(14)羞恥刑、氷上で大股開きの女王
怒ったエレノアの魔力によって生まれた巨大なスケートリンク。
俺はわざとらしく氷の上で足を滑らせ、「おっと」と言いながらも完璧なバランスをキープした。スーツアクターの基本スキルだ。『アポロナイト』の撮影でも、氷の惑星での戦闘シーンがあったな。あの時は、スタッフが「神代さん、戦闘中も氷の上だとわかるように演じてください」と注文していたっけ。
「エレノア、せっかく氷を生み出したんだ。ここで戦ってみないか?」
俺は挑発するような笑みを浮かべた。観客である村人に見せるショーとして、状況をより面白くするためだ。
「望むところよ! 覚悟しなさい!」
怒りに燃えるエレノアは勢いよく踏み出したが、すぐにバランスを崩して転びそうになった。なんとか杖にすがって体勢を立て直す。彼女の足取りは予想以上に不安定だった。
「やれやれ。氷属性の魔法使いなのに、氷の上を歩けないとは」
俺の言葉に、村人からくすくすという声が漏れる。彼女に気づかれぬよう、手で口を覆い笑いを堪えている者も多い。エレノアの顔が怒りと恥ずかしさで真っ赤になった。
「黙りなさい!」
彼女は杖を構え、氷の矢を放とうとした。だがバランスが取れず、勢いよく足が滑って開いてしまう。両足が左右に広がり、彼女はペタンと氷上に大股開きの姿勢で座り込んでしまった。
「あぁっ……!」
まるで股関節が外れたかのような、みっともない格好だ。氷の冷たさが肌を突き刺し、エレノアは思わず小さな悲鳴を上げた。特に敏感な箇所が下着越しに氷に密着している。顔を真っ赤にして慌てて立ち上がろうとするが、氷の上では簡単に立てない。
「なかなかの柔軟性だな。股関節の可動域が広いのはアクションの基本として良いことだ。その素質は活かすべきだよ」
「なんですって!」
エレノアは怒りと恥辱に顔を真っ赤にしながら、やっとのことで立ち上がった。だが、股関節を無理に広げたせいで、まだ足は僅かにだらしなく開き、太腿がぴくぴく痙攣している。下着越しに氷に触れた箇所の冷たさがまだ身体に残っているらしく、人目も憚らず、指先で触れて吐息を漏らした。
「ん……っ」
「何度も言ってるが、お前は体幹が弱い。腹筋と背筋をもっと鍛えないと、どんな状況でも安定した動きはできないぞ」
俺は氷の上で軽く回転し、スケーターのような動きを見せた。二十年の経験と若返った体が、ここで活きている。まるでダンスを踊るように、軽やかに氷上を滑る。
「ほらほら、こっちだ!」
氷上を滑走しながら挑発すると、エレノアは怒りのあまり、何度も杖を振り回した。次々と放たれる氷の矢が、広場のあちこちに突き刺さる。だが一本も俺には届かない。
「氷の上での戦闘は、足の動かし方がポイントだ。重心をもっと下げて、膝を柔らかく使うんだ。こんなふうに」
俺はさらに大きく滑り、360度回転しながら移動するデモンストレーションを行った。
エレノアは杖で体を支え、何とか俺に追いつこうと氷上を進み始めた。しかし、彼女は突然つるっと足を滑らせ、その身体が宙に浮いた。悲鳴を上げる暇もなく、彼女の体は氷の上へと叩きつけられる。派手に尻餅をつき、氷の表面にビシッと放射状のヒビが入った。
「……っ!!」
その衝撃で、彼女のスカートは大きく捲れ上がり、V字に開脚した足の間に白い下着が露わになる。尻は氷に叩きつけられた衝撃で、僅かに氷の表面にめり込んでいる。
「い……っ、つぅ……!」
エレノアは痛みに耐えながら、氷にめり込んだ体を無理やり引き抜くと、情けない四つん這いの姿勢になった。震える手で、スカートが捲れ上がったままの痛む部位をさする。村人たちの視線が突き刺さる。俺の視線に気付き、エレノアは我に返ってスカートを直した。
「見たでしょう!?」
「いや、見てない」と俺は視線を外した。「ただ、昨日も言ったけど、アクションシーンなら『見せパン』を履くべきだな」
「……っ!」
村人たちからは、エレノアに聞こえないよう抑えた笑い声と囁きが広がっている。魔法姫の威厳は完全に失われつつあった。
「もう、許さない……!」
エレノアは立ち上がると、今度は杖を持って直接攻撃しようと駆け寄ってきた。彼女の杖さばきは力任せで、フォームも悪い。氷の上で更に不安定さが増している。
「その杖の使い方も良くないな。握り方からして力が入りすぎてる」
俺は彼女の攻撃を軽々と避けながら、アドバイスを続ける。
「例えばこうだ。杖の重心を意識して、手首のスナップを効かせるんだ。力任せじゃなくて、体全体の回転を使って」
彼女の次の攻撃が来たとき、俺は腕をひねって杖を弾き、その流れで杖を手元に引き寄せた。あっという間に、エレノアの武器は俺の手に移っていた。
「ちょっと借りるよ」
「返しなさい! それは私の……」
彼女の声を背に、俺は杖を使った演舞を始めた。氷の上を滑りながら、杖を回転させ、高く投げ上げてキャッチする。そしてフィニッシュでは、杖を地面に突き立て、その勢いで体を回転させた。
ミュウが目を見開く。
村人たちの間から感嘆の声が上がる。
「すごい……」
杖を使ったショーが終わると、広場には拍手が起こった。その中にはちらほら子供たちの歓声も混じっている。
「返して!」
エレノアが怒りの形相で駆け寄り、杖を奪い返そうとする。が、氷の上では彼女の動きが緩慢で、俺は軽々と回避できた。
「ほら、滑りやすい状況だと足の運びが全然違うだろ? もっと短いステップで、重心を安定させて」
俺は杖の先端で、彼女の体のあちこちをトントンと軽く叩く。
「腕の上げ方が高すぎる」と言いながら、彼女の右肘に杖を当てる。「肘関節はもっと内側に締める。三頭筋に力を集中させて、肩甲骨から力を伝えるイメージだ」
「くっ!」
「足の開き方が不十分」今度は彼女の内ももの付け根をトンと叩く。「これじゃ重心移動ができない。内転筋を使って、骨盤の安定を図りながら立つんだ。古武術でいう丹田を意識するとイメージしやすい」
「あなたねぇ……!」
「腰の入れ方が弱い」と言って、彼女の腰椎あたりをポンと軽く叩く。「ここが力の源だ。体幹の筋肉群、特に腹横筋と多裂筋をしっかり使わないと安定した動きはできない。特撮の現場じゃ、ここを鍛えずに怪我した新人をたくさん見てきた」
「やめなさい!」
彼女は腕や足、腰を杖で触れられるたびに顔を赤くする。まるで服の上からくすぐられているかのように体がくねり、そして氷の上ということもあり、またもバランスを崩して転びそうになる。
「おっと、危ない」
俺は咄嗟に杖を彼女の脚の間に差し込んだ。杖の先端が、エレノアの太ももの内側に押し当てられ、転倒は回避された。だが、エレノアは悲鳴を上げ、まるで熱いもので焼かれたかのように体を硬直させた。
「や、やめ……っ!」
「動くとバランスを崩すぞ」
俺は杖をさらにじりじりと押し込み、太ももの間に食い込ませる。
「はぁぁん!」
氷の冷たさとは違う、得体のしれない感触がエレノアの体の中心を這い上がっていく。村人たちの視線が、一気に下半身に注がれる。
「ほら、姿勢が崩れるだろ? 武器を扱うなら、まず体幹だ。土台がないと、どんな技術も活きてこない」
「この変態!」
エレノアは怒りと恥ずかしさで顔を真っ赤にして、太腿の間の杖を掴んでいる。
「いやいや、ただ転ばないように支えているだけだ。すまない」
俺はエレノアの脚の間に差し込んだ杖を、ゆっくりと引き抜こうとした。その時、杖の先端にある氷の装飾がひっかかり、敏感な部分を刺激した。
「ぁあ……っ、やめっ……!」
エレノアの口から、堪えきれないような、か細い声が漏れた。
「おっと、すまない」
俺は杖を一度戻し、再び引き抜こうとする。その度に装飾が引っかかり、エレノアが声を漏らす。
「っ……ぁんっ!」
エレノアの顔は羞恥と屈辱に歪んでいる。俺は力任せに一気に杖を引き抜いた。
「ひあぁぁぁぁ!」
エレノアが下腹部を押さえて盛大にのけぞった。同時に、俺の手には、ビリッと何かが裂ける感触があった。
これは、もしや……。
「……ああっ!?」
エレノアも異変に気付き、顔面蒼白になって尻に手をやる。
俺が勢いよく杖を引き抜いたせいで、エレノアの腰回りを覆うシースルーのスカートも、その下のミニスカートも、背後の部分に裂け目ができてしまっていた。
そのスリッドの間から下着が見えているのだろう。しかも、下着が半ばずり落ちて半ケツ状態になっているらしく、背後から見守る村の男たちが息を呑んでいる。エレノアは慌てて下着をずり上げ、半ケツを隠した。
「あなた……!」
エレノアは怒りの形相で俺を睨む。
俺は紳士的に彼女に向かって杖を差し出す。
「わざとじゃないんだ。けどレディに失礼だったね。本当にすまない。これは返すよ」
彼女は憤慨した表情のまま、震える手で杖を奪い取った。村人たちの視線は、もはや完全に俺に集まっている。彼らの目には驚きと共に、尊敬の色も浮かんでいた。
中でも男性たちは、今まで見たことのない光景に、口を開けたまま固まっている。エレノアのような高慢な魔法姫が、一介の男に手玉に取られるなんて。そして、その男は彼女に対してすら紳士的な態度を崩さない。
俺はかつての朝倉明日香とのやり取りで学んだことを思い出していた。怒りにまかせて彼女を責めたところで何も解決しない。むしろ冷静に対応し、毅然とした態度を取ることが大切だった。
「さて、エレノア。この状況をどう打開する?」
俺は腕を組み、彼女を見つめた。彼女の目には、まだ怒りの炎が燃えている。杖を構え、再び氷の魔法を放とうとしている。
「あなたは忘れているようね? 自分が処刑される立場だってことを……! ありったけの力で、あなたを処刑する!」
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