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(117)ルル家の大騒動、疑惑の嵐

 俺は急に思い出した。


「そういえば――」


 俺はルルの両親を見つめながら言った。


「温泉に着いた時から、お二人は俺のことを妙に注視していましたね。あの時から監視が始まっていたんですか?」


 確かに、到着した瞬間から、ルルの両親は俺を見る目が異様だった。「噂に聞いていた武流先生......」「お美しい......いえ、立派な方ですね」などと、意味深な発言を繰り返していた。


 ルルの両親は、ますます顔を青くして冷や汗を流し始めた。


「あ、あの......それは......」父親がしどろもどろになる。


「まあまあ、落ち着いて」俺は手を上げて制止しようとした。「とりあえず、お話を聞かせてもらえませんか?」


 しかし、エレノアは俺の制止を無視して迫った。


「説明してください! なぜ武流を監視する必要があったんです? 何を隠しているんですか?」


「わたくしたちは、ただの客として滞在しているだけなのです!」ミュウも猫耳を立てて詰問する。「それなのに、なぜこそこそと隠れて監視するのですか?」


「ちょっと、みんな――」俺が宥めようとしたが、リリアが割り込んだ。


「まさか」リリアの顔が急に青ざめた。「お二人、実はクラリーチェの手下なんですか!?」


「ク、クラリーチェ!?」ルルの母親が驚愕の声を上げた。


「あの学園長ですか? そんな恐ろしい方とは、まったく関係ありませんわ!」父親も慌てて否定する。


「それじゃあ、なぜ?」エレノアがさらに追及する。「正直に話してください」


 二人は顔を見合わせて、何やらヒソヒソと相談している。


「どうしましょう......」


「でも、これ以上隠しても......」


「でも、ルルには......」


 その時――。


「お父様! お母様!」


 元気な声が響いた。ルルが地下の貯蔵庫まで駆けつけてきたのだ。


「なんで地下にいるの!? 大変な音がしたから心配して――って、なんでお父様とお母様が黒いマントなんか着てるの?」


 ルルが両親の姿を見て、目を丸くした。


「監視していたって、どういうこと!?」


 彼女は両親に詰め寄った。


「武流先生をどうするつもりなの? なんで隠れて見てたの? お父様とお母様、何か悪いこと企んでるの?」


 俺は慌てて割って入ろうとした。


「ルル、まずは冷静に――」


 しかし、ルルの質問攻めは止まらない。両親はさらに慌てふためいた。


「あ、あの、ルル......これは......」


「違うのよ、ルル......わたくしたちは......」


「いや! ダメだ! ルルには言えない!」


「なによ! はっきり言ってよ!」ルルが怒り始めた。「娘の私に言えないことって、何なの!?」


 ルルの表情が悲しみに変わる。


「まさか......お父様とお母様、武流先生を誘拐するつもりだったの?」


「ゆ、誘拐!?」父親が仰天した。


「ルル、それは飛躍しすぎだ」俺が苦笑いしながら言ったが、ルルは聞いていない。


「それとも暗殺!?」ルルの妄想が加速する。「武流先生がアポロナイトだから、危険人物として消そうとしてたの!?!」


「あ、暗殺なんて!」母親が血相を変えて否定する。


 しかし、ルルの疑いは止まらない。


「あ! そうか!」ルルが突然ひらめいたような表情になった。「お父様とお母様、実は温泉が魔獣だってことを最初から知ってたのね!?」


「ちょっと待て、ルル」俺が慌てて制止しようとした。「さすがにそれは――」


「きっと、あの魔獣をこっそり育ててたのね!? そのことがバレてしまって、動揺しているんでしょう!? ここへ着いた時から、いつバレるか、気が気じゃなかったんでしょう!」


 ルルの推理がどんどんエスカレートしていく。俺の制止など聞こえていない。


「温泉を営んでいるのは隠れ蓑で、本当は魔獣を使って世界を滅ぼそうとしてるのね!?」


「せ、世界を滅ぼす!?」両親が同時に絶叫した。


「そうよ! その計画のためには、武流先生も魔法少女のみんなも邪魔になるから、こそこそ監視してたのね!?」


「まさか!?」エレノアが驚愕した。


「そんな恐ろしい陰謀が!?」リリアも青ざめている。


「わたくし、気づかなかったのです!」ミュウの猫耳が恐怖で震えている。


「みんな、落ち着け!」俺が大声で叫んだ。「さすがに世界征服は――」


 しかし、誰も俺の声を聞いていない。ルルの両親は、もはや滝のように汗を流していた。


「ち、違う! そんなことは!」父親が必死に否定する。


「世界を滅ぼすなんて、とんでもない!」母親も手をブンブンと振っている。


「それじゃあ、なんで監視してたの!?」ルルが涙目になって叫んだ。「娘にも言えない秘密って、いったい何よ!」


 その時――。


「皆さ〜ん♪ 何の騒ぎですの〜♪」


 リュウカ先生の声が響いた。豊満な胸を揺らしながら、地下まで駆けつけてきたのだ。


「自主練習の最中に、大きな声が聞こえて心配になって――あら? なぜ皆さん、地下にいらっしゃるんですの?」


「リュウカ先生!」ルルがリュウカ先生に飛びついた。「大変なんです! お父様とお母様が、実は世界を滅ぼそうとしてる悪人だったんです!」


「え!?」リュウカ先生の顔が驚愕に歪んだ。


「魔獣を使って世界征服を企んでたんです! 武流先生たちを監視してたのも、邪魔だからです!」


 リュウカ先生の表情が一瞬で怒りに変わった。


「私の武流先生を監視していたですって!?」


 彼女の声が低く、恐ろしくなる。


「違います!」父親が必死に弁解しようとした。


「本当に違うんです!」母親も泣きそうになって否定する。


 しかし、リュウカ先生は聞く耳を持たなかった。


「許せませんわ〜! 私の愛する武流先生に何をするつもりだったのですの〜!」


 突然、リュウカ先生の全身に電撃が走った。瞬時にして、彼女の服が赤と黒のコルセット風魔法少女衣装に変わる。


「変身!?」俺が驚いた。


「悪を許さない正義の雷! 私の武流先生を狙う者は許しませんわ〜!」


 リュウカ先生が魔法少女の姿になって、雷の魔法を発動しようとしている。


「ちょっと待て、リュウカ先生!」俺が慌てて止めようとした。「まだ話を聞いてない! 誤解かもしれない!」


「いいえ〜♪ 私の武流先生を監視する悪い虫は、即座に駆除ですわ〜♪」


 リュウカ先生の手から強烈な電撃が放出された。


「サンダー・パニッシュメント〜♪」


 ピカッ!


 雷がルルの両親に直撃する。


「うわああああああ!」

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