表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
179/219

(167)幼女エレノア爆誕

 エレノアと俺の異変を最初に発見したのは、リハーサルを終えて控室に戻ってきたリリアだった。


「あれ? あの子たちは誰――」


 リリアの言葉が途中で止まった。俺とエレノアの顔をまじまじと見つめると、その瞳が次第に大きくなっていく。


「え? まさか――師匠? お姉様?」


 リリアの声に驚いて、他の魔法少女たちも続々と集まってきた。ミュウ、ステラ、アイリーン、ルル、リュウカ先生、セシリア――そして、ロザリンダとエレノアの三人の弟子たちも現れる。


 全員が俺とエレノアの姿を見て、一様に困惑した表情を浮かべた。


「武流先生……?」ステラが恐る恐る声をかけてくる。


「エレノア様……?」ケインも信じられないという表情だった。


「本当に……本当にお二人なのですか?」


 サイモンが眼鏡を光らせながら分析的に俺たちを観察する。確かに、いきなりこんな姿になったと言われても、簡単には信じられないだろう。


「俺だ」俺が子供のような高い声で答えた。「神代武流だ。何らかの魔法で、この姿に変えられてしまった」


「私もエレノア・フロストヘイヴンよ」エレノアも同じように答える。「信じられないかもしれないけれど、中身は変わっていないわ」


 しばらくの沈黙の後――。


「きゃああああ♪」


 ミュウが突然大きな声を上げて、俺に抱きついてきた。


「師匠、とても可愛いのです! まるで天使のような美少年なのです〜!」


 猫耳をピンと立てたミュウが、俺の頬をすりすりと撫でている。その感触は確かに気持ちいいのだが、俺の尊厳的にはかなり複雑だった。


「ちょっと、ミュウ――」


「わあ♪ 師匠の声も可愛い! 高い声でとても愛らしいのです〜!」


 ミュウが更に俺にしがみついてくる。普段なら俺の胸の高さにあった彼女の頭が、今では俺より高い位置にあった。身長差が完全に逆転してしまっている。


「ちょ、ちょっと待て――」


「きゃー! 信じられない!」


 リリアが目を丸くして両手を頬に当てた。


「師匠が……師匠が子供になってる! しかもこんなに可愛い!」


「う、うそでしょ……」


 ステラが口をぽかんと開けたまま、俺とエレノアを交互に見つめている。


「武流先生とエレノア様が、本当に七歳の子供に……」


「き、きゃあああ!」


 突然、ステラが感情を爆発させた。


「こんな可愛い武流先生なんて反則よ! エレノア様も天使みたい!」


 そして勢いよくエレノアを抱き上げた。


「エレノア様、こんなに小さくなっちゃって! まるでお人形さんみたい!」


「ちょっと、降ろしなさい!」エレノアが抗議するが、その高い声がかえって可愛らしさを増している。


「あわわわわ……」


 ケインが完全に放心状態で、幼いエレノアを見つめている。


「エレノア様が……七歳の……あまりの美しさに……言葉が……」


 そして突然、感激で涙を流し始めた。


「幼いエレノア様も、まるで天使のようです! この美しさは反則的です!」


「あ、あの……ケイン……」


「待て待て、落ち着けよケイン」


 ルークが慌ててケインを支えた。しかし、彼自身も動揺を隠せずにいる。


「エレノア様の幼少期のお姿……想像を絶する美しさです……」


「だ、だから、そんなに大げさに……」


 エレノアが照れているが、その表情もまた幼い顔立ちと相まって、言いようのない愛らしさを醸し出していた。


「お、落ち着いて分析しましょう」


 サイモンが眼鏡を光らせながらも、明らかに動揺している。


「理論的に考えても……いえ、これは理論を超越した可愛さです」


「うわあああ!」


 アイリーンが突然叫んで俺に抱きついてきた。


「武流先生の幼い頃のお姿、想像以上に愛らしくて……こんなに可愛い先生に教えてもらえるなんて、夢みたい!」


「アイリーン、落ち着け……」


「わああ! 師匠と同じくらいの大きさ!」


 ルルが大興奮で俺に駆け寄ってきた。


「ルル、師匠とお友達になれる〜♪ 一緒に遊べる〜♪」


「遊ぶって……」


「武流先生〜♪ 私も抱っこさせてくださいませ〜♪」


 リュウカ先生まで参戦してきた。豊満な胸で俺を包み込もうとするが、俺の小さな体では完全に埋もれてしまいそうになる。


「リュウカ先生、息ができない……」


「あ、すみません〜♪ でも、あまりにも可愛くて〜♪」


「み、みんな……」


 俺は子供の声で必死に状況をコントロールしようとしたが、その声がさらに愛らしさを増してしまう。


「こ、これは夢じゃないよね……」リリアが自分の頬をつねった。「本当に師匠とお姉様が子供になってる……」


「わたくしも……信じられないのです……」


 ミュウが俺を抱きながら、まだ現実を受け入れきれずにいる。


 セシリアも水晶の杖を持ちながら、俺とエレノアを観察していた。


「確かに、お二人ともとても愛らしいお姿ですね。まるで貴族の子弟のようです」


 ロザリンダも微笑みながら近づいてくる。


「武流さん、エレノアさん……本当にお二人なのですね。とても信じられませんが、その表情と話し方は確かにお二人のものです」


 俺は魔法少女たちに囲まれながら、複雑な気分になっていた。確かに彼女たちの反応は純粋で愛らしいものだったが、俺としてはもう少し事態の深刻さを理解してほしかった。


「みんな、気持ちはわかるが、今は喜んでいる場合じゃない」俺が声を上げようとしたが、子供の声では迫力に欠ける。


「そうよ」エレノアも同意した。「この異変の原因を突き止めて、元に戻る方法を見つけなければならないの」


 しかし、魔法少女たちの興奮はまだ続いていた。


「ちょっと、みんな――」


 俺が抗議しようとした時、ミュウが俺の両頬を手のひらで包み込んだ。


「師匠、この頬のぷにぷに感がたまらないのです〜!」


「ぷにぷにって……」


 俺は必死に抵抗しようとしたが、七歳の体では力が足りない。普段なら軽く避けられるような動きも、今の俺には困難だった。


 エレノアの方も似たような状況で、ステラとアイリーンに挟まれて身動きが取れずにいる。


「エレノア様、このまま私たちが守って差し上げます」


「そんな小さな体では、危険が多すぎます」


「私は自分で身を守ることができるわ」エレノアが抗議するが、その声もまた愛らしい。


 しばらくして、ようやく魔法少女たちの興奮が落ち着いた頃、俺は改めて状況を整理することができた。


「エレノア、お前にも同じ異変が起きたのか?」


「ええ」エレノアが頷く。「私もあなたと同じよ。突然激しい耳鳴りがして、それから意識を失った。気がついた時には、もうこの姿になっていたの」


「耳鳴り……やはり同じか」


 俺の予想通り、エレノアにも俺と同じ現象が起きていた。これは偶然ではない。明らかに何者かが、意図的に俺たちを狙ったのだ。


「他に異変を感じた者はいるか?」俺が周囲を見回して尋ねた。


 魔法少女たちは首を振る。


「わたくし、何も感じませんでした」


「私も同じです」


「理論的に考えても、師匠とエレノア様だけに起きた現象のようですね」


 アイリーンの分析通り、異変は俺とエレノアだけに起きていた。他の魔法少女たちに変化はない。


「それにしても」俺が自分の体を見下ろした。「力も弱くなってしまったようだな」


 俺は変身ブレイサーを見つめた。右腕に装着されているが、サイズが合わなくなって緩くなっている。


「試してみよう」


 俺は変身ブレイサーを掲げた。


「蒼光チェンジ!」


 いつもの決めポーズを取りながら、変身を試みる。しかし――何も起こらなかった。


 ブレイサーは光ることもなく、変身のエネルギーも発生しない。まるで普通の装飾品になってしまったかのようだった。


「ダメか……」


 俺は落胆した。アポロナイトに変身できなければ、戦闘力は大幅に低下してしまう。


「私も試してみるわ」


 エレノアも氷の魔法を使おうとしたが、やはり何も起こらない。魔力自体が大幅に減少してしまっているようだった。


「魔法も使えないのね……」


 エレノアの表情に不安の色が浮かんだ。


「問題は」俺が深刻な顔になった。「この状態で歌劇の本番に臨めるのかということだ」


 確かに、それは深刻な問題だった。エレノアは氷の女王役で出演予定だが、この七歳の姿では衣装がぶかぶかになってしまう。


「衣装の調整が必要ですね」セシリアが実務的に提案した。「幸い、まだ少し時間があります。急いで直せば――」


「いや、それ以前に」俺が手を上げた。「この異変の原因を突き止めて、元に戻らなければならない」


 俺は拳を握りしめた。小さな手だが、決意は変わらない。


「このまま放置すれば、他の魔法少女たちにも同じことが起こる可能性がある。それに、歌劇を成功させるためにも、俺たちは元の姿に戻る必要がある」


「そうね」エレノアも同意した。「でも、どうやって元に戻るの? 解呪の方法がわからなければ……」


 確かに、それが最大の問題だった。原因がわかっても、解決策がなければ意味がない。


 俺は決意を固めた。


「なんとしても、原因を突き止めて元に戻らなければならない。歌劇の成功のためにも――」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ