(19)特撮ヒーローの異世界ハーレム始まる
「師匠、落ち込まないで」リリアが俺の腕を引っ張った。「お姉様なら、きっとそのうち元気になるよ!」
「そうなのです!」ミュウも同調する。「エレノア様は強い方なのです。必ず立ち直るのです!」
「そうだな」俺は頷いた。「ところで、お祭りって?」さっきリリアがエレノアに言っていたことが気になった。
「今夜、王都クリスタリアで年に一度の星祭りがあるんだ!」リリアの目が輝いた。「夜空に星の魔法が輝いて、すっごくきれいなんだよ!」
「とても素晴らしいお祭りなのです」ミュウの猫耳が嬉しそうに動く。「武流様も一緒に行くのです!」
「王都か……」俺は考え込んだ。都に行けば、この世界についてもっと多くの情報が得られるかもしれない。「詳しく聞かせてくれ」
「星祭りは十二歳の少女たちが、星の祝福を受けて新たな魔法少女になれる儀式なんだ」リリアが説明した。「この世界では魔法の才能がある子が十二歳になると、星の祝福を受けるチャンスがあるんだよ。そして新たな魔法少女が誕生するんだ」
「わたくしも十二歳のときに、魔法少女になったのです」ミュウが懐かしそうに言った。
「リリアとエレノアも十二歳のときに、儀式を受けたのか?」
「うん!」リリアが頷いた。「ボクとお姉様は王族の血筋のものだからね。生まれつき魔法姫になる資質が備わっているんだ」
「今年も多くの少女たちが星の祝福を受けるのです。とても神聖な儀式なのです」
「なるほど」俺は頷いた。「だけど、リリアは今、魔力が使えないんだよな?」
リリアの表情が少し曇った。「うん……でも、お祭りは見られるよ! 儀式を見ることは誰でもできるんだ」
「そうなのです」ミュウが付け加えた。「武流様も、もちろん見られるはずなのです」
館を出ると、ロザリンダが待っていた。彼女は静かに微笑み、俺たちに近づいてきた。
「エレノア様の様子はいかがでしたか?」彼女が心配そうに尋ねる。
「まだ部屋から出てこない」俺は答えた。「時間が必要かもしれないな」
「そうですね……」ロザリンダの表情に翳りが浮かんだ。「あの子には、克服すべき過去があります」
「過去?」
リリアとミュウは、ロザリンダが何か重要なことを話そうとしていると察したようで、互いに顔を見合わせた。
「ロザリンダ様、エレノア様のことは……」ミュウが心配そうに猫耳を下げる。
「大丈夫です」ロザリンダは穏やかに微笑んだ。「彼女の過去についてすべてを語るつもりはありません。それは彼女自身が決めることです」
俺は黙って頷いた。エレノアの秘密は彼女自身の口から聞くべきだろう。それを待つ余裕はある。
「ただ、一つだけ知っておいてほしいのは」ロザリンダは静かに言った。「エレノアは責任感の強い子です。リリアを守ることを何よりも優先し、そのために自分を犠牲にすることも厭わない」
「お姉様……」リリアの目に涙が浮かんだ。
「彼女の高圧的な態度は、自分の弱さを隠すための鎧なのかもしれません」ロザリンダはそう言って、視線を落とした。「特に男性に対しては……」
「男性との間に、何かあったのか?」俺は思わず尋ねた。
ロザリンダは首を振った。「それ以上は彼女自身から聞いてください」
一瞬の沈黙が場を支配した。風が木々の葉を揺らし、かすかな音が耳に届く。
「ところで」ロザリンダは突然表情を明るくして話題を変えた。「武流さんはスターフェリアの伝統についてご存知ですか?」
「いや、まだ詳しくはわからないが……」
「私たちスターフェリアの世界には、ある伝統があります」ロザリンダは静かに説明し始めた。「魔法少女は自分より強い男性と出会ったら、将来、その男性と結婚しなければならないのです」
「え?」
思わず声が上ずった。ロザリンダは穏やかな笑みを浮かべ続ける。
「魔法少女が強い男性と結ばれることで、より強力な次世代の魔法姫が生まれると言われています。特に、あなたのような光の使者とであれば……」
ロザリンダの言葉に、俺は言葉を失った。結婚? この若い少女たちと?
「リリアもミュウも、あなたを狙っているのでしょうね」彼女は面白そうに言った。「リリアはいつも通り直球で、ミュウは遠慮がちにですが」
言われてみれば、二人の態度には何か特別なものがあった。単なる師弟関係を超えた期待と緊張感。
「彼女たちはまだ若いんですよね?」俺は冷や汗を流しながら言った。「結婚とか早すぎるんじゃ……」
「スターフェリアでは、十六歳から結婚できますよ」ロザリンダは淡々と言った。「ミュウは十七歳です。リリアはまだ十五歳ですが、来年には……」
俺の心臓が早鐘を打つ。エレノアを含めて三人の魔法少女。彼女たちは皆、俺との結婚を考えているのか? 確かに俺の体は十八歳ほどに若返っているが、心は四十歳のおっさんだ。これはいささか問題ではないか?
「ちなみに」ロザリンダはさらに言葉を続けた。「男性は同時に複数の魔法少女と結婚することも許されています」
「待って」俺は両手を上げた。まるでハーレムじゃないか。「俺はまだ結婚するとは……」
リリアとミュウは互いの顔を見合わせ、くすくす笑った。
「師匠」リリアが甘えるように腕にしがみつく。「今夜のお祭りでね、ボクのことをもっと知ってね!」
「わ、わたくしも武流様のことをもっと知りたいのです……」ミュウも恥ずかしそうに言った。
俺は頭を抱えた。なんという状況だ。見れば魅力的な少女たちだが、この展開はいささか早すぎる。
「そろそろお昼ですね」ロザリンダが場の空気を変えるように言った。「昼食の後は、お祭りの準備をしましょうか」
「そうだね!」リリアが元気よく言った。「師匠、王都ではボクがいっぱい案内するよ!」
「いえいえ、わたくしも武流様を案内するのです!」ミュウが負けじと言った。
二人はまた俺の腕を奪い合い始めた。
「二人とも落ち着いて」俺は苦笑した。「三人で行こう。みんなで楽しめばいいじゃないか」
「でも師匠」リリアが頬を膨らませた。「ボクと師匠で二人きりの時間が欲しいな……」
「リリア様、そういうのは恥ずかしいのです!」ミュウの顔が真っ赤になった。
「え? ミュウちゃんだって師匠と二人きりがいいんでしょ?」リリアが意地悪そうに笑う。
「そ、そんなことないのです!」ミュウの尻尾が激しく揺れる。「わたくしにはそんな高望みは畏れ多いのです!」
言いながらも、ミュウの顔は真っ赤になり、猫耳が期待に震えていた。彼女の表情からは、言葉とは裏腹に俺に対する気持ちが滲み出ていた。
俺の頭には様々な思いが巡っていた。少女たちに囲まれたこの状況。王都での祭り。そしてエレノアの謎の過去。どれも気になるが、特にエレノアについては、何か深いものがあると感じていた。
リリアはもう魔法が使えないが、何か取り戻す方法はないのか? 俺はふと思った。星祭りで何か手がかりが得られるかもしれない。
「師匠?」リリアが俺の表情を覗き込んだ。「考え事?」
「ああ、少しな」俺は彼女の頭を軽くポンと叩いた。「お前の力を取り戻す方法を考えていたんだ」
リリアの目が大きく見開かれた。「ボクの……魔力を?」
「ああ。純潔を奪われたからといって、あきらめる必要はない。何か方法があるかもしれない」
「武流様……」ミュウが驚いたように言った。「失われた純潔は取り戻せないと言われているのです…」
「言われているだけだろう?」俺は自信ありげに言った。「人は簡単に諦め過ぎる。諦めなければ、道は開けるものだ」
それは『蒼光剣アポロナイト』に登場する主人公のセリフだった。
リリアの目に涙が浮かんだ。「師匠……ありがとう!」
彼女は俺の胸に飛び込んできた。その華奢な体を抱きしめながら、俺は決意を固めた。リリアの魔力を取り戻すこと。それが俺の野望への第一歩になるかもしれない。
この世界の謎を解き明かし、女神が授けてくれた力で、真に支配者となる。そのためには、魔法少女たちの力と協力が必要だ。彼女たちが俺に好意を抱いているなら、それも利用価値がある。
ハーレムなどどうでもいい。俺に必要なのは「力」だ。そして、この世界の支配者になるための情報。
エレノアの過去の傷。王族でありながらこの村に追いやられた理由。
今夜のお祭りで、何か手がかりが掴めるだろうか?
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