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PL - escape to the moon -  作者: siz
LITHOS Meets ORB
4/13

ガラクタ集めのリトス

「八五〇万か。ちょっと煽りすぎたかな」

 

 携帯端末に表示された口座残高とにらめっこする。即金で支払ったため、その数字は大きく目減りしていた。まぁ、いいか。この口座はこれしか入れてなかったし。

 

「いつもあのようなやり方をしているのですか?」

 

 後ろから声がかけられて、振り返る。

 先の取引に立ち会ってくれた協会の立会人————協会の支部長、ホワイトさんだ。フルネームは確か、トーマス・ホワイト。

 恐らく五十代くらい。綺麗な姿勢をした長身で、スーツをスマートに着こなす紳士の佇まいをしているが、右のこめかみから後頭部まで伸びる大きな裂傷の跡が残っており、歴戦のレリックハンターだったことを物語っている。

 

「いやぁ。ホワイト支部長の後ろ盾があったから見栄を張れたんですよ。本当に助かりました」

 

「…………」

 

「…………えっと、その、すみません。調子に乗りました。ごめんなさい」

 

 紳士から落胆の眼差しを向けられ、思わず素直に謝ってしまう。

 ホワイト支部長は、その様子を見て小さく嘆息した。

 

「貴女のことは先ほどみたく活躍していると話題になっていましたから、覚悟はしていました。本当に他の者に立会を任せなくてよかった。あのやり取りは肝が冷えます」


 どこのどいつだ話題にしている輩は。

 

「そんなに活躍してますかね、私」


「本当に自覚がないのですか?」

 

 言われてみて、独り立ちしてから今に至るまでの道行きをざっと振り返ってみる。

 まぁ、確かに。

 さっきの交渉官がしていた表情は見慣れてきた気がする。驚愕から始まって、みんな揃って青い顔で帰っていく。お腹さすりながら。

 

「他の人よりはちょっとやらかしてるかなー…………とは」

 

「ちょっと、ですか。各国の支部で貴女のことは評判ですよ。期待の問題児が現れた、と」

 

「問題児って。別に私、悪いことなんかしてませんよ」

 

 グレーゾーンはたまに踏みこむけど。

 こちらの考えていることを見透かしているのか、ホワイト部長は再び小さく嘆息した。

 

「そうですね。先のやり取りを見てそれは判りました。貴女に()()()()()。貴女は自分の欲望に忠実なだけだ」

 

 欲望に忠実って…………私は盛った獣だとでも思われているのだろうか。

 ホワイト支部長の視線が私の胸元————大事に抱えられた遺物に移った。

 引退して事務方になったとはいえ元歴戦のレリックハンター。紳士でもお宝への興味は隠せないようだ。

 

「興味、あります?」

 

「ないと言えば嘘になりますね。ただ、貴女の評判を聞いている身としては博打打ちに見えるのも事実です」

 

「いやだなぁ、レリックハンターなんて博打打ちそのものじゃないですか」

 

 それを聞いて、ホワイト支部長は眉をひそめた。

 まずい。もう少し言葉を選ぶべきだったか。

 

「おや、おかしなことを言いますね。貴女はそんなこと微塵も思っていないでしょう」

 

「————————えっ」

 

 思わぬ言葉に固まってしまった。

 驚いた。この国で活動を始めてから今の今まで話したことなんてなかったのに、あの短いやり取りで私の本心を見抜いている。こんなにあっさり私のことを察してくれる人なんて珍しい。

 意表を突かれたこちらの様子を見て、ホワイト支部長は微笑んだ。

 

「貴女の評判は二つの名前で耳にしていますが、私は()()()()()が貴女の本質だと感じますよ。その砕けぬ意志は誰にも真似できない」

 

「意志だなんて。私そんな格好良さそうな人間じゃないですよ。仰る通り、自分の目的に夢中なだけです」

 

「尚のことでしょう。恥ずかしながら、私には博打打ちに見えてしまいますが貴女には夢中になれる別の景色が見えている。それがとても、羨ましく思います」


 実際のところ、ホワイト支部長が私のことをどう思っているかは判らなかった。

 けれど、私の在り方を羨ましいと言った。

 多分、ホワイト支部長にも夢中になれるものがあったのだ。

 それがどうなったのかは判らない。ただ、私の在り方は間違いではない。それを期待している。そう言ってくれた気がした。




 ホワイト支部長と別れて、協会施設の中央ホールまで戻ってきた。

 ホールは三階まで吹き抜けになっており、エスカレーターで各階の窓口へアクセスできるようになっている。ところどころ歩いている筋肉隆々のレリックハンターたちの姿を視界から除けば、小綺麗な役場の受付みたいだ。どこの国の支部でも似たような作りだが、ここでは一階の広場中央にカフェテリアが広がっていた。

 カフェテリアでは何組かのレリックハンターが歓談をしている。次の探索の作戦会議か、それとも探索の打ち上げか。タリ連邦に来てからは日も浅く、他人と組んだことがなかった。遺跡探索は人がいれば良いというわけではないが、人手があれば作業は分担でき、間違いなく行動範囲は広がる。次は人と組んでみるのも良いかもしれない。

 エスカレーターで一階まで降り、目的の窓口の職員に声をかけた。

 

「すみません。T2地区の遺跡探索申請をしてたんですけど、キャンセルお願いします」

 

「かしこまりました。それでは確認いたしますので、ハンターライセンスをご提示ください」

 

 懐からライセンスカードを取り出し、職員のお姉さんに手渡す。お姉さんは流れるような手つきで情報端末を操作し、データを確認していく。その様子をぼんやりと眺める。

 綺麗な人だな、と思った。

 肌は色白で潤っており、よく手入れされているのが判る。化粧は薄く、自然な形で若々しさが伝わってくる。正しく綺麗な大人のお姉さんだ。

 自分の腕を見る。女のしなやかさは残しているが、余分な脂肪はなく鍛え上げた腕。肌は荒れているわけではないが、あちらこちらに薄っすらと傷跡が走っている。傷跡は顔にもあるし、当然、衣服で隠れた身体中にも傷跡がある。

 私が女らしくないことはまるで気にしていないが、目の前に綺麗な人がいるとどうしても師匠の顔が頭にちらついてしまう。独り立ちしてこの二年間、一切顔を出していないが次に顔を合わせたらなんと言われることだろう。

 妙に美意識の高い人だった。私が長い髪は邪魔だから刈り上げると言ったとき、悲鳴を上げられるとは思わなんだ。無茶苦茶に怒られて『うるふかっと』のショートヘアなる髪型に落ち着いたのは苦い思い出だ。散髪のたびに思い出す。

 

「申請を確認いたしました。なにか手違いがありましたか?」

 

「ああ、いや。私用です。ちょっと数日探索ができなくなっちゃって」

 

「かしこまりました。それでは手続きをいたします。そちらの席へおかけになってお待ちください」

 

 促されて待合のソファーに身を沈める。その柔らかい感触で自然と深い息が漏れた。思った以上に緊張していたことを自覚する。

 命を張った代物が望み通り手に入るか内心ハラハラしていたのだ。今回は予想通り相手の予算が低かったから助かったが、思い通りにならないこともままある。

 今回は今のところとても順調だ。我が身は無事だし、望み通り遺物を入手できた。あとはこれが目当ての品か否かだが————


 ————カツン、カツン。


 わざとらしい足音が聞こえてきた。硬い床の上でよく響く。恐らくブーツのつま先から踵まで鋼材が仕こんであるのだろう。()()()()()()()()()。足音はどうやらカフェテリアの方から向かってきているようだった。

 足音の人物が私のそばを過ぎる。

 若い男だ。私の数年先輩だろう。なんと言うか、キザな男だった。顔は彫りが深く、肌はよく焼けている。前髪を大きく二つに分け、少し長めの髪を後ろでまとめていた。身長は高い。一八〇センチ以上はある。よく絞られた身体つきだが真っ青なサテンシャツの光沢が場違い感をかもし出していた。なんだアレ。オフなのかな?

 キザな男はそのままの足取りで私の手続きをしてくれている職員のいる窓口に寄りかかった。

 

「エミリー、今夜こそは俺に付き合ってくれるだろ?」

 

 職員のお姉さんがあからさまに嘆息した。

 

「ジョーンズさん。前にも言いましたが、業務中に食事のお誘いはやめてください」

 

「だって君、仕事が終わるとすぐに帰ってしまうじゃないか。なら、俺がアタックするのは今しかない」

 

 うわぁ。コイツ、面倒くさいヤツだ。

 人が嫌だって言ってるのにそれを聞かなくて、自分の思い通りになるまでしつこい自分勝手なヤツだこれ。

 明らかにお姉さんは迷惑そうにしている。正直、私も関わりたくない。でも、放っておくと口説き終わるまで手続きが遅くなりそうだ。

 腹をくくろう。足に気合を入れて、立ち上がった。

 

「ねぇ、そこの人。私、手続き待ってるからお姉さんの邪魔しないでほしいんだけど」

 

「あぁ?」

 

 ガラの悪い返事。ジョーンズと呼ばれた男は顔をしかめてこちらへ振り返った。レリックハンターは職業柄たくましい学者肌が多いからこんな典型的な荒くれ者は珍しい。

 相手は私より二回りも大きな体躯だけれど、私も伊達に数々の死線を越えていない。遺跡の怖さに比べれば、人間相手など可愛いものだ。

 

「聞こえなかった? 邪魔だって言ったんだ。女漁りはよそでやってよ」

 

「なんだガキ? お前どこのどいつだ?」

 

 こちらが女だと判ったからか、値踏みするような視線。あいにく私はガキだ。アンタの好みじゃないだろう。

 視線が私の胸元で止まる。そこには抱えられた遺物があった。表面にはヒビが走り、明らかに壊れていると判る代物。

 男は目を丸くした。

 

「…………お前、もしかして噂のヤツか?」

 

「さぁ? どんな噂か知らないけど」

 

「その遺物、ぶっ壊れてるんだろ? それ、どうしたんだ? パッケージされているってことは鑑定済みだろ」

 

「それ答える必要ある?」

 

 男はにたりと笑った。どうやら確信を得たようだ。忌々しい。

 

「そうか! そうかそうか! お前が、あのガラクタ集めの(ジャンクコレクター)リトスか!」

 

「ジャンク…………?」

 

 こちらの様子を伺っていたお姉さんが不思議そうに呟いた。男はそれを見逃さない。わざとらしく大声で応えてみせた。

 

「そうさ、エミリー! コイツは好き好んで高い金を払ってまでガラクタばかりを集める変わり者さ! なんでもガラクタを買い集めた金でいくつもの豪邸が建つって噂だ!」

 

 大声に惹かれて、なんだなんだと野次馬が寄ってきた。何人かは私を指差して探索仲間同士でこそこそと話し合っている。ホワイト支部長の言う通り私の悪名は広まっているらしい。

 まぁ、その不名誉な名前も含めて否定はできない。実際ガラクタばかりを集めているし、今日も立派な家が建つほどの散財をしている。噂というか真実そのものである。

 自覚していることだ。今更騒ぎ立てるほどでもない。でも、野次馬の同業者たちはともかくお姉さんに不思議なものを見る目をされるのは少し心に来るものがある。

 

「俺より若いヤツだとは聞いていたが、こんなガキだったとはな。会って一度訊いてみたかったんだ。命を賭けてまでガラクタを集める心境ってヤツを!」

 

 ————は?

 なんだコイツ。馬鹿なのか。なんでそんなことをわざわざ聞く必要がある?

 

「アンタ、レリックハンターじゃないの?」

 

 それ以上深く考えられず、つい訊いてしまった。

 私の問いが予想外だったのか、男はきょとんとした。自分がなにを訊ねられたのか理解していない顔だ。

 その反応で察することができた。なるほど、こういうヤツなのか。

 

「なにを訳の判らないことを言っている? 噂通りネジが抜けてんのか」

 

「どうでもいいけどアンタ声がでかいんだよ。迷惑だ。そろそろ警備員が来るんじゃないの?」

 

 親指でエントランスの方を指し示す。どうぞ。このまま。お帰りください。

 男は舌打ちをしたが、大人しくこの場を離れていった。

 ナンパは失敗したが噂の変人に会えて嬉しかったのかもしれない。良かったな、代わりに私はお姉さんの視線が痛いよちくしょうめ。

 

「すみません。かえって騒ぎ立てちゃいました」

 

「い、いいえ。こちらこそ申し訳ございません。助けていただいてありがとうございます」

 

 お姉さんは正気を取り戻して、お礼をしてくれた。うん、大人の女性って感じがする。この雰囲気は真似できないな。

 

「あの人、いつもあんな感じなんですか?」

 

 エントランスの方を眺める。男が自動ドアの向こう側へ消えていくのが見えた。

 お姉さんは困った表情を浮かべて応えた。

 

「当支部の腕利きなのですが…………その、困っております」

 

 腕利きのレリックハンターは貴重な人材資源だ。協会側もあまり強く言えないのだろう。

 でも、ああいう輩を見るとライセンス試験はもう少し厳しくてもいいような気がする。

 

「それに彼は良くない噂もあって————いえ、なんでもありません」

 

 愚痴がこぼれたが、すぐにその口を閉ざした。気にはなったが、職員が醜聞を広げる訳にはいかないのだろう。追求はしないでおくことにした。




 手続きを終え、愛しの我が家に帰ってきた。もっとも、実際には家ではない。ここは協会施設の地下駐車場で、私は今大型トラックを改造したモーターホームの中にいる。

 タリ連邦に来てから探索以外はずっとここで過ごしている。私の他にも移動拠点として改造したトラックを停めているレリックハンターの姿が複数ある。国外から遠征してきたレリックハンターはその国の支部に仮宿して行動するのが一般的だ。観光も兼ねて拠点ごと遺跡間を行き来する者もいるが、遺跡の探索にはその都度で支部への申請が必要だし、僻地の遺跡には協会が用意する移動手段でしか行けない場所もある。結局手間を惜しんで皆ここに落ち着く。

 なにより、ここで暮らすのは楽なのだ。食事はカフェテリアでできる。清潔なシャワールームも借りられる。各国の口座取引もできる。探索に必要な資材は施設内に支社を置く業者に注文すればいい。唯一、娯楽のないことが欠点に上げられるが、そういう人たちはタクシーに乗って街に繰り出している。私はネットのサブスクで映画が見られれば満足なので関係ない話だ。たまの外出と言えば、興味のある論文を発表している大学教授にアポを取って出向くくらいか。

 

「さて、と」

 

 ドアを施錠。カーテンを閉め、外界を遮断する。これで邪魔者はいない。

 椅子に座り、作業台へ振り向く。その上には入手したばかりの遺物————携帯型情報端末が一つ。今からこれを解体し、修復もしくは情報のサルベージを行う。

 工具を手に取り、早速作業に取りかかる。

 今日会った官僚はこの情報端末の修復を諦めている様子だったが、私はそう思わなかった。

 確かにこれは未発見の型式だが、これと似た構造をしている遺物に心当たりがあった。それに大した情報は保存されておらず、遺物としての利用価値も低い評価が下され、構造図は一般に売買されているものだ。重要な価値もないから知る人は専門家でも少ない。この国の遺物鑑定官が知らなかったのは不思議でもない。他国の、特に敵対国で発見された遺物の情報がまるで伝わらないのは珍しい話ではないからだ。特に価値がないと烙印が押されたものは尚更だ。

 未知のテクノロジーとして期待していた官僚には悪いが、大枚をはたいた私もこの情報端末自体にはあまり価値がないと思っている。古代文明の歴史は謎が多く、様々なテクノロジーが隠されているが、至極当たり前なことがある。新しいものと比べて、()()()()()()()()()()。遺物の価値として求められるのは近代に寄った新しいものなのだ。心当たりの遺物の年代から察するにこの遺物も残念ながら文明初期の古いものだと推測できる。とは言え、その判別はとても難しい。劣る性能と言ってもそれは古代文明での話。現代科学では再現が難しい高度な技術だ。詳しい研究がされなければその事実にたどり着くことは叶わない。状況証拠だが、タリ連邦では情報端末系の遺物出土が少なく、研究が進んでいないことが判る。遺物鑑定官が知らなかったことと、これに高額を示した理由の裏付けになるだろう。

 深く息を吐き出して、心臓————ラハト器官に意識を向けた。まるで血の巡りが一気に頭へ集まる感覚。自身の感覚器官が鋭敏になっていくのを感じる。

 ラハトで強化された思考力と視野で情報端末の構造を慎重に読み解いていく。

 

「バッテリーは経年劣化の論外として、CPUは死んでるっぽいな。起動できないのはこれが大本かな…………なんだよこれ、どうなってんの。手持ちの部品でなんとかなるかー? …………うー、最悪エミュレーター組むしかないけど上手くいくかなぁ。でも、よかった。このストレージっぽいヤツの配線は無事だ。綺麗に残ってる」

 

 分解した部品を検分していく。慣れ親しんだ作業。ガラクタを集めてはこれを繰り返している。

 思えば、幼い頃からずっとこれだ。遺物の解体と分析は私のルーツと言っても過言ではない。あの頃から好奇心は収まることを知らず、私の目的もまるで変わっていない。

 ホワイト支部長は私に砕けぬ意志があると言ってくれた。自惚れていなければ私にはその意志が確かに備わっているのかもしれない。

 

 ————からからの夏の空。あのひまわり畑が瞼の裏に焼きついている。

 

 言ってしまえば、くだらないと笑われる目的だ。

 それは夢とも、野望とも呼ぶもの。

 私は、未だかつて誰も辿り着いたことのない場所へ行ってみたいと思っている。

 

 目下の目標は、人類未踏の地————————月への到達だ。


 これを口にすればそのたびに笑われたものだ。いや、今でも笑われる。

 現在、人類の宇宙進出はまったく進んでいない。研究こそされてはいるが、ほとんどのリソースを過去の遺物の解析と再現に割かれているのが現代科学の実情だ。

 下手な研究をするより遺物の解明で手に入る恩恵の方がどうやっても正しい。よく判らないことに悩まされるよりよほど効率が良いからだ。

 各国が掌握している人工衛星も、その操作端末も、みんな過去の遺物だ。遥か古代から宙に浮いていたものをそのまま使っている。宇宙へ至る方法もやはり遺物を探し出すことは避けられないだろう。

 そして、肝心の宇宙技術はまるで見つかっていない。各国の上層部が最重要機密として隠し通している可能性もあるかもしれないが、全ての情報を隠蔽するのは現実的ではない。噂程度でも流れるものだ。そうなると古代文明がこの技術を作為的に隠しているとしか考えられない。その理由はまったく判っていないが、私にできることは地道に探索をして遺物を集めることだけだ。


 そう。私は、この情報端末に宇宙への道標がないかと期待している。

 

 直接的なものは期待していないが、あれだけ厳重に保管されていたのだ。少なくともなにかリターンはあるだろう。いずれにしても得るものはある。

 私にとってこの一連の流れは、博打打ちと呼べるほどのものではないのだ。

 

「ほんと、月は遠いなぁ…………」


 ガラクタいじりで夜は更けていった。

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