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ep1「ミーヤの罪」chap2:時空繋ぎ

【前回のあらすじ】

少女ミーヤは、問題児ながらも「可能性の神子」として認められ式典に参加する。

カムリ大社の宮司カムリ・カンナから授かった魔導具「スフィア」を身につけ、幼き日に母と交わした母の故郷の桜を見に行くという約束を果たすため時空繋ぎの秘術を行う聖地「ギワ中央殿」へ向かった。

 リバースアで魔導式は生活、日常のあらゆる場面に溶け込んでいる。

それを発動させるには、スフィアと呼ばれる魔導具とそれに記録された魔導式。そこにリバースアにあふれる粒子、フレアフォトンを反応させる必要だある。





 そして今、ミーヤは自分の意志とは関係なく魔導式が展開される様をただ呆然と見つめるしかなかった。


————な、何もしてないんだけど……


内心ではそう思いつつ胸の奥には不安が膨らんでいく。

秘術として守られてきた継界天球を勝手に作動させるなどあり得ないことだ。誰がどう見ても禁忌。彼女自身、直感でそれを理解していた。


 継界天球の輝きが強くなる。

フレアフォトンの活動が活発になっているのだろう。

ミーヤはただ立ち尽くし眩しさに目を細めながら眺めることしかできなかった。



 フレアフォトンとはリバースアに空気に溶け込む特殊な光粒子である。

遥か昔から大気中に漂い、リバースアで暮らす生物にとっては切っても切り離せないエネルギー原でもある。

電気信号に非常に作用しやすい粒子であり、人の脳波などの電気信号にも干渉してくる。

フレアフォトンの反応が強く濃度が濃くなると可視化する。その際に視認できる色は人の脳波の形である感情に依存したり、フレアフォトン反応によって起こる現象に依存するものである。

さらには実際に火を起こしたり物を動かしたりと、具現化や物理現象として触れられるような状態にまですることが可能であり、それらを魔導式という形にはめ込み制御しスフィアを通じて使用している。



 しかし今回、ミーヤは何もしていないにもかかわらず目の前の空間が歪み始める。


――――!?


何が起きているというのか。本来であれば魔導式を通じ時空を繋ぐ座標である継界点を定め、その行き先が安全かどうかを確認する作業が必要になる。当然広い宇宙に放り出されるようなことになればたまったものではない。


「待って待って待って! どうなってるの……!?」


口だけである。

この天上天下唯我独尊天真爛漫好奇心旺盛問題児の知的欲求は止められない。

自分自身何が起こっているのか分からないが、これから見たこともない世界を目の当たりにできる、ましてやその世界に行くことができるかもしれない。それだけでもうミーヤの瞳の輝きは満天の星空ですらかすんで見えるほどに煌めいていた。

ミーヤのそんな感情が強くなるにつれてフレアフォトンの反応は強くなる。

そして継界天球の奥、膨大なフレアフォトンが集まっていく。見れば分かる。とてつもないエネルギーが集まり可視化していく。

空気が鳴いている。耳に心地良い高音が刺さってきているような。

ミーヤの胸の高鳴りも最高潮を迎えようとしている。

集まる光を見つめるミーヤはあふれ出る言葉を抑えられなかった。

かつてないほどに輝いてるミーヤの表情はまるで幼子が数えきれない星が光り瞬く明るい夜空に身を投げたかのように希望に満ちあふれていた。


「私、ピンクの桜が見たい!」


叫んだ。心のままに。

光はさらに強く集まり、回転し、収束し、激しく、輝く。直視できないほどの光の束に思わず目をつむった。

その光は蒼桜の髪飾りの水晶体にも入り込み乱反射した。少女はそれに気付かなかったが、まるで母が隣で見守ってくれているかのような温かな光だった。

 次の瞬間。空気がフレアフォトンに押し出される。それは音として触感としてミーヤの五感を撫でて通り過ぎて行った。

そしてゆっくりと目を開くとそこには継界天門が優しい光を放ちながらミーヤを誘うように宙を揺らいでいた。


「これが……」


まるで予定調和。

確信していた。

この先が母の故郷。

地球であることを。

継界天門に手を伸ばす。

フレアフォトンの海に腕が沈んでいく。

溶けるような感覚に身を投げた。

ギワ中央殿はまた静かに眠りについていくのだった。




 「……っ!」

ドサッと崩れ落ちるミーヤ。

身体は鉛のように重く、意識が朦朧とし吐き気がする。これが時空酔いか。

身をもって体験することは彼女にとってなによりの施しであるだろう。

空気が苦い。そして薄い。フレアフォトンが無いのだろうか。何も力を感じない。

辺りは思ったより静かな場所で見渡すと芝地が広がり荘重な建築物が一軒佇む。何かの博物館だろうか。人が生活するにはあまりにも大きい建築物だと思ったが自分の家もそんな虚しさは備えていたなとどうでもいいことを朦朧とする意識の中で想起していた。



『桜花なの!?』



 遠くで誰かが誰かを呼ぶ。

誰だろう。

声が、足音が迫ってくる。駆け足だ。

思考することしかできない。もう限界。


『桜花、ではないね。まさか、ミーヤちゃんかい?』


その人が何を言ってるか理解できないまま意識は遠のく。


「マ、マ……」


見ず知らずの世界で見ず知らずの人の前で意識を失うことがどれほど危険かカムリ・カンナは語っていたな。出鼻から身をもって経験することになるなんて。

そこでミーヤの記憶は途切れた。







 柔らかい。ふわふわ。知らない天井。

私、寝ちゃったんだ。

バサッ――――

身体にのしかかる重みのあるふわふわを蹴り飛ばし、私は何をしてるんだと言わんばかりに素早く上体を起こす。

ここは、どこ?

草木の優しい香りが鼻を掠める。

このままずっと身をうずめていたいほどのふわふわな寝具。

どこかの部屋。窓からは優しい陽の光が差し込む。

拘束などはされていない。

少し戸惑っていたが、ここにいても仕方がないと思いミーヤは起き上がり戸に向けて歩き出す。

 時空酔いで意識を失う事象。神子見習いの修行中に聞いたことがある。時空を渡った際に渡った先の世界はリバースアと大気の成分も違えば、かかる重力も星の回転速度も何もかもが基本的には異なるのでしっかり酔いを止める準備をしなければ最悪死にも至ると。

カンナおばちゃまはちゃんとまじめなことを言っていたのだと今更ながら思っていた。


 そんなことを思い返しながら戸に耳を当て近くに誰もいないのを確認してゆっくりと開ける。部屋から通路に身を乗り出し左右を確認する。

いた。


『あら、起きたのかい?』


通路の先にどこか見覚えがある初老の女性がいた。気を失う直前に何か喋っていた人物だろうか。

 距離があったため足音が聞き取れなかったのか、たまたまこちらの様子を見に向かってきたのか。とにかく間が悪い。

反射的に部屋に身を引っ込める。

 先ほどから相手が何かを喋っているのだが内容が全く分からない。

当然である。ここはリバースアはなく別の世界。であればこの世界の言語使用して喋っているのだろう。


「そうだ!」


スフィアホルダーに付いているスフィアに手をかざす。するとホログラムのような液晶が投影された。これはスフィアの基本的な記録技術の応用で情報端末や通信機器としても使用することができ魔導式で組み込まれている。この技術を光粒通器と呼んでいる。


「ここは地球で合ってるの!?」


光粒通器に喋り掛けると音声に反応し液晶内の情報が動き出す。


――――情報検索


早く……!


該当並行別世界番号 1940 「地球」


ビンゴ!


やはりここは地球だった。

ここでまたカムリ・カンナの言葉を思い出す。



「並行別世界に飛んだらまずは酔いを止め安全かどうかを確認すること。その次にその世界の言語がすでに登録されているなら魔導式、言語統一を使用すること。交流の計れない種は異物と見なされることがある。私たちが注意すべきなのはたどり着いた先で死なないこと。リバースアではない世界に安全が保証されているなんてこと有り得ないのです」



えらいぞミーヤ!

人の話を思いの外ちゃんと聞いていた自分をほめたくなった。

魔導式展開。


――――言語統一――――並行別世界番号1940「地球」――――使用言語検索


「え!?」


――――言語解凍開始


その言語数、3000超。


驚くのも無理はない。ここまで言語が混流している星も珍しい。

そもそもリバースアは国そのものが6つしかないうえに、言語は世界共通の言語ひとつを習得すれば世界中の人とストレスなく会話ができる。暗号言語や原生種言語など特殊なものはあれど言語の総数は100にも満たないだろう。

3000もの言語をいきなり頭に流し込んだらどうなってしまうのだろうか。

魔導式、言語統一とはリバースア以外の言語をフレアフォトンを記憶媒体にし脳に取り込みそのまま脳内で解凍することができる。あまりに脳のリソースを消費してしまうことや安全性を考慮し時間経過でその言語情報は消去される仕様になっている。

さすがに3000は無理だと好奇心の塊も悟っている。ただコミュニケーションを取れなければ何をされるか分からない。相手はすでに通路を歩きこちらに向かってきている。時間はない。


「上位100個……! 「地球」で使用頻度の高い言語上位100個の解凍!」


それでだめならもう100個、いや1000個!

まずは生きて現状を把握しないと!

魔導式が動作する。

フレアフォトンが反応している薄い高音だけがミーヤの耳に入ってくる。


「痛ぁっ……!!!」


100の言語が解凍された。100の言語ですら脳が驚き激痛が走る。

それもそのはず。本来ひとつずつの解凍が推奨されているのだ。脳がその負荷に耐えられただけでも運がいいのだろう。


「ミーヤちゃん! 大丈夫かい!?」


ミーヤの悲鳴が聞こえ女性は駆けてきた。


「だ、大丈夫です、お邪魔してまーす……」


何を言ってるかは理解できるようだ。成功だ。

そしてミーヤは気まずそうにしながらもそのまま続ける。


「あの、どちら様ですか……?」


今回コンテストに向け小説家になろうになろうに投稿しました。

普段はXfolioで更新してます。


キャラデザや用語なども下記サイトで公開しています。


「CRAVING CONNECT」ポータルサイトURL

https://xfolio.jp/portfolio/chaka4_min


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