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PL - escape to the moon -  作者: siz
LITHOS Meets ORB
1/13

深紅

 その日、運命(きみ)と出会った。


「————————」


 心の奥まで響き染み渡るような声音だった。宝石の意志(おと)


 青白く冷たい照明が、金砂の輝きと不釣り合いだった。それでもなお、その髪は美しく見えた。

 

 深紅が私を覗きこむ。深い、とても深い紅色。人ならざる神秘を宿す(いろ)


「——————きれい」


 ぽつり、と。その言葉が零れ落ちた。

 

 きっと、私はその運命(そんざい)に魅了されてしまったのだ。


 この運命のためだけに全てを投げ出しても良い。私はこのときのために生まれてきたのだと思った。


 深紅が私を覗きこむ。深い、とても深い紅色。穢れを知らぬ無垢を宿した輝き。


 心は悲鳴を上げた。これを独り占めしたいと、醜く叫び上げた。


 これは————これだけは、私だけのものだ。何者にも譲ることはできない。手放すことを許さない。


 たとえ死んでしまったとしても。


 たとえ死神に魂を打ち砕かれたとしても。


 運命(きみ)との出会いは、決して忘れることはないだろう。


 ここは、ふかい、ふかい、地底の果て。墓標の都。


 青白く冷たい照明が部屋(しろ)を照らす。その影に落ちるのは、運命(きみ)と私だけ。


 いま、この世界に存在するのは二人だけ。そんな錯覚。そんなおとぎ話。


 それも良いな、と思った。運命(きみ)と一緒なら、きっとなんだってできるだろう。


 深紅が私を覗きこむ。深い、とても深い紅色。瞳の奥が揺れている。私の言葉を待っていることが判った。


 私も運命(きみ)の言葉を————名前を聞きたい。


 教えてほしい。

 

 私だけの、君の名を————

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