(20)ハーレム初夜、美少女たちと星の祭典デート
夕暮れが近づくにつれ、王都クリスタリアへの道は賑わいを増していった。馬車や歩く人々で埋め尽くされた大通りは、星祭りに向かう者たちの熱気で溢れている。
「わぁ、たくさんの人!」
リリアは馬車の窓から身を乗り出し、目を輝かせていた。長い髪が風になびき、少女らしい生き生きとした表情が夕陽に照らされて輝いている。今日は特別な日なのか、いつもよりも華やかな装いで、胸元に小さな星の形のブローチを着けていた。
彼女の隣ではミュウが猫耳をピクピクと動かし、馬車の外から聞こえる音や匂いを敏感に感じ取っている。黒いドレスに白い襟飾り、その上に緑色のリボンというシンプルながらも可愛らしい装いで、白銀の尻尾がときどき期待に震えるのが見えた。
「師匠、王都は初めてだよね?」
「ああ」俺は頷いた。「スターフェリアに来てから、村の外に出るのは初めてだ」
ロザリンダは静かに微笑みながら、俺たちの会話を聞いていた。今日のロザリンダは特別な装いで、典雅な緑色のドレスに身を包み、首元には星の形をしたブローチが輝いている。茶色の髪は普段よりも丁寧に編み込まれ、額に沿ってかかる前髪が大人の女性としての色気を醸し出していた。
「クリスタリアは『星の都』とも呼ばれています」彼女が説明した。「星の祝福が最も強く降り注ぐ場所だと言われているのです」
馬車が丘を登りきると、突然視界が開けた。眼下に広がる都市の全景に、思わず息を呑む。
夕陽に照らされたクリスタリアは、まさに宝石の世界だった。水晶のような透明な塔、銀色に輝く屋根、青白い光を放つ街灯。都市全体が巨大な水晶でできているように見える。中心には巨大な城がそびえ、その周りを星型に広がる街並み。運河が街を縦横に走り、橋が無数にかかっている。
「すげぇ……」思わず漏らした言葉に、リリアがくすくす笑った。
「師匠、口が開いてるよ」
彼女の言葉に、俺はハッとして口を閉じた。スーツアクターとして様々なセットを見てきたが、目の前の光景は特撮の世界を遥かに超えていた。ハリウッド映画の予算でも、これを実物のセットで構築することは不可能だろう。
「師匠の世界にも、こんなお祭りってあるの?」リリアが好奇心いっぱいの目で尋ねた。
「ああ、日本には夏祭りや花火大会がある。星を祝う祭りではないが、夜空に花火を打ち上げて楽しむんだ」
「すごい!」リリアの目がさらに輝いた。「見てみたいな!」
「お城の近くまで行ってみたいのです!」ミュウの声には珍しく興奮が混じっていた。「わたくし、たまにしか王都に来られないのです」
「いいだろう」俺は頷いた。「お前たちの行きたいところに連れて行ってくれ」
馬車は都市の入口で止まり、そこから徒歩で祭りの会場へと向かうことになった。星祭りの夜、都市の中心部は馬車の乗り入れが禁止されているのだという。
街に一歩足を踏み入れると、祭りの熱気がさらに強く伝わってきた。道の両側には出店が軒を連ね、色とりどりの提灯が通りを照らしている。ユニークなのは、その提灯の光が単なる火や魔法の光ではなく、本物の小さな星が閉じ込められているように見えること。青白く揺らめく光が、幻想的な雰囲気を醸し出していた。
「これは星の欠片を結晶化したものなのです」ミュウが提灯を指さしながら説明した。「夜になると、もっと綺麗に輝くのです」
「本物の星なのか?」俺は驚いて尋ねた。
「もちろん本物の星じゃないよ」リリアが笑った。「星の祝福を受けた魔法少女たちが作った結晶だよ。でも、星の力が宿ってるんだ」
「ほお……」俺はきらきら輝く星の提灯を興味深く見つめた。
通りを行き交う人々の中で、俺は一つの事実に気が付いた。男性の姿は女性に比べて圧倒的に少なく、いても荷物を運ぶ労働者か、屋台の従業員として働いている姿ばかりだった。その身なりは質素で、中には薄汚れた作業着を着た男性もいる。一方、女性たちは華やかな装いで、笑顔で祭りを楽しんでいた。
「やはりこの世界では、男性の地位が低いんだな」俺はロザリンダに小声で尋ねた。
「スターフェリアでは、星の祝福を受けられるのは女性だけです」彼女は静かに答えた。「そのため、魔法の力を持つのも女性だけ。自然と社会の主導権も女性が握るようになりました」
「お腹すいたー!」リリアが突然叫んだ。「あっちの出店、いい匂いがするよ!」
「わたくしはあっちの方がいいと思うのです!」ミュウが別の屋台を指さした。「あそこの魚の串焼きが美味しそうなのです!」
「え〜、でも師匠はきっと甘いものが好きだよね?」リリアが俺の腕を引っ張る。
「いえいえ、男性なら肉料理の方が好みなはずなのです!」ミュウも負けじと反対側の腕を引っ張った。
彼女たちは互いにけん制しながら、俺を自分の好きな方向へ引っ張ろうとしている。その子供っぽい争いぶりに、俺は思わず笑ってしまった。
「どっちも行こう」俺は両手を上げて降参のポーズを取った。「時間はたっぷりあるんだ」
最初に訪れた屋台では星型のパンケーキが売られていた。青い生地に銀色のアイシングが施され、中には甘いクリームが詰まっている。リリアはそれを両手で持ち、頬張った。
「むぐむぐ……おいしー!」
口の周りにクリームをつけた彼女の姿に、思わず笑みがこぼれる。
「これは……何の味だ?」俺は一口食べて尋ねた。通常の砂糖の甘さではなく、何とも言えない芳醇な甘さだ。
「スターフルーツという果物をブレンドしたものよ」ロザリンダが説明した。
「スターフルーツか。それなら俺の世界にもある」
切ると断面が星の形になる南国のフルーツだ。
「それとは多分違うものです。この世界のスターフルーツは、星の祝福を受けている特別な果実。普通の果物より甘く、食べると体の中に星の光が広がるような感覚があるのです」
確かに、口の中に広がる甘さには神秘的な余韻があった。まるで星空を飲み込んだような不思議な感覚だ。
「美味しいでしょう?」ロザリンダが優しい笑みを浮かべた。
次にミュウが推薦した屋台で、魚の形をした飴細工を買った。彼女は猫耳を嬉しそうに動かしながら、小さな舌で舐める姿は実に猫らしく可愛らしかった。
「武流様、わたくしが案内します!」ミュウが急に言い出した。「あっちに星の占い師がいるのです!」
「え〜、師匠は星の射的をやりたいはずだよ!」リリアが割り込んできた。「ね、師匠?」
「どっちも行ってみたいな」俺は両手で彼女たちの頭をポンポンと撫でた。「でも人混みの中でミュウを見失いそうだ」
そう言うと、俺はミュウの華奢な体を抱き上げ、肩に乗せた。
「わっ!」ミュウは驚いて俺の頭をつかんだ。「こ、こんな高いところ、恥ずかしいのです……」
ミュウは驚くほど軽かった。まるで子猫を肩に乗せているかのようだ。彼女の柔らかな体重が肩に心地よく感じられる。白銀の尻尾が俺の背中にふわりと触れた。
「ずるい!」リリアが頬を膨らませた。「ボクも肩車して欲しい!」
「リリアはあとでな」俺は笑った。
「むぅ……」リリアは不満そうな表情をしたが、すぐに屈託のない笑顔に戻った。「じゃあ、手を繋ごう!」
彼女は俺の手をしっかりと握り、賑やかな通りを案内し始めた。
通りを進むにつれ、観光客向けの屋台から、より神聖な雰囲気を持つ場所へと移り変わっていった。今度は星型の飾りや星を模った細工物が売られている。
「あれは星の器と言って、願い事を書いた紙を入れるものなのです」ミュウが俺の肩から青く輝く小さな器を指さした。「星祭りの夜に願いを込めると、星の女神に届くと言われているのです」
「師匠も買おうよ!」リリアが俺の腕を引っ張った。
俺たちは各自一つずつ星の器を買い、小さな紙に願い事を書いた。リリアとミュウは真剣な表情で書いている。彼女たちは何を願ったのだろう?
俺は一瞬迷ってから、シンプルに「この世界での居場所を見つけること」と書いた。この世界を支配したいという欲望は、あまりにストレートなので、胸にとどめておいた。
「何を書いたの?」リリアが好奇心いっぱいの目で尋ねてきた。
「それは秘密だ」俺は笑った。「願い事は他人に言うと叶わないんだろう?」
「そうなの?」リリアはちょっと残念そうにしながらも頷いた。「でも当たってるかどうか教えてよ? 師匠は……この世界で何か大きなことを成し遂げたいって思ってるんでしょ?」
その鋭い直感に、俺は一瞬言葉を失った。「……鋭いな」
リリアは満足そうに笑った。「当たったでしょ? ボク、師匠のこと、なんでも分かるんだから!」
上目遣いのその表情はびっくりするほど色っぽく、俺は慌てて目線を逸らした。
落ち着け、落ち着け……。相手はまだ十五歳だぞ……。
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