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(159)エレノア、おしおきの果てに

 永遠の屈辱――。その言葉に、エレノアの顔に狼狽の色が広がった。本気でクラリーチェを怒らせたのかもしれない。


 クラリーチェは邪悪な魔力をまとった自らの杖を握りしめ、獲物を狙うように、その先端を正面からエレノアの胸へと向けた。


 心臓に向けて深淵魔法を放とうとしている! 鼓動が早鐘のように打っていることが、俺の目にも明らかだった。エレノアは恐怖で身体が強張る。


「ひっ……やめて……それだけは……」


 か細い声で懇願するが、クラリーチェはニヤリと笑うだけだ。杖の先端は、ゆっくりと、しかし確実に、エレノアに迫っていく。それは、彼女の聖域を、誇りを、魂を、一撃で突き崩そうとする、純粋な悪意の塊だった。エレノアは絶望に顔を歪ませ、涙を流す。心臓が今にも破裂しそうだった。


「ふん!」


 クラリーチェの杖は、狙いを定め、稲妻のように素早く、強烈に突き出される。


 空気を切り裂く鋭い音がした。


「……っ!」


 エレノアは、来るべき衝撃に備えて、ぎゅっと目を閉じた。それは肉体的な痛みを超越した、魂を砕かれる一撃になるはずだった。しかし、予想していた衝撃は、いつまで経っても訪れない。


「え……?」


 恐る恐る目を開けて振り向くと、クラリーチェの杖の先端は、体からわずか数ミリのところでピタリと止まっていた。


 理由はわからないが、助かった……。でも、どうして? クラリーチェなら命を奪うことなど、容易い。それどころか、その杖で身体中を責め尽くし、蹂躙してもおかしくないのに――。


 エレノアの思考を予想していたかのように、クラリーチェはニヤリとする。


「くっくっくっ。おぬし、何を期待しておった? まさかわらわが、この杖を身体にぶち込んで、おぬしを快楽の淵に突き落とすとでも?」


「なっ……!?」エレノアが真っ赤になる。


「わらわにそんな趣味はない。穢れなき幼女じゃぞ。第一、こうして清純な魔法少女たちも見守っているというのに、下世話な妄想をしおって……勘違いも甚だしいわ。わらわは真面目にやっているのじゃぞ。恥を知れ、この“おもらしド変態”め!」


 クラリーチェはエレノアの体に巻きついた蔦の一本を背後から掴み、ぐいっと引き上げた。


「……っ!」


 体を裂かれるような衝撃に、エレノアは仰け反り、太ももが再び大きく開く。クラリーチェはその蔦を、何度も引き上げた。そのたびに蔦が深くめり込み、情けなく仰け反り、カエル脚が開く。エレノアはクラリーチェの操り人形だった。


「はっはっはっ。良い眺めじゃ」


 クラリーチェは心底楽しんでいるかのように笑う。エレノアはさらに深い絶望に突き落とされた。心臓に杖を突き刺されるよりも、この弄ばれる現実のほうが、エレノアの精神を容赦なく破壊していく。


「さて、せっかくうら若き可憐な魔法姫が、こうして恥に耐えながら美しい身体を晒しておるのじゃ。最後にもう少しだけ付き合ってやろう」


 クラリーチェはエレノアの身体に手を伸ばすと、まるで女児がビー玉でも弾くかのように、細い指先で素肌を弾いた。


 ピシッ!


「ひゃうっ!」


 エレノアは、その衝撃に情けない声を上げた。


 クラリーチェは身体のあちこちを、無邪気に、何度も指先で弾き続けた。


 ピシッ!


「ひっ……!」


 ピシッ!


「う、あ……!」


 エレノアの頬を、一筋の涙が伝った。弾かれるたびに身体が震える。そのたびに心が悲鳴を上げる。もう、何をされても同じだ。この幼女の悪意に、自分の誇りはすでにボロボロに砕かれた。


 クラリーチェは最後に背後に回った。指先に魔力を込めると、「虚空結界」でもさんざん攻めた一点に狙いを定める。そこは蔦に覆われている。クラリーチェは、今までよりもさらに強く、そして深く、蔦の上から一点を強烈に弾いた。


 ビシィィ!!


「……っ!!」


 エレノアの身体が、弓のように大きく反り返り、大開脚した。まるで全身の神経がその一点に集約されたかのように、彼女は言葉にならない叫びを上げた。肉体的な痛みや屈辱だけでは説明できない、魂の根幹を揺さぶる一撃だった。無様な開脚ポーズが、ここに極まった。


「……くっ、はっ……」


 エレノアの全身の力が抜け落ち、絶望と虚無感だけが残る。意識が遠のきそうになりながらも、その屈辱だけは鮮明に脳裏に焼き付く。


 誇り高き魔法姫が、幼女の指一本で心をへし折られるとは……純潔を奪われる以上の屈辱と言っても過言ではない。


「以上でお開きじゃ。おぬしが望むなら、また相手になってやっても良いぞ。まあ、その意思があればの話じゃがな。はっはっはっ」


 クラリーチェは楽しげに笑い声を上げた。最強の幼女に逆らった末路が、この醜態だった。


 他の魔法少女たちは、その光景をただ言葉もなく見ている。あまりにも悲惨で、あまりにも屈辱的な光景に、誰もが声を失っていた。


 エレノアの全身を拘束し、大事なところを覆い隠す蔦は、まだ蛇のように僅かに蠢いている。中でも開脚した太ももの間を通る蔦は、まるでマイクロミニの下着のようにぴったり寄り添っていた。その蔦が微かに脈動するのに合わせて、両太ももが痙攣している。


 みんなに見られている。そのことを意識した瞬間、エレノアは小さく身じろぎをした。


 慌てて体を捩るが、そのせいで蔦がより深く食い込んでいく悪循環だった。


「どうじゃ、武流よ」クラリーチェが俺を振り返った。「おぬしの大切な弟子が、このような姿を晒しておるぞ。どのような気分じゃ?」


 俺の心に激しい怒りが込み上げてきた。エレノアが苦しんでいるのを見ているだけなど、俺には耐えられない。


 クラリーチェは再びエレノアを見た。「この破廉恥な小娘が……王族の血を引く高貴な魔法姫が、わらわのような幼い姿の前で無力じゃとはな。実に滑稽じゃ」


「武流……助けて……」エレノアが俺の名前を呼んだ。その声は絶望に満ちており、普段の彼女からは想像もできないほど弱々しかった。


「おや、助けを求めておるぞ」クラリーチェが嘲笑った。「だが、おぬしにも何もできまい。所詮、わらわの力の前では……」


「黙れ!」


 俺の怒りが爆発した。


「エレノアを苦しめる奴は……俺が許さん! アポロ・フィニッシュ・ブレード!」


 俺の蒼光剣が青白い光を放ちながら、エレノアを拘束する蔦に向かって一閃した。超科学の力が深淵魔法と激突し、凄まじい閃光が辺りを包む。


 蔦が切り裂かれ、エレノアの身体が自由になった。俺は素早く彼女を受け止め、安全な場所まで運んだ。


「お姉様!」


 リリアたちが駆け寄って、エレノアに上着やタオルをかける。


「武流……」エレノアが安堵の表情で俺を見上げた。


「もう大丈夫だ」俺が彼女に微笑みかけた。「後は俺に任せろ」


 俺はクラリーチェと対峙した。蒼光剣を構え、全身に闘志を漲らせている。


「ほほう」クラリーチェが面白そうに笑った。「ついに本気を出す気になったか、アポロナイトよ」


「お前を……必ず倒す!」


 俺とクラリーチェの最終決戦が、今まさに始まろうとしていた。

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