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(212)美少女の尻に敷かれ、玩具にされるヒーロー

 俺は歯を食いしばって立ち上がった。このままでは終われない。


「アポロ・ジャッジメント!」


 俺は蒼光剣を高く掲げた。これは俺の最強の必殺技だ。敵を光の粒子に変えて完全消滅させる――この技で、どんな強敵も倒してきた。


 蒼光剣から、巨大な青白い光の波動が放たれた。波動は渦を巻きながら明日香に迫り、その軌道上のすべてを飲み込んでいく。客席の椅子が次々と光の粒子に変わり、消滅していった。


 明日香に直撃する――


 だが、明日香は避けなかった。彼女は両手を前に突き出し、波動を受け止めた。


 さすがに、この技は簡単には防げないはずだ。明日香の足元の地面が削れ、彼女の身体がわずかに後ろに押される。


「んん……っ」


 明日香が、まるで快楽に身を委ねるかのような声を漏らした。


 だが――それだけだった。


「あぁ……すごい」明日香が恍惚とした表情で微笑んだ。「全身にビリビリ来るわ。悪くないわよ、神代さん。でも――」


 明日香の手のひらから、紫色の光が放たれた。


 その光が、俺の青白い波動を飲み込んでいく。まるで波動が紫色の光に吸い込まれるかのように、アポロ・ジャッジメントの威力が急速に弱まっていった。


「この程度のマッサージじゃ、私は満足できないわよ?」


 明日香が手のひらを握りしめると、俺の波動が完全に消滅した。


 彼女が手のひらをふっと吹くと、紫色の光の粒子が舞い散る。その仕草はまるで、タバコの煙を吹き消すかのように、俺の最強技を取るに足らないものとして扱っていた。


 俺は愕然とした。アポロ・ジャッジメントが――俺の最強の技が、通用しない。


「さて」明日香が宙に浮き上がった。深淵魔法の力で、彼女の身体が重力から解放される。「そろそろ私のターンかしら」


 明日香がゆっくりと上昇していく。彼女の周囲に、無数の星が出現し始めた。


 俺は蒼光剣を構え直した。俺の技が全て通じないとなれば――どうすればいい?


「あなたの技、どれも退屈ね」明日香が空中でポーズを取りながら言った。「戦いはもっと刺激的じゃないと。私がお手本を見せてあげるわ。体で教えてあげる」


 考える暇もなく、明日香が動いた。


 彼女の速度は、先ほどまでとは比較にならないほど速かった。まるで流星のように、明日香が俺に向かって急降下し、接近してくる。


 俺が蒼光剣を振り上げた瞬間、明日香の姿が消えた。


「こっちよ、鈍感さん」


 声が背後から聞こえた。振り返る間もなく、明日香の蹴りが俺の背中を捉えた。装甲越しに、深淵魔法で強化された蹴りの威力が伝わってくる。


「がっ……!」


 俺の身体が前に吹き飛ばされる。地面に激突する直前、俺は体勢を立て直そうとした。


 だが、その瞬間、明日香が俺の進路に現れた。


「えいっ♡」


 明日香はわざと女の子らしい可愛い掛け声で回し蹴りを決め、俺の側頭部を捉えた。光沢のある白い太腿が鮮やかな軌道を描く。見事なまでのパンチラ全開キックだった。俺の視界が回転し、身体が横に吹き飛ばされた。


「ぬあっ!」


 舞台の装置に激突し、木製の装置が粉々に砕け散る。


「ふふっ。強烈でしょ?」明日香が艶やかに笑い、空中でくるりと回転した。「あなたが『アポロナイト』の現場で厳しく指導してくれたお陰よ。『もっと腰を入れろ』『足を高く上げろ』『回転を速くしろ』って、泣きながら何度も何度も練習させられたんだから……」


「お前……」


「今度は私があなたをしごく番よ」明日香が唇を舐めた。「……あっ、"しごく"って、別に嫌らしい意味じゃないわよ?」


 明日香は笑みを浮かべると、俺が構えた蒼光剣の刀身の上に、ひょいと飛び乗った。


「な――」


 俺の言葉が最後まで出ない。明日香は、俺が水平に構えた蒼光剣の刀身の上に、爪先立ちで立っていた。まるでバレエダンサーのように優雅なポーズで、完璧にバランスを取っている。


 蒼光剣は光の刃だ。実体はあるが、極めて繊細な力の均衡で成り立っている。その上に立つなど――


「素敵な剣ね」明日香が片足で立ち、もう一方の脚を後ろに伸ばした。まるでフィギュアスケートの演技のように、優雅で美しいポーズだ。彼女の身体のラインが際立ち、胸の谷間が深く覗く。「バランスを取るトレーニングに丁度いいわ。ね、もっと安定させてくれない? プルプル震えてるわよ」


 彼女の体重が、蒼光剣を通じて俺の腕に伝わってくる。だが、その重さは驚くほど軽かった。まるで羽のように――いや、本当に彼女は重力を無視しているのかもしれない。


「降りろ……!」


 俺が剣を振って彼女を振り落とそうとした瞬間、明日香が軽くジャンプした。そして、くるりと空中で一回転すると、再び剣の上に着地する。今度は両足で立ち、腰に手を当てて俺を見下ろしていた。閉じられた太腿の奥に僅かに下着が見えている。


「きゃっ」明日香がわざとらしく声を上げた。「危ないじゃない。落ちちゃうかもしれないのに。……あ、でも落ちるのは、あなたの方かしら?」


 その言葉には明らかに皮肉が込められていた。


「それとも――」明日香が妖艶に微笑んだ。「私に"落ちて"欲しい? いいわよ、受け止めてくれるなら」


「馬鹿にするのもいい加減にしろ!」


 俺は歯を食いしばり、剣を激しく振った。


 明日香が宙に舞う。彼女は慌てることなく、空中で華麗に回転し、俺の頭を蹴って飛び越えた。その時、彼女の足裏が俺のマスクを踏みつけていく感触があった。


 そして――


 次の瞬間、俺の肩に重みがかかった。


「な……!?」


 明日香が、俺の肩に座っていた。


 俺は思わずバランスを崩し、片膝をついた。両手を地面につき、四つん這いの姿勢になる。


 そして、明日香は俺の背中に腰を下ろした。


「あら、いい椅子ね」


 明日香の声が、俺の真上から聞こえた。彼女は俺の背中に座り、脚を組んで、まるでソファに座っているかのように寛いでいる。


 俺は立ち上がろうとしたが、明日香の体重が――いや、重さではない。彼女が放つ魔力が、俺の身体を地面に押し付けている。


「焦らないで」明日香が俺の背中で身体を揺らした。「本番はこれからよ。私がたっぷり、じっくり、しごいてあげる」


 装甲越しに彼女の艶めかしい尻の感触が伝わってくる。不覚にも身体がゾクっと反応してしまう。


「ん? どうしたの?」明日香が俺の反応に気づいたようだ。「ゾクゾクしてきたでしょう? 体は正直ね。久しぶりに会えたんだから、もっと楽しみましょう? ねえ、神代さん」


 その声には、小馬鹿にしたような、妖艶な響きがあった。まるで女王が奴隷を嘲笑うかのような、残酷な優越感が滲み出ていた。


 明日香が俺の背中でゆっくりと身体の向きを変える。四つん這いの俺に跨り、馬乗りの体勢になる。


 俺の自尊心が、激しく傷つけられる。


 二十年以上のスーツアクター経験。数え切れないほどの戦闘。培ってきた全ての技術と経験が――この小娘の前では、何の意味もない。


「くそっ……!」


 俺は全身の力を振り絞り、立ち上がろうとした。


 だが、明日香の魔力が俺を地面に縛り付ける。俺の装甲が軋み、身体が悲鳴を上げた。


「無駄よ」明日香が俺の背中で腰を動かし始めた。前後にゆっくりと、リズミカルに。「私の力の前では、あなたの技術も経験も、何の意味もないの」


 明日香は馬をいなすように、手のひらで俺の尻をペンと叩いた。


「くっ……!」俺は屈辱に苛まれる。


 まるで、あの日――朝倉明日香の告発で、俺のキャリアが終わった日のように。俺が築き上げてきた全てが、一瞬で無意味になった、あの日のように。


「さあ、耐えられるかしら?」


 明日香が腰に力を入れ、より強く俺の背中を押した。


「ぐっ……!」凄まじい重さに、四つん這いの俺は両手両足に力を込めて踏ん張る。


 明日香は尻と股間部分をぐいぐいと押し付けて俺を翻弄する。本当に馬に乗っているかのように腰を揺らす。さらには両足を床から浮かせ、全体重をかけた。


「んん……」明日香が小さく喘ぎ声を漏らした。「いい感じ……意外と頑張るじゃない」


 彼女の腰の動きが速くなる。


「でももっと激しくなるわよ。それっ♡」


 明日香がまた小馬鹿にしたような可愛い声を出した。俺の背で開脚し、夢中で腰を振っている。背中の装甲越しに、明日香の下半身の柔らかさと体温を感じる。気のせいだろうか、微かな湿り気さえも感じてしまう。


 明日香の微かな息遣いが聞こえる。腰振りがさらに激しさを増した。俺は渾身の力で踏ん張り続ける。


 明日香の声が、次第に切迫したものに変わっていく。


 ダメだ……このままでは俺は……。


 そして――やがて腰振りが限界に達したのか、突然、明日香の動きが止まった。開脚した明日香の両足がピンと伸びる。体が硬直した明日香は、その体勢のまま僅かに腰を震わせている。


「ん……っ、あっ……」明日香が吐息を漏らす。


 そして――


「ふぅ…………」


 明日香はひと息ついて、全身の力を抜いた。波が去っていくようだった。余韻に浸るように、まだ腰が微かに動いている。背中の密着した部分がねっとりと熱を帯びていた。


 ……ん? 何だったんだ、今のは?


 まさか……明日香のやつ、俺の背中で腰を振っているうちに、夢中になり、そのまま最後まで……。


 嘘だろ……。こいつ、戦いの最中に……。


 だが、明日香は誤魔化すように平然と話しかけた。声には微かな息切れが混じっている。


「小娘の尻に敷かれて悔しい? そりゃそうよね。自分がパワハラ指導していた女の子に馬乗りにされて手も足も出ないんだから。しかも無敵のアポロナイトの姿で……」


 明日香がついに俺の背中から立ち上がった。


「少しはカッコいいところ見せなさいよ。じゃないと、つまらないわ」


 明日香の魔力が解けると同時に、俺は立ち上がった。蒼光剣を握りしめ、彼女を睨みつける。


 明日香は、つい先ほどまで俺の背で腰を振っていたことなど嘘のように、澄ました顔をしている。だが、微かに頬が紅潮し、うっすら汗ばんでいるようだ。クールに両手を腰に当てているが、それは下半身の火照りを抑えているようにも見える。ぴたりと閉じられた両太腿は、その奥で起きた秘め事を隠しているようだった。


 背中の装甲に湿り気を感じる。


 間違いない。明日香のやつ……俺の背中で……。


 こんな小娘に、俺の技が通じない。蒼光閃も、アポロ・サンダー・スラッシュも、アポロ・ブレイジング・ウェイブも、千光旋も、アポロ・ジャッジメントも――全て、明日香には通用しなかった。


 指一本で、髪をかき上げただけで、息を吹きかけただけで、指を鳴らしただけで、キスしただけで――攻撃を止められ、かき消され、吸収され、跳ね返された。


 さらには、尻に敷かれ、腰振りの玩具にされて弄ばれた。屈辱が俺の心を支配していく。


 完全に手詰まりだった。一体どうすればいい?

お読みいただき、ありがとうございます!

本日で180日連続更新、達成です!

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また、皆さんのお気に入りキャラクターやお気に入りシーンがあれば感想で教えてください。

よろしくお願い致します。

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