(125)リュウカ先生とセシリアの因縁
俺とエレノアは、ルルの両親とセシリアと一緒に温泉宿へと戻った。
セシリアは服に身を包んでいる。先ほどの戦いでの屈辱は相当堪えたらしく、表情は暗く、時折俺を恨めしそうに見つめていた。
温泉宿の玄関に到着すると、豪華な大理石の階段の上から、聞き慣れた甘い声が響いた。
「武流先生〜♪ お帰りなさいまし〜♪」
リュウカ先生が豊満な胸を揺らしながら、嬉しそうに駆け寄ってくる。彼女の後ろには、リリア、ミュウ、ルル、ステラ、アイリーンをはじめとする魔法少女たちが続いていた。
「武流先生〜♪ どちらに行かれていたのですか? 心配して――」
リュウカ先生の声が、セシリアの姿を見た瞬間に止まった。
彼女の目が大きく見開かれ、まるで幽霊でも見たかのような表情になる。
「ま、まさか......セシリア・クリスタリア!?」
セシリアも、リュウカ先生を見て愕然とした。
「リュウカ・サンダーフィスト......!?」
二人が同時に指を差し合って叫んだ。
「あなたがなぜここに!?」
「こっちのセリフよ!」
俺とエレノア、そして魔法少女たちは、この予想外の展開に困惑していた。
「え? リュウカ先生、セシリア様をご存知なんですか?」アイリーンが眼鏡を光らせながら尋ねた。
「ご存知どころか」リュウカ先生の表情が急に険しくなった。「スターマジカルアカデミアの同期生よ。それも、最も仲の悪い」
「同期生!?」リリアが驚愕した。
「わたくし、初めて聞くのです!」ミュウも猫耳をピクピクと動かしながら驚いている。
セシリアも負けじと言い返した。
「リュウカも相変わらずね。その下品な服装、学生時代から全然変わってない」
「下品ですって!?」リュウカ先生の周りに電撃が走った。「あなたこそ、相変わらず高飛車で偉そうじゃない!」
「高飛車!? 私はただ冷静で理知的なだけよ!」
「冷静!? 氷みたいに冷たくて、人の心がわからないくせに!」
二人が互いを睨み合いながら口論を始める。しかし、不思議なことに、その口調には敵意だけでなく、懐かしさのようなものも混じっていた。
「それで、リュウカは今何してるの?」セシリアが腕を組んで尋ねた。「まさか、まだあの馬鹿みたいな『愛の雷』なんて言ってるんじゃないでしょうね」
「愛の雷は素晴らしい技術よ」リュウカ先生が胸を張った。「あなたには理解できないでしょうけど。私は今、スターマジカルアカデミアで魔法戦闘術の教師をしているのよ」
「教師!? あなたが!?」セシリアが信じられないという表情になった。「あの問題児のリュウカが、まさか教師になるなんて......」
「問題児って何よ」リュウカ先生が怒り始めた。「私は真面目な教師よ。生徒たちを愛の雷で......」
「やっぱり電撃で虐めてるじゃない」セシリアが呆れたように言った。「可哀想な生徒たち......」
生徒たちも、この会話を聞いて複雑な表情を見せていた。
「確かに、リュウカ先生の電撃は厳しいです......」ステラが小声で呟いた。
「理論的に考えて、教育的指導の範疇を超えています」アイリーンも眼鏡を曇らせている。
「それで、セシリアは何してるの?」リュウカ先生が今度は質問した。
「私は、この町の行政を担当しているわ」セシリアが誇らしげに答えた。「祖父に代わって、町のリーダーをしているのよ」
「町のリーダー!?」リュウカ先生が驚いた。「あの協調性ゼロのセシリアが!?」
「協調性ゼロって何よ! 私は効率的に町を運営しているだけよ!」
「効率的って......」リュウカ先生が疑わしそうに眉をひそめた。「まさか、町の人たちを威圧して支配してるんじゃないでしょうね」
セシリアの表情が僅かに動揺した。実際、先ほどまでの自分の行為を指摘されたからだ。
「そ、そんなことは......」
「やっぱり」リュウカ先生が勝ち誇ったように笑った。「あなたって、昔から人の上に立ちたがるくせに、人の気持ちは全然わからないのよね」
「あなたに言われたくないわ! 感情の起伏が激しすぎて、いつも周りを振り回してるくせに!」
その時、セシリアが何気なく呟いた。
「まあ、さっきアポロナイトと戦って負けちゃったから、今は少し反省してるけど......」
瞬間、リュウカ先生の表情が凍りついた。
「......え? 今、何て言った?」
「だから、アポロナイトと戦って――」
「アポロナイト様と戦った!?」リュウカ先生の声が一瞬で怒りに満ちた。「あなた、武流先生と戦ったっていうの!?」
「そうよ。なんで武流先生〜♪ って呼んでるの? まさか......」
セシリアがリュウカ先生の正体に気づき始めた時、リュウカ先生の怒りが爆発した。
「私の武流先生〜♪ に何をしたのよ!」
リュウカ先生の全身に電撃が走る。彼女の髪が逆立ち、瞳が怒りで光った。
「どうして戦ったのよ! 理由を言いなさい!」
「え、えっと......」セシリアが慌てた。「歌劇の準備期間のことで意見が合わなくて......」
「準備期間?」リュウカ先生がさらに険しい表情になった。「詳しく説明しなさい!」
セシリアは仕方なく、歌劇をやってほしいと依頼したこと、武流が準備期間が足りないと主張したこと、最初は明日やってほしいと言って断られたことを説明した。
それを聞いたリュウカ先生の怒りは、もはや制御不能だった。
「明日!? 明日やれって言ったの!?」
リュウカ先生の周りに雷雲が発生し始める。
「あなた、正気なの!? 歌劇がどれだけ大変か知ってるの!?」
「で、でも町の活性化のためには、1日でも早く――」
「町の活性化より武流先生〜♪ の方が大事に決まってるでしょう!」リュウカ先生が絶叫した。「無茶な要求をして、武流先生〜♪ を困らせるなんて許せない!」
「ちょっと待ちなさいよ、リュウカ」セシリアが反論した。「あなたの武流先生って呼び方、明らかに変よ。まさか......」
「そうよ!」リュウカ先生が堂々と宣言した。「武流先生〜♪ は私の愛する人よ! その武流先生〜♪ を傷つけるなんて、絶対に許さない!」
「愛する人って......あのアポロナイトが?」セシリアが信じられないという表情になった。
「そうよ! 文句ある!?」
「いえ、別に文句はないけど......。とにかく、私はアポロナイトにボロ負けだったわ......」
「当然よ! 武流先生〜♪ が負けるはずないもの!」リュウカ先生が誇らしげに言った。「でも、戦わせること自体が問題なのよ! 武流先生〜♪ がケガでもしたらどうするの!?」
「ケガはしてないと思うけど......」
「思うけどじゃない!」リュウカ先生がさらに怒った。「武流先生〜♪ の体に傷一つつけたら、私が許さないから!」
リュウカ先生の怒りは止まらない。
「それに、無茶な要求をして武流先生〜♪ を困らせるなんて、教師として失格よ! 武流先生〜♪ がどれだけ生徒思いで、責任感が強いか知ってるの!?」
「知らないわよ、そんなこと」セシリアが冷ややかに答えた。
「知らないって......あなた最低ね!」リュウカ先生が絶叫した。「武流先生〜♪ は、生徒たちのために毎日一生懸命頑張ってるのよ! 歌劇だって、生徒たちに新しい文化を教えるために始めたのよ!」
「そんなことまで知らないわよ」
「知らないまま無茶な要求をしたの!?」リュウカ先生の怒りが頂点に達した。「あなたって、昔から自分勝手なのよね! 人の都合なんて考えないで!」
2人の不毛な喧嘩を見て、俺は苦笑するしかなかった。
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