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第1部:土壌

思い付きで書いた処女作となりますので稚拙な部分があると思われます。

最終章までお付き合いいただけると嬉しいです。

その日、弁護士としての新たな依頼が彼の元に舞い込んだ。

それは、町外れの一軒家で発生した連続殺人事件の弁護依頼だった。

被告人は家族全員を手にかけたとして逮捕されていたが、彼には何か不可解な点があった。

その「不可解さ」に触れることで、彼の運命が大きく変わることになるとは、まだ誰も知る由もなかった。


彼が裁判所で初めて被告人と対面した瞬間、異常な感覚を覚えた。

被告人の顔の位置に、突如として花が咲いたのだ。

初めは夢か錯覚だと思ったが、それは現実だった。

被告人の頭部に、赤く鮮やかな薔薇が咲いていた。


それはただの幻覚ではない。


薔薇は確かにそこにあり、目を凝らすと、生きているかのように動いているように感じた。

目を背けたくなるその景色に、彼は言葉を失った。

犯人は一体、何者なのか彼の心は不安でいっぱいだった。


被告人が語った言葉は冷徹だった。

「家族を愛していた。でも、愛しすぎてしまった。だから、守るために殺した。」その言葉を聞いても、彼の胸には疑念しか残らなかった。

その時、彼は初めて、犯人の“罪”がただの犯罪ではなく、彼自身の心の中に根付いていることを感じ取った。


そして、最も衝撃的だったのはその後だった。

被告人の顔に咲いていた薔薇は、次第に色を変え、周囲の空気を変え始めた。

それはまるで、彼の心の中に何かが入り込んでくるような感覚をもたらした。


その時、彼は気づいた。この「花」は、殺人を犯した者にしか咲かないのだということを。


事件が進行するにつれて、彼はその「花」の力に圧倒されていった。

それは単なる幻覚ではなかった。殺人を犯した者にしか見えないその花を、他の被告人でも目撃することになった。


ある日、新たに担当することになった事件で、彼は別の被告人と対面した。

その被告人は一人の女性を殺害したとして逮捕されていた。

彼女もまた犯行を振り返りながら冷たく語った。

「彼女は私の存在を否定した。耐えられなかった。だから、殺すしかなかった。」


その言葉が終わると、彼女の頭部に咲いたのは白いユリだった。

その花は美しく、しかしどこか異様な存在感を放っていた。

彼は目を細めながら、そのユリを見つめていた。

ユリの花言葉は「純潔」しかし、その美しさに反して、そこに宿る罪の深さは言葉では表せないものだった。


その瞬間、彼は理解した。

この能力は、罪を視覚化するだけでなく、罪を背負った者との心のつながりを強化するものだと。


だが、この異常な現象にどう対処すればよいのか、彼にはわからなかった。

被告人の顔に咲く花を目撃するたびに、彼はその背後にある罪深い心と向き合わせられ、痛みを感じ取らなければならなかった。


弁護士としての仕事は順調に進んでいたが、彼の心は日々次第に不安定になっていった。

周囲の人々は彼の優れた論理的な能力を賞賛し、次々と依頼が舞い込んだ。

しかし、どれだけ成功を収めても、彼は心の中で何かが満たされないと感じていた。


夜、事務所の片隅でパソコンに向かう彼の手は震えていた。

仕事の合間に目を休める暇もなく、鏡の前に立つと、そこに映る自分の姿に違和感を覚えた。

鏡の中で、彼の頭にもまた薔薇が咲いているような錯覚を覚えた。それは恐ろしいものだった。


彼は知っていた。自分もまた、殺人を犯した者と無意識に繋がっているのではないかと、

心の中で何度もその疑念を振り払おうとした。

しかし、実際にはその疑念はますます強くなっていった。

弁護をすることで、彼は犯人たちと“共鳴”しているのではないか。

それが花が咲く原因なのではないか。


夜の静寂の中で、彼は一人、肩を落として座り込み、目を閉じた。

深く息を吐き出し、心を落ち着けようとする。

しかし、目を開けると、机の上にふと見覚えのある花が咲いていた。

それは薔薇でもユリでもなかった。

ただ、ひっそりとそこに咲いた、誰かの無言の証だった。


日々を過ごす中で、彼は次第に精神的に追い詰められていった。

能力を隠しながら弁護士としての仕事を続けることは、彼にとって一種の苦行となっていた。

花が咲くたび、その背後にある罪の苦悩が彼を支配し、心の中でそれを抱え続けなければならなかった。


ある晩、長い一日の仕事を終え、彼は疲れ果てて帰宅した。

テレビもつけず、ただ静かな部屋の中で一人、自分と向き合っていた。その時、ふと窓の外を見た。

月明かりに照らされた部屋の中で、彼はまた花が咲いているのを感じた。


「どうして、俺だけがこんな目に遭わなければならないんだ?」


その問いに答える者は誰もいなかった。

彼はその夜、眠ることができなかった。

眠りの中でも、夢の中でも、花が咲く。

そして、目覚めるたびにその罪深さを背負い込んでいくのだ。

読んでいただき有難うございます。

第1章どうでしたか?殺人を犯したものの顔が花に見えてしまう精神疾患...

私であれば嫌ですねSAN値が音を立てて削れてしまいそうで

異形頭とかは好きなんですけどね....。


ともあれ駆け足で作りますのでこうご期待という感じで

お待ちいただけたらと思います。


それでは次回は短日の候に

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