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女友達  作者:
9/17

あの頃の私達 1

『頑張る』


これは綾の口癖みたいなものだ。


綾は元々頑張りすぎるところがあり、それを無自覚に相手にも求めるタイプだった。


うまくいかないと自己嫌悪で激しく落ち込む。頑張ったのに報われない私かわいそう。だから皆私の話を聞いて。


という具合に、うまくいかなかったときは負のオーラを友人たちに無意識に振りまく。気持ちが浮上するとケロッとしている。


そして、私また頑張るから、皆も頑張ろうねと平気で言う。迷惑をかけたと本人に自覚は無いので、友人たちに謝罪や感謝の言葉はない。

 

女性陣は何度かそれをやられると離れていくが、男性陣は違った。


頑張り屋な綾は、負のオーラを振りまいているとき以外は、明るく前向きなとても可愛らしい子なのだ。


女性陣が綾から少しずつ離れていくと、相談相手を男性陣に切り替えた。というより、2年生になる頃には、ほとんど男性しか残っていなかった。





 私が綾から離れていかなかったのは、大学に入学してすぐに仲良くなったメンバーだから情があった。


出会った頃の綾は、積極的で、自信があって、行動力があって、何より努力家で、可愛くて、とにかくキラキラしていた。


私はそんな綾と一緒にいることがとても楽しかった。


あの頃、同じ学部の私、綾、円の3人と、やっぱり同じ学部の貴也、諒太、佳成はほとんど一緒に行動していたように思う。


 そして、円を除いた5人はサークルも一緒だった。


入学から3週間程たった頃、私はたまたま一人で購買に向かっている途中で、サークル勧誘の先輩方に話しかけられ、迷っているうちに説明会の案内所まで引っ張られてきてしまった。


案内所に着いて驚いた。そこには同じように先輩方に連れてこられた綾達がいたのだ。


顔を見合わせた私達は、どれだけ仲がいいのよと笑いあった。


 何か縁があるのだろうとそれらしい言いぐさの貴也の一言で、皆同じサークルに入ることにした。


円も誘ったが、入りたいサークルが決まっていると言ってそちらへ行ってしまった。


 サークルの説明会で、主な活動内容と共に、月に1回活動報告会があること、年に2回飲み会があること、夏と春に日本全国のどこかの県で合宿と言う名のお泊り会があること等がわかった。


皆親元を離れたばかりのピヨピヨの大学生だ。楽しそうなイベントの話に、大きな期待と少しの不安を抱く。


楽しそう。やりがいもある。でも生活費足りるだろうか。


ざわつく1年生達に先輩方は、


「合宿の移動が一番楽しいんだ。学生は金はないが時間はある。今しかできない学生らしい旅が出来るぞ」


と笑っていた。


その一番楽しい移動とは、簡単に言うと『青春18きっぷ』を使って、電車の時刻表とにらめっこして、何時間もかけて現地にたどり着くという、時間だけはたっぷりある学生らしい旅だった。


実際に体験してみると、長い時間をかけて友人たちと移動することも、親から離れて自分達の力で旅していることも、くすぐったいような誇らしいようなふわふわとした不思議な感覚で、本当に楽しかった。


4年生になった今でもふと思い出してあの時のふわふわとした感覚が蘇る。

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