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(113)メリッサ、打ち上げ花火になる

「それじゃあ、この剣の性能を試させてもらおう」


 俺は奪った炎の剣を軽々と振り回しながら、メリッサに近づいていく。


 メリッサが後ずさりながら叫んだ。


「それはアタシの剣よ! アタシ以外には使えないはずなの!」


「どうかな」


 俺は剣を軽く振ってみた。炎が美しい軌跡を描き、刀身から火花が散る。確かに扱いやすい武器だった。


「武流先生、剣を持っても様になってますね!」アイリーンが眼鏡を光らせながら感嘆した。


「師匠、かっこいい!」リリアが手を叩いて喜んでいる。


「わたくし、武流様が剣士みたいに見えるのです!」ミュウも猫耳をピクピクと動かしている。


 エレノアは腕を組んで冷静に分析していた。


 俺はメリッサの前に立つと、炎の剣をゆっくりと構えた。


「さて、どこから攻めようか」


 次の瞬間、俺は電光石火の速さで剣を振るった。刀身がメリッサの鼻先を掠め、髪の毛が数本切れて舞い散る。


「ひっ!」


 メリッサが恐怖で身を竦ませる。俺の剣は彼女の肌を切ることなく、寸分の狂いもなく止まっていた。


「一撃目」俺は静かに言った。


 続いて、剣を横に薙ぎ払う。今度は彼女の胸の前、魔法少女衣装のコルセット部分を狙った。剣先が彼女の豊満な胸の谷間から数センチの距離で止まる。


「きゃあ!」


 メリッサが両手で胸を覆って身を守ろうとするが、既に剣は止まっていた。


「二撃目」


 俺は剣を上に振り上げ、今度は彼女の頭上から垂直に振り下ろした。剣は彼女の頭頂部から数ミリの距離で停止する。メリッサの赤い髪が炎の熱で少し焦げた匂いを放った。


「ひいいい!」


 メリッサの顔が真っ青になる。俺の剣技に、もはや反撃する気力も失せているようだった。


「三撃目」


 最後に、俺は剣を低く構え、彼女の太ももの間を狙った。剣先が彼女のスカートの裾を掠め、下着が見えそうになる。


「やめて! もうやめて!」


 メリッサが恐怖と屈辱で声を震わせる。その瞬間、彼女の膝が笑えるほどガクガクと震え始めた。


 そして――


 ペタンッ。


 メリッサが完全に腰を抜かして、大股を開いたまま地面に尻もちをついた。スカートの中が丸見えになり、彼女は慌てて手でスカートを押さえる。


「見ないで! 見ないでよ!」


 生徒たちからクスクスと笑い声が漏れた。


「情けない」エレノアが冷ややかに言った。


「メリッサ様、お疲れ様です~」ルルが大声で茶化した。


「理論的に分析すると、完全に戦意を喪失していますね」アイリーンも辛辣だ。


 しかし、メリッサは屈辱に震えながらも、まだ諦めていなかった。


「アタシを......アタシをこんなに辱めて......!」


 彼女の全身から再び炎が噴き出し始める。今度は剣を失った分、魔力を直接放出する気だった。


「絶対に許さない! 燃やし尽くしてやる!」


 メリッサが両手を突き出し、炎弾を次々と放ってきた。


「フレイム・バレット!」


 無数の炎の弾丸が俺に向かって飛んでくる。その威力は先ほどまでより激しく、怒りで魔力が暴走しているのが分かる。


「危ない!」リリアが心配そうに叫んだ。


「武流先生!」ステラも声を上げる。


 しかし、俺は冷静だった。手に持った炎の剣を盾のように構え、魔力を込める。


 温泉で得た俺の魔力が剣に流れ込み、炎の刀身がさらに大きく燃え上がった。


「これも面白い体験だ」


 俺は剣を振るって、飛んでくる炎弾を次々と打ち払った。炎と炎がぶつかり合い、美しい火花が夜空に散る。


「なんで! なんでそんなに上手に扱えるのよ!」


 メリッサが悔しそうに叫びながら、さらに激しい炎の攻撃を仕掛けてくる。


「インフェルノ・ストーム!」


 巨大な炎の竜巻が俺を包み込もうとした。だが、俺は剣に魔力を集中させ、その炎を吸収し始めた。


「おもしろい。この剣、炎を取り込んで強化されるのか」


 俺の剣がメリッサの炎を吸収し、どんどん巨大になっていく。刀身が倍、三倍と膨れ上がり、巨大な剣になっていく。


「そんな......そんなバカな......」


 メリッサの顔から血の気が引いていく。


「それじゃあ、トドメといこうか」


 俺は巨大化した炎の剣を高く掲げた。剣から立ち上る炎が夜空を赤く染める。


「フレイム・ソード・ファイナルストライク!」


 俺が技名を叫ぶと同時に、剣先から巨大な炎の刃が放出された。それは剣身の十倍はある巨大な炎の剣で、空気を切り裂いて一直線にメリッサへと向かった。


「うわああああああ!」


 炎の大剣がメリッサを直撃――したかに見えたが、俺は彼女の命を奪うつもりはない。炎は彼女の体を切り裂くのではなく、魔法少女衣装だけを焦がして、強烈な衝撃波を与えた。


「きゃああああああ!」


 メリッサの体が吹き飛ばされ、まるでロケットのように夜空高く舞い上がった。彼女の魔法少女衣装は炎で焦げ、ボロボロになりながらも、致命傷は負っていない。


 そして上空で――


 パァァァン!


 メリッサの体から花火のような光が弾け、赤と金色の輝きが夜空に美しく散った。まるで打ち上げ花火のような華やかな光景だった。


「わあ、きれい!」リリアが手を叩いて喜んだ。


「花火みたい!」ステラも興奮している。


「わたくし、こんな美しい花火初めて見るのです!」ミュウも猫耳をピクピクと動かしながら感動している。


「美しい終わり方ね」エレノアも少し感心したように呟いた。


「理論的に分析すると、魔力の放出による光の屈折現象ですが......確かに美しいですね」アイリーンも眼鏡を光らせながら空を見上げている。


 俺たちは全員で夜空に咲いた花火を見上げて鑑賞していた。メリッサとの激しい戦いの後だけに、この幻想的な光景がより一層美しく感じられる。


 その時、豪邸の窓が開いて、ルルの両親が顔を出した。


「あら、花火ですね!」母親が嬉しそうに声を上げた。


「武流先生の魔力で、こんな美しい花火まで見せていただけるとは!」父親も感激している。


「武流先生、ありがとうございます! こんな素晴らしい花火大会まで開催していただけるなんて!」


 ルルの両親は、メリッサとの戦いを花火のショーだと完全に勘違いしていた。


「あはは......」ルルが苦笑いした。


「夜遅くにお騒がせしました」と俺は謝る。


「いえいえ、こちらこそ! 武流先生の魔力は本当に素晴らしい! また是非いらしてください!」


 俺たちは温かい歓迎を受けながら、美しい花火が消えていく夜空を見上げていた。


「……ん? そういえば、メリッサはどこまで飛んでいったんだ?……まあ、いいか」


 打ち上げ花火になったメリッサが、温泉施設の屋根に落下し、頭から突き刺さって失神しているのが発見されたのは、翌日未明のことだった。

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