(157)深淵の蔦と鞭打ち地獄
空中に開脚状態で拘束されたエレノアの苦悶に満ちた表情を、クラリーチェは至福の笑みで眺めていた。自らもふわりと宙に浮き、苦しむエレノアの顔を間近で覗き込む。
「ほう、なかなか良い表情じゃな」楽しげにクラリーチェが言う。「誇り高き氷の魔法姫が、このような無様な姿を晒すとは……実に興味深い。さあ、この痛みに耐えられるかな?」
クラリーチェが杖を振った。
深淵魔法の蔦がエレノアの身体を強く締め付け、体内から魔力の流れを乱していく。それは、誇り高き彼女の精神を蝕む毒のようだった。蔦が絡みつくたびに、苦悶に顔が歪む。抗いがたい呪縛と屈辱が、彼女の意識を混濁させていった。
「ひっ……か、体が……!」
エレノアの声が掠れて震え、汗が噴き出す。蔦が体を締め付けるたびに、青銀色の華麗な衣装は汗で肌に張り付き、レオタードスタイルの薄い生地が、無防備な体の線とその肌を露わにする。風に揺れるシースルーのスカートが、太ももに無様に絡みついていた。
「やめ……ああ……」
エレノアの身体が震え、恐怖が全身を駆け巡る。全身の毛穴が開き、皮膚の奥からゾクリとした感覚が這い上がってくる。足を閉じようにも、強力な蔦はそれを許さない。
「どうじゃ、エレノアよ」クラリーチェが嘲笑を込めて言った。「幼女にいたぶられる屈辱の味はどうじゃ? その震えは、恐怖か、それとも絶望か?」
「こんな……こんなことって……ひっく……あぁ……」
誇り高い氷の魔法姫が、屈辱的な姿で空中に晒されている。その美しい顔は苦痛と屈辱で歪み、普段の冷静さは完全に失われていた。汗と涙で濡れた顔に、月明かりが反射し、弱々しい光沢を放っている。胸元の青い石のペンダントが、魔力の源を侵食されて、かすかに輝きを失っていく。
「わらわのような可愛い幼女に支配されるのは、末代まで語り継がれる恥じゃろうな」クラリーチェがさらに煽った。「王族としてのプライドが音を立てて崩れていく感覚はどうじゃ?」
「だ、黙りなさい!」エレノアはクラリーチェを睨みつける。「あなたのような生意気な幼女は……私が全身ひん剥いて……この手で……この手で、お仕置きしてやるわ……!」
強気のエレノアだったが、もはや言葉のみで、実際に抵抗する力はなかった。深淵魔法の痺れが彼女の意識を朦朧とさせている。
「下劣な脅し文句じゃな。元王族たる者の言葉とは思えん」クラリーチェがニヤリと笑う。「まだそんな生意気な口を叩けるとは……どんな仕打ちを受けても良いという覚悟か。ならば、わらわも容赦はせんぞ」
「お姉様……!」リリアが涙を流しながら叫んだ。「お姉様を離して!」
リリアが魔力を込めて蔦を切り裂こうとしたが、深淵魔法の力によって弾き返されてしまった。
「エレノア様……!」ミュウも必死に風の魔法で蔦を吹き飛ばそうとしたが、やはり効果はない。
「私も……!」ステラが風の刃を放ったが、深淵魔法の前では無力だった。
「理論的に考えて……」アイリーンが複属性魔法で攻撃を仕掛けたが、すべて跳ね返されてしまった。
「ルルも頑張る……!」ルルが土の魔法で地面から攻撃したが、クラリーチェには届かない。
「わたくしの雷で……!」リュウカ先生が電撃を放ったが、深淵魔法の結界に阻まれた。
「水晶の力で……!」セシリアも魔法を使ったが、やはり無効だった。
魔法少女たち全員が必死にエレノアを救おうとしたが、クラリーチェの深淵魔法の前では誰も無力だった。
「無駄じゃ」クラリーチェが冷笑した。「おぬしらの魔法など、わらわの前では赤子のおままごとに等しい。まあ、その愛らしい無駄骨は見ていて飽きぬがな」
エレノアの状態はさらに悪化していた。蔦が締めつける力が強くなり、彼女は苦痛に呻いている。
さらに、地面から現れた別の蔦が、鞭のようにしなやかに振るわれ、彼女を鋭く打った。
ピシッ!! ピシッ!!
「ひっ……いやぁ!」
空気を裂くような鋭い音が連続して響き渡る。そのたびにエレノアの身体がびくりと跳ね、喉から短い悲鳴が漏れた。
「幼女にお仕置きされる気分はどうじゃ?」
クラリーチェの問いかけが、エレノアの精神をさらに追い詰める。蔦は容赦なく何度も、何度も、彼女を叩き続けた。鋭い痛みが熱となって広がり、誇り高い氷の魔法姫のプライドを粉々に砕いていく。
耐え難い打撃が連続する中、エレノアはもはや悲鳴を上げることもできず、ただ小さく嗚咽を漏らすことしかできなかった。
「ひっ……ひっ……」
そして、エレノアの太ももに絡みついた蔦が、さらに左右に広がり、両膝をぐいっと上げさせた。平泳ぎのような足、いわゆるカエル脚だった。その状態で、胴体に巻き付いた蔦が、身体に深く、深く、食い込んでいく。
「ん……!」
蔦を振り解こうと両足をばたつかせるが、もがけばもがくほど、蔦は深くめり込んでいく。蔦はまるで獲物を弄ぶ蛇のように、エレノアの身体をゆっくりと締め付けていった。それに伴い、エレノアは苦悶し、上半身が、ぐっ、ぐっ、と反り返っていく。両腕を後ろで拘束されたまま、下半身だけ平泳ぎをしているようだった。
「ハァ……ハァ……」
全身を縛る蔦の締め付けが、彼女の理性と矜持を奪っていった。蔦の動きに合わせてエレノアの身体は小刻みに震え、制御できない恐怖が全身に広がっていく。
「あぁ……やめ……て……」
体を締め付ける蔦の動きは、やがて一定のリズムを刻み始めた。エレノアは口をパクパクさせながら、喉から悲鳴ともつかない、か細い声を漏らした。
「んんっ……あぁ……ひっ……」
激しさを増す蔦の締め付けに、エレノアの顔は歪み、悔し涙がとめどなく溢れ出す。汗で濡れた肌は、よりいっそう弱々しい光沢を放ち、魔法少女の衣装の薄い生地が肌に吸い付くように透けていく。
やがて、その動きが止まると、エレノアの全身を締め付ける蔦が、ふっと緩んだ。
「……はっ……はぁ……」
エレノアは安堵の息を吐いた。拘束から解放されるわけではないが、せめてこの地獄の責め苦から解放されるのだと、わずかな希望を抱いた。
だが、束の間の希望だった。次の瞬間、クラリーチェが杖を振るった。
深淵魔法を帯びた蔦が、再び意思を持ったかのようにエレノアの全身を強烈に締め付けた。それは、これまでを上回る力で、エレノアはカエル脚ポーズで上半身を高く反らした。
「ひゃあああぁっ!」
エレノアの喉から悲鳴がほとばしる。痛みのあまり全身は弛緩し、腰がわずかに震え動いていた。その時間が、永遠にも感じられるほど長く続いた。
クラリーチェはエレノアの苦痛に満ちた顔を覗き込む。
「どうじゃ? わらわの深淵魔法のお味は? 前回は虚空結界の球体の中で遊んでやったが、この責め苦もなかなかじゃろ? その身体に刻まれた屈辱を、一生忘れぬがよい」