表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
159/219

(151)無限ループの果てに

「おまえが信じているものを、もう一度見直してみろ。真実は、おまえが最も信頼している場所に隠されているかもしれない」


 アリエルの言葉が、俺の心に深く刻まれていた。俺が最も信頼している場所――それは魔法少女たちの中にあるのかもしれない。


 だとすれば、彼女たちと密接に行動することで、真実が見えてくるはずだ。


 六度目のループが続いていた。


「エレノア」俺が真剣な表情で彼女に向き合った。「今日一日、俺と一緒にいてくれ。一時も離れずに」


「え? どうして急に......」


「頼む。理由は後で説明する」


 エレノアは困惑したが、俺の真剣さを感じ取って頷いてくれた。


「わかったわ。でも、何があったの?」


 エレノアは普段のような反発を見せずに素直に同意した。いつもなら「なぜ私があなたの指示に従わなければならないの?」と皮肉の一つでも言いそうなものだが、今日は従順だ。俺の顔を見て、尋常ではないことが起きていると察したのかもしれない。


 その後、エレノアの三人の弟子たちがやってきた。


「エレノア様をお守りするのは私たちの役目です!」ケインが筋肉質な腕を組んで宣言した。


「美しきエレノア様のお側で、私たちも武流様をお守りいたします」ルークも優雅に膝をついた。


「戦術的に考えても、護衛は多い方が有利です」サイモンが眼鏡を光らせながら分析した。


 しかし、エレノアは優しく断った。


「ありがとう。でも今日は武流と二人だけで行動したいの。あなたたちは他のみんなと一緒にいてくれる?」


 三人は困惑したが、エレノアの丁寧な頼みに逆らえず、渋々引き下がった。


 俺たちは朝から夜まで、一時も離れずに行動した。稽古の時も、食事の時も、エレノアは常に俺の側にいた。氷の魔法で周囲を警戒し、完璧な護衛を務めてくれる。


 夜が更けても、エレノアは俺の部屋で警戒を続けていた。


「武流、あなた何を恐れているの?」


「もうすぐわかる」


 深夜になった時、エレノアが立ち上がった。


「少し廊下の様子を見てくるわ。念のために」


「一人で大丈夫か?」


「心配いらないわ。すぐに戻る」


 エレノアが部屋を出て行った。その瞬間――部屋の壁を突き破って、深淵魔法の暗黒エネルギーが俺に向かって飛んできた。


 俺は背後から何者かに攻撃され、意識を失った。


 気がつくと、十字の柱に縛りつけられていた。


「武流! ごめんなさい!」エレノアが涙を流しながら叫んでいる。「私が廊下に出た隙に......! もっとしっかり守っていれば......!」


 俺は処刑され、また朝に戻った。


 七度目のループ。今度はリリアと一日中行動を共にすることにした。


「師匠、何かあったの? すごく心配そうだよ」


「大丈夫だ。君がいてくれれば安心だ」


 リリアは変身できない身でありながら、持ち前の運動神経と勘の良さで俺を守ろうとしてくれた。しかし、結果は同じだった。深夜の攻撃を防ぐことはできず、俺は再び処刑台に立つことになった。


「師匠......ボクが弱いから......」リリアが自分を責めながら泣いていた。


 八度目はミュウ、九度目はステラ、十度目はアイリーン――。


 俺は魔法少女たちと一人ずつ行動を共にし、彼女たちの護衛を受けた。しかし、どんなに警戒していても、どんなに完璧な防御を築いても、結果は変わらなかった。


 深夜になると必ず攻撃を受け、俺は処刑されてしまう。


 そして、エレノア同様、誰にも怪しいところは見つからなかった。


 ミュウが猫族の優れた聴覚で周囲を警戒している時も、ステラが風の魔法で空気の流れを監視している時も、アイリーンが魔法的な結界を張っている時も――誰もが真剣に俺を守ろうとしてくれていた。


 彼女たちの忠誠心に嘘はない。それなのに、なぜ俺を守ることができないのか?


 十一度目のループでは、ルルと行動を共にした。


「ルル、師匠を絶対に守るからね〜♪」


 小柄な体で懸命に俺を守ろうとする彼女の姿に、俺の心は痛んだ。しかし、結果は同じ。深夜の攻撃で俺は倒れ、処刑台に送られた。


 十二度目はリュウカ先生、十三度目はセシリア――。


 ループを重ねるたびに、俺は魔法少女たちを疑うことの罪悪感に苛まれていた。彼女たちは皆、心から俺を慕ってくれている。その純粋な想いを疑うなど、あってはならないことだった。


 しかし、アリエルの言葉が頭から離れない。「おまえが最も信頼している場所に隠されている」――一体、何が隠されているというのか?


 十四度目のループでは、ロザリンダと行動を共にした。


「武流さん、一体何が起きているのですか?」


「説明できない。でも、君を信じている」


 ロザリンダは魔力を失った身でありながら、古文書の知識と豊富な経験で俺をサポートしてくれた。しかし、やはり深夜の攻撃は防げなかった。


 十五度目、十六度目、十七度目――。


 エレノアの三人の弟子たちとも行動を共にしたが、結果は変わらなかった。ケイン、ルーク、サイモン――彼らも真剣に俺を守ろうとしてくれていた。


 もう何度目のループなのか、数えることすら困難になっていた。


 俺の心は疲れ果てていた。何度同じことを繰り返しても、答えは見つからない。仲間たちの中に裏切り者はいない。それは確信していた。


 だとすれば、俺は一体何を見落としているのか?


 そして、ついに――。


 数え切れないループの果てに、俺は再び十字の柱に縛りつけられていた。魔法少女たちの悲鳴が響く中、クラリーチェが俺の前に立っている。


「またダメだった......」


 俺は力なく呟いた。もう何度目の敗北なのか、覚えていない。希望も、闘志も、すべてが失われつつあった。


 その時、クラリーチェが俺に歩み寄ってきた。


「さあ、何か言い残すことはあるか?」


 いつもの台詞だった。しかし、今回は様子が違った。クラリーチェが俺のすぐ近くまで来て、他の誰にも聞こえないような小声で言った。


「もしや……おぬし......タイムループしておるな?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ