深紅
その日、運命と出会った。
「————————」
心の奥まで響き染み渡るような声音だった。宝石の意志。
青白く冷たい照明が、金砂の輝きと不釣り合いだった。それでもなお、その髪は美しく見えた。
深紅が私を覗きこむ。深い、とても深い紅色。人ならざる神秘を宿す彩。
「——————きれい」
ぽつり、と。その言葉が零れ落ちた。
きっと、私はその運命に魅了されてしまったのだ。
この運命のためだけに全てを投げ出しても良い。私はこのときのために生まれてきたのだと思った。
深紅が私を覗きこむ。深い、とても深い紅色。穢れを知らぬ無垢を宿した輝き。
心は悲鳴を上げた。これを独り占めしたいと、醜く叫び上げた。
これは————これだけは、私だけのものだ。何者にも譲ることはできない。手放すことを許さない。
たとえ死んでしまったとしても。
たとえ死神に魂を打ち砕かれたとしても。
運命との出会いは、決して忘れることはないだろう。
ここは、ふかい、ふかい、地底の果て。墓標の都。
青白く冷たい照明が部屋を照らす。その影に落ちるのは、運命と私だけ。
いま、この世界に存在するのは二人だけ。そんな錯覚。そんなおとぎ話。
それも良いな、と思った。運命と一緒なら、きっとなんだってできるだろう。
深紅が私を覗きこむ。深い、とても深い紅色。瞳の奥が揺れている。私の言葉を待っていることが判った。
私も運命の言葉を————名前を聞きたい。
教えてほしい。
私だけの、君の名を————