するが、村への被害は防がれた。


「よし! 時間稼ぎはできた。次の一手を考えるぞ」


 俺は周囲を見回した。このままでは地上からの攻撃では効果がない。魔獣の動きは予測不可能だし、高度もある。


 エレノアが氷の槍を次々と射出するが、魔獣はそれらをすべてかわしていく。彼女の表情には焦りが見える。


「くっ……当たらないわ!」


 これはまずい。このままでは消耗戦になる。魔獣は体力の衰えも見せず、攻撃の手を緩めない。ミュウの風の壁にも限界がある。


「どうすれば……」


 俺は『蒼光剣アポロナイト』での戦いを思い出した。そう、あの時も同じような窮地に立たされた。でも、そこから逆転したんだ。


「あの時のように……」


 俺の脳裏に、ある閃きが走った。

お読みいただき、ありがとうございます!

第40話まで、毎日更新達成です。

面白いと思った方、続きが気になる方は、ぜひブックマークや★★★★★評価をいただけると励みになります!

よろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ