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(177)魔法少女狩り[6]〜調教されるミュウ〜

 その時、舞台袖から小さな影がひらりと舞い出た。それは手のひらほどの小さな妖精、ディブロットだった。蝙蝠のような翼を持つ小悪魔風の妖精は、クラリーチェの肩に舞い降りる。


「クラリーチェ様、あまり派手にやりすぎない方が」


 ディブロットが小声で囁いた。


「観客たちはまだ演出だと思い込んでいますが、あまり激しくすると気づかれる恐れが」


「分かっておる」


 クラリーチェが優雅に頷く。十七歳の美少女らしい仕草だったが、その瞳に宿る光は百年を超える支配者のものだった。漆黒のローブの下で、成長した身体のラインが妖艶に揺れている。


「だからこそ、この小猫には特別な『調教』を施してやるのじゃ。観客たちが喜ぶような、愛らしいショーをな」


 ディブロットがにやりと笑う。


「まったく、仕方がないお方ですねぇ。では、せいぜいお楽しみください」


 妖精が再び舞台袖に消えていくと、クラリーチェは改めてミュウに向き直った。


「さて、小猫よ。おぬしには特別な才能があるようじゃな」


 クラリーチェの言葉に、ミュウが困惑する。


「さ、才能……?」


「そうじゃ。わらわの眼力は確かじゃ。おぬし、痛めつけられることに快感を覚える体質であろう?」


 ミュウの顔が一気に赤くなった。図星を突かれた動揺が、彼女の白銀の猫耳をぴくぴくと震わせる。


「そ、そんなことは……」


「嘘をつくでない。その身体の反応、その瞳の奥の光……わらわが見逃すとでも思うか? 小猫よ、おぬしの本性は既に見抜いておる」


 クラリーチェの声に残酷な愉悦が混じる。


「わらわが指を弾くだけで、おぬしの身体は正直に反応するであろうな」


 クラリーチェが指を弾くと、ミュウの身体に軽い衝撃が走った。電気のような刺激が彼女の神経を駆け巡る。


「ひゃっ……」


 ミュウが思わず声を上げる。そして…その瞬間、彼女の身体に明らかな変化が現れた。息が荒くなり、頬が紅潮し、瞳が潤んでいる。


「ほらな。正直な身体じゃ。その愛らしい反応こそが、おぬしの本質なのよ」


 クラリーチェが楽しそうに笑う。


「わ、わたくしは……そんな……」


 ミュウが必死に否定しようとするが、彼女自身も自分の身体の反応に困惑していた。確かに、武流に叱られる時に感じていた快感と似たような刺激を、今クラリーチェから受けている。しかも、それが俺に見られているという状況が……


「あっ……」


 ミュウが小さく声を漏らした。武流に見られながらクラリーチェに攻撃されている。この屈辱的な状況が、予想以上に彼女を興奮させていることに気づいてしまったのだ。


「おやおや、気づいてしまったようじゃな」


 クラリーチェの瞳が悪戯っぽく輝く。


「師匠に見られながら、わらわに負ける屈辱――それが快感になっているのか? 随分と面白い性癖じゃな。さすがは変態の弟子よ」


「やっ……やめて……そんなこと言わないで……」


 ミュウが両手で顔を覆う。しかし、彼女の白銀の尻尾が興奮で小刻みに震えているのを、俺は見逃さなかった。


 舞台袖で状況を見守る魔法少女たちにも、動揺が広がっていた。


 星型オブジェに頭を突っ込んだままのステラが、くぐもった声で呻く。


「ミュウ先生……そんな……」


 本棚の隙間から下半身を突き出したアイリーンが、震え声で呟いた。


「理論的に考えても……こんな屈辱的な……」


 ルルも心配そうに見つめる。


「ミュウ先生……」


 リュウカ先生も、不安げに声を上げた。


「武流先生……助けて差し上げてください……」


 セシリアも心配する。


「ミュウさん……まさか……」


 そして七歳の姿のエレノアが叫んだ。


「ミュウ……しっかりしなさい……」


「恥ずかしがることはない。素直になるのじゃ」


 クラリーチェが手をかざすと、ミュウの身体に再び刺激が走った。今度はさっきより強烈で、彼女の全身を快感の波が駆け抜ける。


「んあっ……」


 ミュウの声が甘い響きを帯びる。彼女自身も驚いたような表情で、自分の口を押さえる。


「良い声じゃ。実に素晴らしい。では、その美しい声をもっと聞かせてもらおうかの」


 クラリーチェの声に残酷な満足感が込められていた。


「深淵魔法――猫化の呪い」


 突然、ミュウの身体に異変が起こった。人間の部分が薄れ、猫の本能が強くなっていく。理性よりも動物的な欲求が優先され始めた。


「にゃ……にゃーん」


 ミュウは突然、魔法を中断して床に四つん這いになった。そして、本物の猫のように喉を鳴らし始める。


「あ、あれ? わたくし、どうして……にゃーん」


 人間の言葉と猫の鳴き声が混じり合い、ミュウは混乱している。しかし、身体は勝手に猫の行動を取り続けた。


「そうじゃ、それでこそ可愛らしい小猫よ。その姿こそが、おぬしの本当の姿じゃ」


 クラリーチェが満足そうに頷く。


「恥ずかしがることはない。おぬしは生まれながらの下僕なのじゃからな」


「そんな……ミュウちゃんが……」


 リリアが絶望的な声で呟いた。主演の衣装を着たまま、震えながら状況を見つめている。


 クラリーチェが手を叩くと、小さな鈴の音が響いた。ミュウの瞳が鈴に釘付けになる。猫族の本能が完全に支配し、鈴を追いかけて舞台上を這い回る。


「にゃーん! にゃーん!」


 ミュウはスカートの裾を気にすることもなく四つん這いで鈴を追いかける。その度に緑のスカートが捲れ上がり、白い下着が観客席から丸見えになってしまう。それでも彼女は猫の本能に支配されて、鈴以外のことは考えられない状態だった。


 しかし、俺には分かっていた。彼女の身体が微妙に震えていることが。恥ずかしさと興奮が混じり合った複雑な反応を示していることが。


「おやおや、恥ずかしい格好を大勢の人に見られて、興奮しているのか? 実に面白い小猫じゃ」


 クラリーチェの指摘に、ミュウの鳴き声がより甘いものに変わった。


「にゃ……にゃあん……」


 声に明らかに快感が混じっている。猫の本能と人間の羞恥心、そして新たに目覚めた倒錯的な快感が、彼女の中で複雑に絡み合っていた。


「この変態猫め。恥知らずな本性を隠そうともせぬとは」


 クラリーチェの嘲笑が劇場に響く。


「では、本格的な調教を始めようか。おぬしのような下等な猫には、相応しい躾が必要じゃからな」


 クラリーチェが手をかざすと、舞台上に様々な道具が現れた。小さな輪っか、細い棒、そして、鞭のようなものまで。


「まずは基本的な芸から教えてやろう。下等な畜生らしく、そこの輪を潜るのじゃ」


 クラリーチェが輪っかを宙に浮かせる。ミュウは猫の本能に従って、四つん這いのまま輪っかに向かう。


「にゃーん」


 彼女が輪を潜ろうとした瞬間、輪っかが僅かに高く上がった。ミュウは背中を反らして必死に潜ろうとするが、その格好がより一層扇情的になってしまう。


 観客席から拍手と歓声が起こった。彼らは相変わらずこれを演出の一部だと思っているが、その無邪気な称賛が、ミュウの屈辱と興奮をさらに増していく。


「上手じゃ、上手じゃ。畜生にしては良くできた。では、ご褒美をやろう」


 クラリーチェが残酷な笑みを浮かべながら、細い鞭のようなものを取り出した。


「調教には、飴と鞭が必要じゃからな。おぬしのような変態には、この『ご褒美』の方が効果的であろう」


 鞭がミュウの後ろ側を軽く叩く。


 ペチン!


「にゃあん!」


 ミュウの声が跳ね上がった。軽い刺激のはずなのに、彼女の身体は過敏に反応している。猫化の呪いにより神経が敏感になっているのか、それとも……


「ほほう、随分と敏感な反応じゃな。やはり変態の素質があるということか」


 クラリーチェが楽しそうに鞭を振り回す。

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