(160)再戦!アポロナイトVSクラリーチェ
俺とクラリーチェが対峙した瞬間、空気が震え始めた。
アポロナイトの超科学エネルギーと、クラリーチェの深淵魔法の力が激しくぶつかり合い、見えない衝撃波が辺り一帯に広がっていく。まだ戦いが始まってもいないというのに、両者の気迫だけで大地が軋み、空気が唸りを上げていた。
これは以前、王宮で俺とクラリーチェが初めて対峙した時を遥かに超える緊張感だった。あの時は王宮という閉鎖空間での激突だったが、今度は野外での全面戦争になる。制約も遠慮もない、純粋な力と力のぶつかり合いだ。
バチバチバチ!
青白い光と暗黒のエネルギーが火花を散らし、稲妻のような閃光が夜空を切り裂いた。その激しさは、かつて王宮を半壊させた時の比ではない。
「うわあ!」リリアが驚愕の声を上げながら後ずさりした。「すごいエネルギー!」
「わたくし、立っていられないのです!」ミュウが猫耳を伏せて地面にしがみついている。
「理論的に考えても、これは危険すぎます!」アイリーンが眼鏡を押さえながら後退した。
ステラ、ルル、リュウカ先生、セシリア――全員が俺たちから距離を取らざるを得なかった。まだ本格的な戦闘が始まってもいないのに、既にこの状況だった。
少し離れた場所では、エレノアが地に伏したまま、必死に俺たちの戦いを見つめていた。クラリーチェの深淵魔法による拘束の痛みで、彼女は太ももの間を手で押さえながら横たわっている。痛々しい姿だが、それでもその氷のような瞳は、俺の戦いを一瞬たりとも見逃すまいとしていた。
「来い、クラリーチェ!」
俺が蒼光剣を振り上げた瞬間、クラリーチェも深淵魔法を発動させた。
「深淵魔法・暗黒の嵐!」
彼女の周囲に巨大な暗黒のエネルギーが渦巻き、竜巻のような形状で俺に向かって襲いかかってきた。しかし、表面に星が瞬く漆黒のローブが風に煽られ、彼女の小さな身体が一瞬不安定になる。
「アポロ・クリムゾン・ブレイカー!」
俺も最大威力の技で応戦した。青白いエネルギーの奔流が、クラリーチェの暗黒の嵐と正面から激突する。
ドオオオオン!
凄まじい爆発が起こり、地面が大きく陥没した。衝撃波が四方八方に広がり、周囲の建物の窓ガラスが粉々に砕け散る。その破壊力は、かつて王宮を半壊させた時を遥かに上回っていた。
爆風の中で、クラリーチェの小さな身体が大きく後方に吹き飛ばされた。
「何!?」
七歳程度の幼女の姿をした彼女は、空中で身体をくるくると回転させながら無様に宙を舞う。必死に体勢を立て直そうとするが、小さな手足では空中制御が困難だった。地面に着地した時、彼女の床まで届く長い黒髪が乱れ、額に微かな汗が浮かんでいた。
「まさか......わらわがこんなに......」
クラリーチェの深い藍色の瞳に、初めて動揺の色が宿った。百年以上無敗を誇ってきた彼女にとって、これほど明確に劣勢に追い込まれるのは前代未聞だった。
「前回の戦いから俺も成長したんだ!」
俺は興奮で身体が震えた。クラリーチェの力は確かに強大だが、俺の力も彼女に負けていない。いや、むしろ俺の方が上回っている。
「まだじゃ!」クラリーチェが立ち上がろうとしたが、その時、彼女の額から一筋の汗が頬を伝って落ちた。
百年以上の支配者として君臨してきた彼女が、戦闘で汗をかくなど——あり得ないことだった。
「深淵魔法・ダークネス・ストーム!」
クラリーチェが無数の暗黒エネルギーを放った。しかし、その攻撃は前回よりも精度が落ちている。俺は蒼光剣で迎撃しながら、間合いを詰めていく。
「アポロ・ソニックウェイブ!」
超音波の刃がクラリーチェを直撃した。彼女の小さな身体が再び吹き飛ばされ、今度は地面を数回バウンドしながら転がっていく。
「きゃっ!」
思わず漏れた情けない声に、クラリーチェ自身が驚愕した。百年以上の威厳を誇ってきた彼女が、こんな無様な声を上げるなど——。
「あの......クラリーチェ様が......」リリアが息を呑んだ。
「信じられないのです......」ミュウも猫耳を震わせている。
「理論的に考えても、これは前代未聞です」アイリーンが眼鏡を光らせながら分析した。
魔法少女たちは、あの絶対的な支配者クラリーチェが、一方的に押され続けている光景に驚愕していた。これまで誰もが不可能だと思っていたことが、目の前で現実となっている。
立ち上がった時、彼女の漆黒のローブには土埃がついており、表面に瞬いていた星々の装飾もいくつか剥がれ落ちていた。そして、額だけでなく首筋にも汗の粒が浮かんでいる。
「くっ......!」
クラリーチェが歯を食いしばった。深い藍色の瞳が屈辱で歪む。スターフェリア最強の魔法姫が、異世界から来た男に圧倒されている現実を受け入れることができなかった。
「アポロ・プラズマビーム!」
俺の青白いエネルギーの奔流が、再びクラリーチェを襲った。彼女は咄嗟に深淵の盾を展開するが、俺の攻撃の威力に押し切られてしまう。
「うあああ!」
盾が粉砕され、クラリーチェの小さな身体が大きく後方に弾き飛ばされた。今度は建物の壁に激突し、石造りの壁に亀裂が走る。
「くっ......!」
壁に背中をもたれかけたクラリーチェは、苦しげに息を吐いた。七歳程度の幼女の姿で、ここまで追い込まれたのは初めてだった。しかし、彼女がエレノアに行った仕打ちを思えば、これは当然の報いだった。
彼女の漆黒のローブは大きく破れ、その下に着込んだ白い衣装が垣間見える。汗が滲み出た肌に、破れた布が張り付いていた。床まで届く美しい黒髪も乱れ、もはや威厳ある支配者の面影はない。
「わらわが......わらわが......こんな......!」
クラリーチェの声が震えている。汗と土埃で汚れた顔に、信じられないという表情が浮かんでいた。そして、彼女の全身から汗が噴き出し始める。恐怖と屈辱の汗が、小さな身体を覆っていく。
「おい、クラリーチェ」
俺が蒼光剣を構えながら近づいた。
「お前がエレノアにやったこと——今度は俺がお前にやり返してやる」
俺の言葉に、クラリーチェの瞳に恐怖の色が宿った。
「まさか......おぬしがわらわに......!」
「そうだ。お前の屈辱的な『おしおき』を、そっくりそのまま返してやる」
クラリーチェの顔が青ざめた。自分がエレノアに行った仕打ちを思い返し、それが自分に降りかかる恐怖に震え上がっている。汗が額から頬を伝い、首筋を流れて衣装を濡らしていく。
「深淵魔法・最終防御!」
クラリーチェが最後の力を振り絞って防御魔法を展開した。しかし、その魔法陣は震えており、明らかに集中力を欠いている。恐怖と屈辱で、冷静さを完全に失っていた。
「アポロ・フィニッシュ・ブレード!」
俺の必殺の一撃が、クラリーチェの防御を粉砕した。青白い光の軌跡が、彼女の最後の砦を切り裂いていく。
「そんな......あり得ない......!」
クラリーチェの絶叫が響いた。彼女の身体が宙に浮き上がり、完全に無防備な状態で空中に固定される。俺の超科学エネルギーが、彼女の動きを完全に封じていた。
空中で四つん這いのような格好にされたクラリーチェは、背後の小ぶりな双丘を高く突き出した屈辱的なポーズで固定された。破れたローブが風になびき、その下に着込んでいる衣装も、汗で肌に張り付いていた。
「や、やめろ......わらわは......わらわは......!」
威厳を保とうとする声も、もはや震えている。汗だくになった小さな身体が、俺のエネルギーによって空中で身動きを封じられていた。
「観念しろ。ここからが『おしおき返し』の本番だ」
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本日、冒頭の「第1章 異世界転移篇 (1)クビになった特撮ヒーロー、異世界転移」を、大幅に加筆しました。
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