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プロローグ「想えば、想うほど。」

 小さい頃の話。

叶うはずのない夢や、手の届かない世界に想いを馳せること。

それはまだ世界の仕組みも分からない、もっと言えば自分こそが基準の世界だったからこそ無限の可能性に夢を見たのではないだろうか。

歳を重ね、人生を歩む。そんな誰しもが通る道には越えられない壁や諦めなければいけないこと。さまざまなものが人を縛りつけ、最後には虚像に自身を投影するのが精一杯になってしまう。それが人だ。

そこに行きつくまでの時間をどれだけ有意義なものにできるか。それにこそ真価が問われるのだ。



そーんな難しい話知るか。

困難や挫折、たくさんの障害が目の前に迫った時にそのまま歩み続けるか、それとも回り道をするか。結局立ち止まらなければいつか目的の場所にたどり着くんだよ。



曲解であると言われるかもしれない。根性論なんか流行らないよと言われるかもしれない。それでも人は生きながらに何かに縋り追い求めてしまう。誰しも心当たりがあるのではないだろうか。



人は進み続ける限り死なないんだよ。

生み出し、託す。

それもまた進み続けるってことなんじゃないかな?








とある惑星――――





この星には国は6つしかないんだよ。



なんで?



それぞれの大陸を作った神様が、それぞれの国を建てたからだよ。



ふーん。じゃあなんで今こんなことになってるの?神様はどこに行ったの?





それはね――――







 第6統治国陸、グランディオス。

この惑星、リバースアの中でも最大級の国である。

そんな国を今まさに悪魔が壊そうとしている。

 グランディオスの王都グランパレシオン、その周囲はすでに火の海となり、粉塵が舞い上がり陽の光も通さない地獄のような様相である。

逃げ惑う者。悪魔と対峙する者。全てが災いの渦中であり、まさに混沌という言葉でしかこの禍々しく痛々しい惨状を表現することはできないだろう。





 グランパレシオンのとある場所。

鍾乳洞のような岩盤に囲まれている洞窟のような空間。日の光はなく、青白い粒子のようなものが漂い辺りを淡く照らしている。

そこには朽ちかけているように見えるが、かくも厳かな社殿が佇んでいた。

 時は災いが訪れる直前に遡る。


「ママ、これ何?」

「髪飾りよ。ママの想いを込めて作ったのよ。ミーヤにあげるわ」


社殿の片隅に場違いにも思えるが母と娘が親子の時間を過ごしていた。

他に人の気配も無く、ふたりの声だけが反響している。


「わぁ! ありがとう! これ何のお花?」


喜んだかと思えば直ぐに不思議そうな表情を浮かべる。なんとも幼い子供らしい。


「これはあそこにある木に咲く花よ。サクラって言うの」


母が指さす方向には蒼い花を咲かせた桜の木があった。

髪飾りは薄く蒼く光を通す水晶のようなものでできた桜の花が2輪連なっている。


「サクラ? きれいだね!」


娘は目をキラキラと輝かせながら桜の木を見つめる。


「ママの故郷にはね、ピンク色の桜があるのよ」

「そうなの! いいな~!」

「いつかミーヤが大きくなったらママの故郷に遊びに行こうね、約束よ」


そう言うと母は娘の目線に合わせてしゃがみ小指を差し出す。

娘は不思議そうな顔をする。


「ミーヤも小指を出して。ママの故郷では小指同士を結んで約束をするの」


娘はまた目を輝かせる。知らないことを知るのが楽しいのだろうか。

親子が小指を結び、母が何か声に出そうとしたところで爆発音が鳴り響き地面を大きく揺らした。

その拍子に小指をほどき母は娘を抱きしめた。


「何? まさか……」

「ママ……?」


娘が今にも涙があふれそうな潤んだ瞳で母を見上げる。


「大丈夫よミーヤ。ここはグランディオスの中で一番安全な場所なんだから。ちょっとママは外の様子を見てくるからここで良い子で待てるかしら?」


母は地上で何が起きてるか粗方想像がついていた。娘をひとりにするのは心苦しいが間違いなく地上よりここが安全だと判断したのだ。

そして娘は声を絞り出す。


「……うん」


母は驚いた。娘がこんなに強い子だとは思わなかった。


「よし。じゃあここで少し待っててね。約束よ」

「うん……!」


小指を結んでいる余裕なんてなかった。

母は最後に娘に微笑みかけ走り出し、そのまま振り返ることはなかった。





 少女は待った。どれぐらいの時間だろうか。

ママの故郷はどんなところだろうか。

ピンクの桜もきれいなのだろうか。

これから起こるであろう楽しいことを考えながら少女は待った。

少女には悠久の時にも感じたが、まだ短い人生であるものの家族や友達との楽しい時間を思い出せば苦ではなかった。

お腹も空き、蒼い桜の木の下で気づけば眠りについていた。





 あれから何年が経っただろうか。

少女は未だ、母には会えていなかった――――


「こらぁ! 小娘ぇ! 神子修行を舐めとるのか!」

「ごめんごめん! 明日こそちゃんとやるから!」


それでも少女はまた母に会えることを信じて、自分の道を走り続ける。





じゃあもう神様はいないの?



そうかもしれないね。それでも人は何か信じて生きたいって思うの。



そっか。それじゃあ私は自分を信じるよ――――





ママ

今回コンテストに向け小説家になろうになろうに投稿しました。

普段はXfolioで更新してます。


キャラデザや用語なども下記サイトで公開しています。


「CRAVING CONNECT」ポータルサイトURL

https://xfolio.jp/portfolio/chaka4_min


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